覚悟
遅くなってすみません。書いてて展開に迷ったり何通りか書いたり書き足したり消したりして結局ごちゃつきました。
ブックマークありがとうございます!
2/17最後当たりの一部変更、話の流れは変わってないです。
「まぁ、もう男爵の事はいいですね。
ではメルディちゃん話に移ります。
まずは聞きますが、貴方達は『闇の恩恵』について知っていますか?」
「メルディの恩恵の事ですよね?
でも初めて聞いたので知りません。」
リュートがメルディから聞いた事だ。どんな恩恵か聞いたら色々混ざってるけど紺が強いから水か氷が出来るかも…とかそんな曖昧な説明だった気がする。
恩恵にも知らない種類あるし深くは考えなかった。
「俺も初めて聞きました。」
「え?俺、メルディが『闇の恩恵』って言う自体聞いてないんだけど…?」
知らなかったショックかファインが目を見開きながらリュートをジッと見る。
そう言えば恩恵を教えてた時、氷しか使えなかった事からファインは氷の恩恵だと思っていた。
メルディも訂正してなかったし、正直リュートも氷しか見てないから闇と言われてもいまいちピンと来ないからそんな目で見ないでほしいと無視をする。
「あらあら、ファインなんて顔をしてるの?せっかく作りの良い顔が残念な事になってますよ?
それに『闇の恩恵』を知らなくても無理はありません。
普通は現れませんから。」
「シスター…。それはどういう―」
リュートが聞き返そうとするとシスターは静かに人差し指をふっくらとした形の良い唇に当てる。
そのエメラルドの真剣な眼はいつものシスターとは違く、本物の宝石のように美しく、温度を感じさせない。
厳しい双眸で三人を見据えていた。
自然と黙り、三人は背筋を伸ばす。
「ここから先の話は貴方達も他人事にならないし身の振り方を選んで貰います。
今なら耳を塞ぎここから退室する事を許しましょう。
じゃないと、メルディちゃんは無意識に貴方達を巻き込み、巻き込まれた後に逃げる事は許されなくなります。
覚悟はありますか?」
目元を緩めいつものように微笑むシスターだが内容が重い。
一体どれ程の秘密を彼女は抱えてるのか好奇心は疼くが、シスターがこれ程言うのだ。
きっと覚悟がないまま巻き込まれない様に、その前に逃げられるように配慮してくれてるのだろう。
メルディの事なら真っ先に言いそうなファインが黙っている。
リュートはファインの方を見ると目があった。
薄茶色の眼は静かで、迷いは無い。
これは考える時間をくれているのだろうか?
「…シスター、この事は姉さんは知ってますか?」
「いいえ、知りませんよ。
でもリンダちゃんは自分で自分の道を選んだみたいですね。貴方はどうしますか?」
シスターに質問を返された。だけど答えはぱっと出てきた。
「…姉さんの行く道が…僕の道です。
でも姉さんが危なくなったら僕は姉さんを連れて逃げます。
姉さんが嫌になったら姿を消します。
それでも聞いて良いですか?」
「ええ、今はそれでいいですよ。まだ猶予はありますから。」
リュートはいつもの表情の薄い顔だが、しっかりとシスターと目を合わせ問う。
どんな時でも姉の為の覚悟なら子供ながらに持っているリュートにシスターは微笑んだ。
ファインの隣で考えるこんでいたトリヴィスもシスターに問う。
「あの…シスター、宜しいでしょうか?」
「はい。良いですよ。」
姿勢は良いが目は上目遣いになり弱腰だ。
上下関係が出来上がってるのも仕方ないとファインは憐れみ込めた目でトリヴィスを見て思う。
「…俺に、その選択権はあるのですか?」
エルビンス男爵の担保に連れてこられたトリヴィスはシスターに言われてメルディの執事になった。
メルディとは特に会話も無く、親しくもなく、出会いも最悪。
例え使い捨てになっても文句も言えない立場だが、選択を選べる立場でもないとも思っている。
でも正直、あのまま旦那様の元に居ても毎日不安だった。
いい生活や勉強をさせて貰ったのはとても感謝しているし、旦那様も優しい。酷い扱いを受けた事はない。
でもそれはまだ自分には旦那様にとって利用価値があったからである。
増える子供に、どこか連れて行かれる子供。自分だけがそうならない保証はない。来年成人したら棄てられるかもしれない恐怖はずっと胸を締め付け不安に支配されていた。
でも逃げても居場所はない。逃げられても生活が出来ない。仕事をもらえるのか、子供の身でまともに給金は貰えるのか、下手したら孤児院よりも最悪な…そんな後の生活の心配ばかり。どっちに転んでも不安しかない毎日。
だが今は旦那様も見張られてこれ以上の罪を築くことはないと思うと心が少し軽くなった。
正直、シスターは怖いが…感謝もしている。
「勿論ですよ。好きに選んでください。
エルビンス男爵の執事に戻るのも、孤児院に戻るのも、市井に行くのも、ジーブ様の元で働くのも選ぶ権利があります。」
「シスター、あの少女の元に居て俺は役に立つ事はあるんですか?俺が居る意味はありますか?」
もし、役に立てることがあるのなら…。
「ありますよ。だから貴方に来てもらったのです。」
きっぱり放たれた言葉に覚悟を決めた。
感じた恩の分は働いてみせよう。
「―決めました。彼女の執事として役に立てるなら働かせてください。」
「ええ、お願いしますね。
ファインはもう覚悟はとうに出来てるみたいですし、聞かなくて良いでしょう。」
「勿論です!兄ですから!」
自信満々でそう言い放つファインにシスターは楽しそうに微笑んだ。
「ふふ、では覚悟を聞いたし話を戻しますね。
皆さん恩恵を調べるとき『色』によって判断されるのは解りますね。
『闇』は、その沢山の恩恵が集まった色なのです。
濃い色が混じり合い黒くなる。それが『闇』と比喩されてるわけです。
恐らく見た感じでしたが、メルディちゃんは5種類いえ、色を足せばもっと多い様々な恩恵を宿してると思われます。」
「「「はぁ!?」」」
男性陣の声が揃う。
一般で恩恵一つあるだけで恵まれてる。
二つ宿っていれば職は選り取り見取り。
三つあれば宮廷魔導師も夢じゃない。
それが…最低でも5種類…。
過去の英雄やお伽噺の勇者のようだ。
つまりどれも人間離れをしている。
狙われる要因がこれだとしたらとんでも無い。
「シスター、メルディの魔力が桁外れなのはその恩恵が原因なのですか?」
「僕もあの子の魔力量が普通とかけ離れていると思ってました。
氷系は固体にすることを難易度が高いとされてるのにあの子、『凍らせる事しか出来ない』みたいでしたし。」
リュートが思い浮かぶのは狩りの大規模な被害を出した後だと言うのに、それ以上の氷魔法を放ったあの異常な光景だった。
氷魔法を実際に使う人というのは始めてだが、あれは規格外だとだけは解る。
リタールの商家は聞いたことはあるが、でもそれ以上は知らない。
…でも、もしあの子が産まれながらの規格外で何処かでバレて家が襲われたとしたら…。
あの子のせいで家族が居なくなったとしたら…。
そんな事を、つい考えてしまう。
「…俺は一回しか起きてるの見てないし、よく判りませんが…リュートに同意見です。
気絶するほど恩恵魔法を酷使したのも驚きましたが、その後魔力の譲渡出来る人が渡しても魔力が満たされるまで3日かかったんでしょう?
俺は経験ありませんが大体一般は一日で回復すると聞きます。
まぁ、普通魔力が枯渇するまで使うのがまずありえませんけどね。」
「え?」
「え?」
「…え?」
ファインとリュートが驚くようにトリヴィスを見る。それにトリヴィスも驚く。
いや、普通そんな無茶しないし…。
「そんなことはどうでもいいですね。
魔力の量についてなんですが、例え恩恵を沢山宿していても魔力量は上がったりしません。
精霊は魂を見て扱える力だけを授けてくれると言われてます。つまりメルディちゃんは、それだけの精霊に愛される素質と魔力を元々持っていたわけです。
勿論子供と大人の量は違いますし鍛えたり、何度も恩恵魔法を使えば要領がよくなったり増えたりしますがその程度です。
剣と同じですね。同じ力量であれば子供より大人の方が強いですし扱いを心得てます。
ですが小さい頃から才能があり鍛錬すれば子供でも大人より強かったり知識も豊富になりましょう。」
「…つまり、メルディは鍛えればもっと魔力が増して強くなると言うことですか?」
「そうです。まだまだ成長するでしょうね。
将来が楽しみです。
それと恐らく魔力の回復に3日かかったのは、まだ魔力が馴染んでないからと推測します。大人になれば一日で回復するように自然となるでしょう。」
「…それって化け物の誕生では?
ひっ!すみません!」
ファインが青筋を立てた笑顔でトリヴィス肩を力任せに掴み顔を青くして謝る。
「でもそんな人、世の中にいるんですね。
それがあの子って言うのが信じられないけど。
その一端を見てしまったしね。
そう言えば騎士団にあの氷の恩恵どう説明しましたか?
ファインの言うとおり国外にあの子を逃した方が安全なのでは?」
中庭を凍らせ、襲ってきた男達の首から下を氷で覆った光景。騒ぎになっただろうな、と想像つく。
そこから噂で、もしくはまた別の誰かからまた命が狙われてないか心配になった。
「騎士団には氷の恩恵を使える子供が襲われた恐怖により恩恵を暴発させた、と話をしてあります。ふふツテもあるのであとは大丈夫でしょう。」
悪戯を仕掛けた無邪気な子供のような笑顔にファインはため息をつく。
謎の顔の広さ、謎の過去、隠し事の多いシスター
いつか、全部話してくれる時が来るのだろうか。
そこで、はたっとリュートの発言を思い出す。
「あれ?俺お前に国外に連れて逃げるの話したっけ?」
メルディに話をした時居なかったし、屋敷の壁は厚い。
廊下に居たとしても聞こえるか怪しいと疑問を抱いた。
「シスターが居なくなってる間ずっとグチグチ洩らしてたよ。
姉さんも逃げるなら一緒が良いけどシスターも一緒が良いって。
姉さん逃げるなら強くないと、とか言って張り切ってたよ。不用意に言うの止めてよね。」
完全無意識だったファインが気まずそうに目を逸らす。
シスターはそれを見てクスクスと笑った。
「大丈夫ですよ。メルディちゃんは国外に逃げる選択肢を選ばないでしょう。あの子は私達を選んでくれるでしょうね。」
自信有りげに断言するシスターにファインがジト目で見る。
「それは、この後メルディと話す内容に関係してるんですか?」
「ええ、ですから貴方はお邪魔です。ついてこないでくださいね。」
ハッキリとした拒否にファインの眉間にシワが寄る。
何か言う前に扉にノックが響いた。
『大変失礼致します。御夕飯の準備が整いました。
もし宜しければ旦那様とご相伴お願いします。』
「はい時間ですね、では参りましょうか。」
スッと立ち上がり服を整えると出口に向う。
「〜〜〜っ、シスター!今回は見逃しますが後で絶対話を聞かせてくださいよ!
あと無理矢理は駄目ですからね!誘惑も賄賂も脅しも駄目ですから!他にも―…」
早口で言い募るファインにシスターは扉に手をかけながら後ろを振り向いて微笑む。
「お断りします。約束もしかねるわ。」
「シスター!」
人前で話すわけにもいかず詰め寄る事も出来ないまま夕食に突入した。
結構視点がころころ変わって読みにくなったら申し訳御座いません。メルディ視点だと多分何もわからない状態になるので、メルディの知らないところで色々状況が動いていると思ってくれたら幸いです。
もしご意見、ご感想くださると嬉しいです。
失礼しました。




