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ファイン目線1

長いです。本当は半分の予定だったけどファイン1ファイン2で2日に別けるのも何だかと思って繋げちゃいました。

屋敷が襲撃され幼いお嬢様を連れて逃げ出した。


俺は去年屋敷に雇われ始めた護衛だった。まだ入って1年の若輩者で護衛の先輩とバトラーのハンス様にビシビシと教育されていた。


元々平民の出で家族がいない孤児だった俺に、剣に才能があったことからこの身一つで生計を立てられたのは幸運だった。

さらに孤児院で剣を教えてくれていた剣の師が、屋敷に紹介してくれて住み込みで働けるようにしてくれた。


俺は人の縁に救われ、必ず恩を返す勢いで鍛錬を続けていた。



そんな中のコレだ。絶対にお嬢様を守らなければいけない!


旦那様と奥様の安否は解らない。

休憩中に火の手があがり、同時に黒服の男たちが襲撃してきた。


上で護衛している先輩たちは自分よりも腕がたつ、自分が心配するなんて失礼だ。

こんなことを考えては先輩からまた拳骨が降ってくるだろう。


俺には俺の出来ることをする!

コートを羽織り剣を手に部屋を飛び出す。

逃げる使用人と襲撃者と戦う先輩たち。


襲ってくる黒服たちから、逃げ惑うメイド達を守り外に出るよう声を張り上げる。


充満する煙の中、ハンス様が幼いお嬢様を連れて逃げてきた。


「ハンス様!」

「お嬢様と逃げろファイン!ここは私たちが食い止める!

足の速さならお前が一番だからな!」


手を引いたお嬢様を俺に託し、ハンス様は剣を構える。


すると煙の中から黒服の男たちが飛び出して血に濡れた剣を振りかぶってきた。

ハンス様は低く構え隙を突き、一撃で黒服の男を仕留める。


手をつないだ小さな手が震え、「ひっ」と小さな悲鳴が聞こえた。

薄紫色の双眸に涙を溜め、お嬢様の白い肌が煤に汚れている上に青くなっている。


余裕が無いとはいえ、小さい子供に見せるものではなかったと今更ながら後悔した。

すぐにお嬢様の手を引き、煙に巻かれないよう身を低くして出口に向かって走った。


すぐ後ろにはハンス様が殿を務めて警戒してくれている。ありがたい。


屋敷から脱出し黒服の男に出迎えられ、お嬢様を守りながら剣を振るう。

人を殺したのは初めてだったが、幼いお嬢さまの身の安全に為に思えば忌避感はなかった。


返り血がお嬢様に飛ぶ方が何倍も気になる。


涙が溢れ恐怖に震えるお嬢様。

こんな怖い思いをさせたくなかった。屋敷では満面の笑みで新人の俺にも元気に挨拶してくれるお嬢様。


屋敷の皆は家族だと笑って答えてくれたのを覚えている。

可愛い、可愛い皆の宝物のお嬢様。


また一人を殺す。

お嬢様を腕の中で守り剣を振るうと赤い血が辺りに飛び散る。

むせ返る匂い、こんな匂いを覚えないで欲しくて胸の中にギュッと抱き寄せる。


怖がられたらどうしよう。

怖いのは周りだけでなくて敵の血に濡れる俺のことも怖いかも。

でも今は守ることが先決だ。今だけはこの胸で守らせてください。






一時の季節で使用する山小屋についた。

敵が居ないと良いのだけど。


抱きかかえたお嬢様はいつも間にか泣き止んでいる。

良かった。でも元気がない…仕方ないけど。

俺がしっかりしなくては、出来るだけ笑顔を作るように、柔らかく笑えるように筋肉を総動員する。

これ以上不安にさせたくない。


誰もいないか確認するため、目が届く範囲で待たせる。

山小屋には誰も居なく真っ暗だ。大丈夫、お嬢様を休ませられるだろう。


「お嬢様、まだ敵の手はここまで来ていないみたいです。

ここで休憩いたしましょう。」


手を差し出しエスコートをする。大人しくついてくるお嬢様はキョロキョロと辺りを確認するように見ていた。明かりを点けられたら少しは安心されられるのだろうが、今は追われてるから点けるわけにはいかない。

点けてくれと言われたらどうしよう…


「今日はここで泊まりましょう。夜が明けたらすぐに出発するので、それまで寝てください。」

お嬢様をベッドに座らせて靴を脱がせる。靴はススと血に汚れ黒ずんでいる。

怖かっただろう…。


「ファ、ファインも…ファインも休んで?」


小鳥のように可愛らしい声が上からふってくる。

さっきまで喋らなかったお嬢様の声だ。怖かっただろうに、俺の心配を先にしてくれるのか。

思わずマジマジとお嬢様を見てしまった。

…良い子だな。何としても守らなければ。


「はい、私はあのソファで仮眠をとらせて頂きます。すぐ近くにいるので安心して眠ってください。」

笑え…。少しでも安心してほしい…。恐れ多いけど、お嬢様の手をとって温めるように包む。


小さな柔らかい手。もしかしなくともお嬢様の方が温かいようで作った笑いではなく、本当に笑ってしまった。


お嬢様がベッドに入り大人しくしているが、たまに震えてるような気がする。

近くにいるとはいえ…一緒にベッドに入った方が良かったかな?

でも大事なお嬢様だし…うーん。


自分も休めるときに休んでおこう。

その前にお嬢様の靴を磨いておこう。


鳥の声で目が覚める。いつも鍛錬で日の出とともに起きる習慣のおかげで起きることが出来た。


朝日が窓から入り、山小屋の中も明るい、その光景がまるで夜の出来事は悪夢だったんじゃないかと思った。それだけ現実感がない。

でも此処にいる時点で残念ながら現実だけどな。


ベッドに近づくとお嬢様が健やかな寝息ですやすや寝ている。

ちゃんと熟睡しているようで安心した。


しかし可愛いな~、旦那様も奥様も美形だったしお嬢様もその二人の血を引くだけ将来有望だ。

旦那さま譲りの青みがかった銀髪?青銀っていうの?ミスリルみたいな色?なんていう色か解らないが綺麗だと思う不思議な色に、薄紫に星が散った様な目。例えで言うなら夕焼けの夜の色みたいな?あんまり見たことないからそんな印象という感じかなー。


髪と同じ長い青銀の睫毛に隠れてるのがもったいないな。でもすやすやと寝てるところを起こすのも勿体ないような。


「…お嬢様~、朝ですよ~…」


起きない、でも反応して身じろぎした。こんなことしてる場合ではないんだけど、少し癒される。


「お嬢様、起きてください」

あ、残念起きてしまった。


「ファイン、おはよう…ございます?」

疑問形なの可愛いな、ねぼけてるのかな?


「おはようございますお嬢様」


「あ、あのその『お嬢様』ってなんのことでしょう?」

「!!」

血の気が引いた、まさか昨夜の記憶がないのだろうか、まさか、でも名前呼んでるし、まさか…そんな。


「おおお、お嬢様はお嬢様ですが、き記憶が?でも私の名はさっきまで…」

吹き出る冷や汗。さっきまでの余裕はどうした!!俺!!年上なんだからしっかりしないと!!


「その、貴方の名前は解るのですが…名前だけで…なぜそう呼ばれてるか解らないの、です…。

あと此処はどこでしょう?見覚えないですが私たちの家ですか?」


なんてこったああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

これはどうする!!どうすればいい!!不安にさせたくない、守りたいと思ったところからこれかぁぁぁぁぁぁ心が守れてないじゃないかぁぁ!!もっと気遣えばよかった!!馬鹿!俺の馬鹿!!


「す、すまん!メルディさ、…メルディ!なっ名前を覚えてるのは勿論俺たちは兄妹だからだ!」

何言ってんの!俺!!本当に何言ってんの?!俺!!

でも記憶がなくなって、名前しかしらない男と一緒とか恐怖だろ?警戒しちゃうだろ?!

言い訳だけど!言い訳だけどぉぉ!!



「あに、…お兄さ、ま?」

!!「そう!お兄さまだよ!」


疑問形だけど信じてくれた!似てないと言われればそれまでだけど、『お兄さま』『妹』なんか良い響き。

お嬢様にお兄さまと言わせた罪悪感はあるけど、正直悪くないです。はい。

『家族』というモノが居なかった俺は兄妹に憧れを確かに想っていた。


屋敷の中では一番歳が近いこともあってお嬢様が俺に話しかけてくれたことはあったけど、妹がいたらこんな感じかな~と思ったことは確かにあったけど。旦那様の…雇い主の娘だとも思っていた。


今純粋に嬉しそうに『お兄さま』と頼られ胸がドキドキと脈打ってしまう。

平常心!平常心だ俺!!


「ここは山小屋で今は避難しているところだ。昨夜、野党に襲われてしまって旦那…いや、父さんと母さんが逃がしてくれたんだ。父さんと母さんは覚えているかい?」


ふるふるとお嬢…メルディ様…いやメルディが首を横に振る。

残念だけど、旦那様と奥様に大事にされたことをいつか思いだしてほしい。

「…そうか」


旦那様と奥様の代わりにはならないかもだけど。

ずっと守ろうと思う。お嬢…メルディが幸せになって俺が必要なくなるまで…ずっと。

俺の可愛い『妹』として。必ず守ると誓う。


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