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リンダの決意

長くなりました。

わたしは駄目な子だ。

いつも失敗ばかりしてリュートに迷惑ばかりかけてしまう。


わたしは『おねぇちゃん』なのに…。


双子だからどっちが年上というのはないけど、わたしがリュートに誇れるものは『おねぇちゃん』であることだけ。

誰が『姉』で『弟』だと決めたのか覚えてないけれど、物心ついた時にはわたしが『おねぇちゃん』だった。


リュートも『姉さん』と呼んでくれる。

わたしはそれがとても誇らしく感じる。


大事なわたしの家族。

大切なわたしの弟。


弟のリュートの方がとてもしっかりしていて、わたしは役立たずで。

リュートの方がとてもお勉強が得意で、わたしは教えて貰ってばかり。


『おねぇちゃん』なのに、とても申し訳なくっていつも謝ってしまう。

不甲斐ないおねぇちゃんでごめんね。


リュートはそんな気持ちを察してか、いつも眉根をよせて「別に」とだけ返す。


そんなリュートの気持ちに最初気付かず過ごす中メルちゃんが来た。


メルちゃんはわたしより年下でとても可愛いお人形のような子だけど、とても表情がくるくる変わって良く笑う子だった。

わたしたちのことを見る目はとてもキラキラしててキレイだなって思った。


ラルちゃんがメルちゃんを連れてお話すると、おくびにも出さず『冒険者になりたい』と言っていた。

戦った事もないっていうのに怖くないのかな…。

ラルちゃんは危険なお仕事だと教えてくれたけど、メルちゃんはそんな事はどうでも良いとばかりに理由を上げていく。 


わたしは無理だ…こわい。

傷つけるのも、傷つくのも。


『私もね、正直戦うのも命を奪うのも傷つけるのもやだよ?でもね強くなきゃいけないこともあると思うの。』


メルちゃんは嫌なのに強くなりないの?わたしには解らない。


『えーとね、まず心配をかけなくなるでしょ、お兄さまに何かあったら自分で動く事が出来るし、モンスターを倒して素材とお肉が食べれるでしょ。

あと守られるのだけは嫌だし、自分のせいで周りが傷つくのが嫌。あとは強ければなんとかなるでしょ?』


屈託なく断言するメルちゃんはわたしに無いものを沢山持っていた。

わたしはいつも守られてばかり。


『守られるのだけは嫌』『自分のせいで周りが傷つくのが嫌』

わたしの胸がズキリと傷んだ。


それから三人、よく一緒に行動するようになった。

素直に嬉しかった。一緒に過ごすのも、一緒に話すのも楽しいから。

そして何より、リュートがとても楽しそうに笑うようになった。


リュートが声を出して笑うなんて、とても久しぶりで、ずっと一緒のはずだったのにメルちゃんは数日でリュートの笑顔を引き出した。


とても嬉しい、メルちゃんにこっそりリュートがこんな大声で笑うことは滅多に無いというと驚いてまた笑った。


ありがとうと心の中で感謝した。

でもね、正直嫉妬した。

でもそれ以上にリュートを笑顔に出来ないわたしに泣きそうになった。

リュートが笑うと嬉しいのに、辛い。見てると楽しいのに悲しい。相反した気持ちがずっと胸を燻る。


こんなおねぇちゃんで…ごめんなさい。


謝ってもリュートがそんなこと望んでないの、本当は気付いてた。わたしが謝るのはわたしの自己満足で、わたしの気持ち次第で…リュートはただ付き合ってくれているだけ。


リュートは優しい。

いつもわたしを守ってくれている。

メルちゃんが来てから、それを当たり前に受け取っていたことに今更気がついた。


赤髪の男の子がリュートに襲ってきたとき、わたしは動かなかった。

私よりも年下のメルちゃんは前に出たのに、わたしは動くという考えさえ浮かばなかった。


恩恵がないから、恩恵があればわたしにも出来た?

ううん恩恵があったとしても、きっとわたしは動かなかった。

リュートに頼られたいと思う反面わたしはリュートを甘えて頼りきっていた。


わたしがしっかりしていれば、恩恵があっても無くてもリュートの盾になれるはずなのに。出来ない。怖い、傷つくのが恐い。


わたしは『おねぇちゃん』。メルちゃんを見習って強くならなきゃ。年下の子が頑張って体を張ってるのに『おねぇちゃん』が頑張らなくてどうするの。


こわい、こわい、こわい…、でも…リュートとメルちゃんが傷付くのは…もっと、恐い!


「ダメェ!」

わたしは前に立つメルちゃんに押し倒すように抱きつく。

その瞬間体が上に引っ張られ首に腕が回された。


苦しい、こわい、やだ、こわい助けて…。

体が震えて涙が反射的に溢れた視界には驚いた顔の二人があった。


こわい…こんな気持ち、二人が味合わせなくて、良かった。


でも、今の二人の方がもっと辛そうで、悪い方にばかり転がっていく。

私のせいで、シスターもファインも皆身動きが出来なくなってしまった。

そんな、いや…助けて!ごめんなさい!やめて、やめてぇ!傷つけないで、わたしのせいだ、わたしが…でもメルちゃんがこの位置にいたかもしれない。それも嫌、結局わたしは何の役にもたてない…


その瞬間冷気が頬を撫でた途端、暴力をしている男達の足元から氷が上った。

メルちゃんを見ると真っ青な顔色で両手をギュッと白くなるまで握りしめて立っている。


氷がバキバキと音をたてながら下から迫り上がってくると同時に耳元で男が喚いた。

そのすきにファインが剣で何かを切ると、わたしは落ちそうになって今度はファインの腕の中にいた。


「メルちゃ―っ」

「メルディ!!」

ファインはメルちゃんの元に駆け出す。メルちゃんをみると顔が真っ白になってた。


「ちょっと!もしかして魔力切れてるんじゃないの?!」

「大丈夫、まだイケる。」

「明らかに大丈夫じゃないでしょ!」

「大丈夫だって言ってるでしょ!そんな事よりもリンダを助けてよ!」

「っ!―解ったよ!」


『そんな事より』私はメルちゃんにそんな事言ってもらえる価値なんてない。そんな体を張ってもらう価値なんてないのに…。

涙が溢れて止まらない。メルちゃんに声をかけたいのに、大丈夫だと言いたいのに、胸がいっぱいで苦しくて出るのは呻くような嗚咽ばかり

「うぅ…」

「姉さん!姉さんもう大丈夫だから、泣かないで…」


リュートがこっちに来て背中を擦ってくれる。

違う、違うの。怖くて泣いてるんじゃないの。

わたしは自分の両腕の腕をギュッと握って違うと頭を振るが声にならない。


メルちゃんを見ると倒れていた。

泣いた熱でぼんやりしていた頭から一気に血の気が引いた。

「っ―!メルぢゃん!」

「大丈夫!大丈夫だよ姉さん!あの子は無理に恩恵を使って魔力切れをおこしたんだよ。

魔力が回復したら起きるよ(いつ起きるか解らないけど)」


こんなになってまで、どうして…。

どうしてメルちゃんはそんなに強いの?


メルちゃんの言葉が頭に過ぎる。

『守られるのだけは嫌だし、自分のせいで周りが傷つくのが嫌。あとは強ければなんとかなるでしょ?』


強ければ…なんとかなる。


わたしはゆっくり立ち上がってファインに介抱されているメルちゃんに近付いて手をギュッと握った。


冷たい。

わたしも強くなれるかな…。メルちゃんみたいに強くなりたい。

いや、メルちゃん以上に強くなって今度はわたしが、守れるようになるんだ。


わたしは『おねぇちゃん』なんだから。





ぶっちゃけメルディは前世で沼に片足突っ込むと無茶な生活をするタイプなので貧血慣れしてます。

貧血くらいどーってことないぜ!

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