赤い髪の少年
皆が無事なのを見てホッとしたら他にも余裕が出て頭がクリアになってきた。
どうも火の手は表の教会に集中しているようで裏の孤児院にまで火が回ってない事に気付いた。
ん?…あれ?普通逆じゃない?
教会は古いがほぼ石材で出来ている。
表で燃えるものといったら椅子と蝋燭くらいだ。
教会はとても質素で、カーテンの垂れ幕もない。
あるとしたら中央の教壇の前の絨毯くらいじゃないか?
それなのに併設されている孤児院…つまり私達の居住区は木造の建物なのに火が移ってない。
あんなに表が燃えているのにもかかわらず、だ。
そこから解るのは唯一つ。
あの炎普通の炎じゃない、リュートが「おかしい」って言ったのは魔法の炎だからだ…。
「あぁ、こんな所に居たんだ。」
下に枝や草があるのに関わらず近くにいるのに音に気付かず見知らぬ赤髪の少年が声をかけてきた。
驚いて飛び上がりながら後退るも、後ろは急な斜面…降りれないことはないけど危ない。
リュートが前に出て守るよう私達の前に片手を伸ばした。
「…誰?」
低く警戒を滲ませながら睨む。
いつものリュートと感じが違う声。
私とリンダもお互い手を取り合い、いつでも動けるよう足に力を入れた。
赤髪の子供は軽装のオシャレな冒険者のような、だけど動きやすい服を着ている。私達よりも背が高く恐らく十代前半で、まだ声変わりもしていない年端もいかない子供に見えた。
真紅のような綺麗な赤い髪を項より少し上で結び肩から前に垂らしている。
金茶色の目も少し吊り目気味だがパッチリしており髪と同じ真紅の睫毛が長く縁取り目に影がさしていた。その雰囲気は可愛いや格好いいではなく、どこか妖艶。大人顔前の美貌です。
くそぅ、やはりこの世界皆イケメンかよぉ
子供でコレって将来リュートに並ぶヤバイイケメンだろコイツ。
リュートは美少年で将来中性的な美形男子になりそうだけど、コイツは男性的なイケメン。
イケメンのジャンルが違う。
くっそ、身内贔屓だけどなんか悔しい。
悔しすぎて睨みつける。
赤髪のイケメンと目が合うと、ふぅ…とため息を吐かれた。ンだよ、ゴラ。
「僕は確かに君たちから見ての敵だけど、害意はないよ。落ち着いてくれないかな?」
「…傷をつけたくないだけでしょ。」
真面目な顔をして言う赤髪の少年に冷たくリュートは端的に返す。
「君たちが自分から来てくれると有り難いんだけどね…生活は保証するし決して傷つけないし…大事にわされるよ。」
含みのある言い方だな。
なんだか嫌な言い方に顔を顰める。わたし達の前で庇ってくれてるリュートはその言葉にさらに棘を増した。
「生憎、僕たちは今の生活で満足な生活をしている。帰るんだったら見逃してあげるよ。」
赤髪の少年は静かに、リュートは彼の真意を探る様に視線を合わせる…が、リュートは目に力を入れて彼を睨む。
「…それに教会に火を放っておいて、勝手な事をよく言うね。」
「アレは周りの目から注目を逸らす為のものだ。用が終わったら消えるようになってる。」
「知ってる。でも水浸しにされたのまでは直せないクセに…だから勝手なことだ。」
少年は驚いたように目を見開いてリュートを見るが、リュートは目を眇めて苛立ちを露わにした。
「気付いてたのか…。」
「不自然な火に気付かないとでも?馬鹿にしてるよね。」
ふん、と鼻を鳴らすリュートを少年は観察するように見ると、何故か悲しそうな、寂しそうな、諦めたような表情をした。
「君って…、本当に、優秀なんだな…。」
今にも泣き出しそうな顔は、さっきまでと違って年相応な少年の顔をしている。
何故彼がそんな顔をするのか判らず私達は身構えて警戒するだけしか出来ない。
「旦那様が望むのは君みたいな子なのかもな。
ごめんな。連れてくわ。」
えぇ、なぜそんな話の流れに?!相手の狙いはリュートか!
でも前の会話で特に狙いは無かったみたいだし、相手が何考えてるのか判らない!
近くに駆け抜けてくる彼と咄嗟に後ろに下がるリュート、赤髪の子は拳を作ってリュートの体に殴りかかろうとしているのが何となくわかった。
まだ相手が子供だとしても赤髪の少年は私達よりもだいぶ背が高い。中学3年と小学生くらい違う。
こんなん殴られたら痛いに決まってるじゃないか!!
私はリュートの前に一瞬で氷の壁を出す。
と言っても調整とか細かい操作出来ないからただの分厚い氷の塊だ、でも大人でも砕くことは出来ないだろ!守れる!
氷塊の出現に相手は驚きながらも何もなかった拳に炎を纏わせ氷塊にそのまま速さを殺さず殴った。
氷から蒸発する音と煙が立ち上り半分以上溶けてギリギリ相手の拳を受け止める。
うわぁぁぁぁあ!こわぁぁぁぁあ!
あぶねぇぇぇぇえ!あんなんリュート受けたら木っ端微塵だよぉぉお!
氷塊は役目を果たしたとばかりに粉になって霧散する。私は慄きながら次リュートが狙われたとき用に集中した。失敗したら木っ端微塵だ。
相手は舌打ちしながら私達から距離をとり後ろを下がろうとしたが、リュートは植物に干渉し雑草を蔦のように伸ばし足を取ろうとするが、回し蹴りの様に少年が足を薙ぐと燃えて消えた。
どうにも相手は焦って見えるけどこっちだって余裕無い。
つか焦ってる風に見えるけど危なげなくいなしてるじゃん。ヤバイ、と言うかそう言えば下にお兄ちゃん達いたじゃん!余裕無かったから半分忘れていたけど助けを呼べば良くね?
「リンダ、助けを呼んで!」
「うん!」
私は少年に集中してリンダに任せようとした。




