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夕食

シスターが部屋から出てから私が寝ている間の出来事をリンダに聞いた。


教会と孤児院が壊れ私が倒れた後に騎士の人たちがいっぱい来て、その時の話し合いの時にファインと顔見知りだったマルコさんが私の親の知り合いだからと名乗りあげて来たらしい。


その時にエルビンス男爵も壊したお詫びにと教会と孤児院も建て直してくれるんだって。

あれ?良い人なのかな?太っ腹だね!


最初は私とファインだけマルコさんの家に避難してエルビンス男爵の屋敷にシスター、リンダ、リュートが避難する予定だったけどリンダがどうしても私と離れたくなくて頼んだら許可貰ったって事でこっちに来たらしい。

何それ!天使かよオオォォォ!

あぁ!もう可愛い!大好き!一生養うわ!


半泣きになりながらぎゅうぎゅう抱きつく。

リンダは嬉しそうに抱き返してくれた。


それでリンダがリュートを誘う前にこっちに来るなら自分も行くと安定のリュートもマルコ宅に来たらしい。ですよね!そうだと思った!


それで私の看病を名乗り出てくれたようで、そのお手伝いしているうちに私のメイドになったらしい。

ちょっと意味わからないけど、タダで住むのが悪いみたいな感じかな?


シスターはその間…今日まで、エルビンス宅に居たらしい。たまに私の様子を見にココに来てくれてたようで、その時に赤髪の将来有望男子―トリヴィス君をこっちに連れてきたようだ。


トリヴィス君はエルビンス男爵のところで執事見習いをしていたようで、仕事を教えてくれるそうだ。それで私の従者になったってさ。

だからそれが意味分からないんだけど…。

それでなんで皆私の従者になるのさ…。

それなら私も働いたほうがいいんじゃないの?部屋まで借りちゃってさ…。

しかも皆で夕飯までご馳走になるみたい。

本当いたれりつくせりじゃん。


数日寝てたみたいだけど、今はもう目が覚めて体も調子が良いから夕飯の時マルコさんと顔合わせたら聞いてみよ。


他にも見てないラルとダリルの事を聞いたら二人は勤め先の人達が来てそのまま一緒に住むらしい。

元々成人したら住む予定だったのが早くなるだけだし、ダリルは2年早いが嫁に出た筈の姉まで来て家族総出で拝み倒してきたらしい。

シスターも止めなかったみたいだし、ダリルめっちゃ愛されてるのな。

普段ツンツン時たまデレだけど、仕事場ではデレてるのかな?想像出来ない。


他にも孤児院の部屋は全部無事だったからマルコさんの屋敷に運んでくれてたらしい。

ファインがくれたワンピース気に入ってたから良かった!


それとリンダと話をしてる時に気付いたのだけど、なんと!この部屋にはドレッサーも有り、振り子時計もあった。

小さい鏡ならシスターの部屋にあった気がするけど、日本にあるような家具もあるのな。


リンダに鏡の話をしたら髪型の練習をさせて欲しいと言う話になった。

現在リンダの髪は綺麗に纏まってるけど、まだ一人ではこんな完璧には出来ないらしい。

もう少ししたらそのリンダの先輩が来て私の髪と服を整えてくれると言っていた。


まぁ服が何処にあるか判らないしね。そこらへん探せば見付かるかもだけど…そんな家探しみたいなの勇者じゃないと出来ないよ。


と言う訳で時間までドレッサーの前で遊ぶことにした。

そこで今更ながら私は自分の顔を見て心臓が飛び跳ねるくらいビックリした。

誰だよコレ!美少女かよ!


いや!誰だって?

解ってる、ヒロインだって解ってる!!

でもさ!それが自分だと、どうしてイコールと考える事ができる?普段見えないだけびっくりだよ!実際鏡で見ると!


青く輝く銀の髪、赤みが入った薄紫の目、そして瞳孔が黄色…。パッケージの通りです。

イラストカラーのまま。


いや…さ、何だよ瞳孔の色が明るいて…。

周りそんな人いないじゃん。

えー…なんか凄く違和感あるぅー。


「?どうしたのメルちゃん固まっちゃって。」


髪を丁寧に梳きながら話しかけてくるリンダにぎこちなく後ろに振り向く。まるで自分の首が軋むような感じがした。


「…リンダ…、私の眼、変じゃないかな?違和感というか眼の中央が明るすぎ?みたいな…。」


ドレッサーの前に座ってるから今はリンダを見上るように視線が合う。

よく見るとリンダの綺麗な常夏の海のような眼の奥にはちゃんと黒い瞳孔が存在していた。

それと同じようにリンダも私を見ていたがニッコリ笑って「メルちゃんの目、とってもキレイだよー」とちょっと頬を色付かせながら笑った。


かっわ…っ!

まぁ、ゲームでも褒めることはあっても不思議そうにしてる人居なかったし…仕様だと思おう。


そうこうしているうちに時間になったようで、壮年の女性に服がと言うか、もはやドレスのような物を着させられそうになったが、何とか断って刺繍が綺麗な紺色のワンピースな様な物に落ちついた。


現代人の28にフリルの付いた可愛らしいドレスは精神を(えぐ)る心地にさせてくれる。

例え今の見た目にあってるとしても無理だ。

例え興味はあっても恥ずか死ぬ。メイリーナさん(メイドの名前)ゴメンナサイ。


食堂にリンダと共に案内された。

そこに目が眩む用な光景に目が潰れるような思いをする。

宝石のような石が輝き、その光が乱反射して部屋全体を明るくしているシャンデリア。

蕩ける様に光沢放つ美味しそうなお肉と料理のフルコース。

そしてこんな光景に何故か似合う顔面偏差値が高い男女と少年ズ。


なんだこの光景…夢か?

目に刺さる光で意識飛びそう…。


会社の新年会で式場に行ってもここまで眩しくなかった。皆大丈夫?なんで平気なの?現代日本から来て2週間ほど孤児院を蝋燭で暮らしただけでこんなダメージを受けてるのに皆どうなの?


…あ、いや!ファインが目元を真っ赤にしてこっちをガン見してるし逆にリュートは大人しそうに両手を下にしているのに両目瞑ってた!


シスターとトリヴィス君は普通なのに二人は私と同じ気持ちなんだな!

何だろう、仲間を見つけたからか心に余裕が戻ってきた!


長く大きい机に近付くと中央の奥、所謂『お誕生席』にマルコさんが座り、左側奥から順にシスター、リュート、トリヴィス君が座っている。

右側は奥が空席になっておりその隣でファインが一人座っていた。


リンダがそそっと私の前に出ると右の奥、つまりマルコさんとファインの間の席でシスターの対面を引いて私を待つ。


つまりそこに座れと案内されてるのね。

ていうか良いのかな?そこって上座では?

不思議に思いながら腰掛けリンダはファインのもう一つの隣に座った。


落ちついたのを見計らってマルコさんが口を開く。

…私達待ちでしたか…申し訳ない。


「皆様、今宵はメルディさんが目覚めたおめでたい席です。身内のみの軽い席なので、いつも通り作法など気にせず召し上がってください。


精霊の恵みに感謝を…では乾杯。」


席に用意されていたグラスを手に取り掲げ喉を潤す。

わぁぁぁあ!ジュースだあぁぁ!あまぁい!


明るくファインとマルコさん、シスターと軽く話しながら久々に甘いのを口に入れて堪能する。

目の前にはお肉、やはり主食はパンみたいで少しがっかりだが、これはこれで美味しい!

久々にしっかりとした味に舌鼓を打ちながら暫く美味しいご飯を堪能した。


ヤバイ、元の生活に戻れなかったらどうしよう。

こんなん味わったら舌肥えるじゃんよぉ〜。

う〜美味しいぃぃい〜!


全部平らげ満足していると、マルコさんと目があった。

「ほほ、お口に合ったようで良かったです。

我が家のシェフも喜ぶでしょう。

デザートも腕によりをかけているのでご堪能くだされ。」


相変わらず初孫を見るような目で言うマルコさん。

デザート!楽しみー!


「こんな美味しいお料理初めて食べました!

有難うございます。シェフの方にも感謝を伝えてください!デザート楽しみです!」


「ええ、必ず伝えます。…とても喜びますよ。

我が家にいる間はその者が作りますので明日の朝食も楽しみにしててくださいね。」


マジか!ご飯が楽しみ!

あっと、でもこんな高級なタダ飯は良くないな。

「はい!

あっとその、こんな美味しいご飯にお部屋とか服まで貸して下さりとても感謝しているのですが…父の知り合いだからとこんな良くしていただいて…。


お世話になる間でもお仕事私にもくださいませんか?あと早くにこれからの事を決めますので―」

「メルディさん。」


思った事を伝えるとマルコさんが私を呼ぶ。

優しい声音のはずなのに圧を感じて言葉が思わず止まった。


「そんな畏まることは御座いません。これは私が好きにやっている事です。貴女が気に病むことは一切無いのですよ。


…これは貴女が大人になったら言おうと思っていましたが、貴女のお父様…ウォリア様のリタール商会は私が引き継いだのです。


貴女が大人になるまでの間、私が引き継いでいるに過ぎません。つまり貴女は私の主であり、この家は貴女の家。

この家の者は貴女の家臣であるのです。貴女が気に病む事はありませんよ。

貴女の為に行動するのは私共も願いであるのです。」


……なんだと?


え?何だって?


ゲームでは商会の話は一切出てこなかった。

シナリオ的に必要で無かったのか解らないけども、まさかマルコさんが引き継いでたのなんて初耳だ。


ん?あぁ…いや、まぁ、ゲームで拠点(屋敷)に施設作ってモンスターで畜産、生産して小遣い…―中盤の為一万ルード(ゲームの金の単位)行けばいい方―稼いでた…け、ど…。


その金は何処に売ったかなんて知らないけど…。

もしかしてリタール商会(まんま拠点)で売ってたのか!


頭がぐるぐるしてさっきまでの幸せな気持ちが消えた。

無意識にマルコさんから距離を取っていたようで背中にファインの手が添えられる。

「メルディ、大丈夫か?」


気遣わしい目、背中に在る大きい手のひら。

意識が浮上して来て頭に血が巡る感覚がする。


そこでふと今までの『設定』が頭に過ぎった。


「あの、マルコさん。」

「はい。如何しましたか?」


何処か期待した目、そして圧を感じる笑み。

優しいけど、信じちゃダメだわ。


「…それなら、お兄ちゃんが跡を継ぐべきなのでは、ないですか?」


背中でファインがピクと震えたのを手から感じた。目の前のマルコさんも笑顔のままだが動揺してるのが解る。すぐに言葉が出てこないもの。


でも表情に出ないのは流石だなぁ。


「…ファイン殿は早くから騎士に従事していた為跡取りの教育をされていないのです。

当主様が急遽亡くなられた為、いろはを知らない者より心得の有る私が橋になっているだけ。


ファイン殿は実は都合がありまして跡取りになれない事が決定されていますので跡取りはメルディさんとなります。」


切々と語るマルコさんを冷ややかに見る私。

何だよ、都合って。大人の都合かよ。


「都合って、なんですか?」

子供の無邪気さを武器に聞いてみた。あえて空気を読みません。


「…それは、私が語る事は出来ません。」

痛みを訴えるような、心臓の位置を服の上から握り眉間に皺を寄せ今にも泣きそうな表情で首を横に振るマルコさん。


後ろのファインを見上げると、無言のファインが青い顔でブンブンと高速で頭を振っている。後で頭がクラクラするやつだ。


これは聞いたら空気読まないどころか鬼畜扱いされそう。

ただでさえお世話になっているのにこれ以上は心象に良くない。


「…聞いてごめんなさい。」


「いえ、良いのですよ。

ほら、デザートが来ましたよ。美味しく頂いてください。」


出てきたのは桃のシャーベット。

うふぉぉぉお桃の甘さに口に蕩ける氷がサイコオォォォオ!!


スプーンを咥えたまま感動している横で、息をホッと吐き出しているマルコさんとファインにメルディは気付くことは無かった。


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