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サーチ魔法

「皆大丈夫か?疲れてないか?

森とか歩き慣れないと余計に体力削られるから遠慮なく言えよ?


ここの拓けた場所は警戒しやすいし休憩しても良いからな。」


「お兄ちゃん、疲れた…。」

体力なくてごめん。

行きは馬車だしここまで歩いただけで疲れたとか、どんだけ体力無いんだってね。

うぅ〜体力アップ目指さねば。


思い悩んでいるとファインが私の頭をクシャッと撫でた。

「ちゃんと正直に言って偉いぞ。無理したら危険が増すから言うのが正しい。気にするな。」


優しさがしみる…こくっと頷く。

「んじゃ、メルディとリンダ。ここで荷物見張っててくれ。リュートは俺と一緒な。」

「え?なんで僕だけ?僕も疲れたよ。」

「リュートは土の恩恵も持ってるだろ?こういう時に使える応用教えるから。」


そう言われて渋々とリュートはファインに連れられて此処の拓けた場所と森の境目に歩いて行った。


ファインはリュートを連れて森に近づくとこの辺でいっか、と立ち止まった。


「ファイン、あの子の近くにいなくていいの?」

「ここからなら何とかなるから問題無い。」

「ファインってたまにデタラメだよね。」

「恩恵二つ持ってる奴に言われてもなー。」


言外に「お前が言うな」という軽いやり取りをする。恩恵を一つ宿してるだけでも持ってない人に比べたら大きなアドバンテージがあるのに、それを二つ宿してる奴にデタラメとは言われたくないだろう。


「まぁ気にするな、ここにはそんな強い魔物はいない。定期的に此処の魔物は狩られてるからな。」


木に刻まれた印を見るだけで良く人が出入りしてるのが解るというものだ。

逆に印が少ない、もしくは無いと人の手が入ってない場所になる。

ここは狩りの入門にもってこいだ。


「じゃあ俺式のサーチの仕方を教えるな。

まず土の恩恵を靴の下に地の表面を滑るように貼ってみろ。」


リュートは靴裏を意識して地面の表面を恩恵で貼る。

「出来た。」

「よしよし、リュートってコントロール上手いよな。」

「次は?」

褒めても冷めてるリュートにファインは気にせず進める。

「次はその状態のまま範囲を拡げてみろ。ここからが正念場だから気をしっかりな。」

「?、………――っ!」


リュートは顔を顰めると、顔色が真っ青になって口元に手を当てる。吐くという醜態は晒さなかったが足元がよろめいてファインが支える。

しかし体格差があり過ぎて『支える』と言うよりは『抱きかかえる』になった。


「大丈夫か?リュート。」

「………酔った。」

「だろうな。」


手を外したが顔は青いままだ。

ファインは知っていたから、あっけらかんと答えてリュートが恨めしそうに見る。


「リュート真面目だから、正直苦手だと思った。全部“視なくて”いいのにー。」

予想通りだったのが可笑しいのか口元がニヤニヤ笑ってる。その表情にリュートはイラッとした。


リュートはファインの厚い胸板を押して地面にフラつきながらも立つ。正直ファインとの体格差も違いを見せつけられてるようでイライラが割増に腹立った。言わないけど。


リュートはふぅ、とため息を吐き感情を静めて土の恩恵を足の下に地に沿って拡げる。

さっき、何も気付かず範囲を拡げすぎて酔ってしまった。


自分を中心に拡げていく。

地の枯れ葉の中に眠る生物、地を駆る動物の足の振動、地の中を移動する虫、人の足が土を踏む足跡。植物の根、根が汲む水の流れ、流れる湧き水…。


さっきの範囲内の情報総て思い出して頭痛と吐き気で強制シャットアウトする。

まだ、女子二人が待ってる方の拓けた場所は情報が少ないが、森側の情報量が受け付けないほど多い。足元から30センチ進んだだけで足元崩れた。


「……。うっ…。」

一回酔ったから酔いやすくなってる。

さっきよりも進まない。


そんな様子を見たからかメルディとリンダが荷物を抱えてファイン達のもとにやってくる。


「さっきから何やってるのって!リュート真っ青じゃん‼大丈夫!?」

「リュート‼」

急いでリュートに駆け寄って背中を擦ったり慌てる二人だが、リュートが片手を上げて抑える。


「二人共うるさい、頭に響く…。」

普段姉のリンダにそんなことを言わないリュートが真っ青な顔で悪態をついた。

そんな余裕ないリュートに驚いて私は苦笑いしてるファインを見る。


「今、俺式サーチ魔法の練習してたんだよ。

それで得た情報を頭に受け止め過ぎて情報酔いしてるとこ。」

「よかった〜」


リンダは胸を撫で下ろしてホッとする。

病気とか怪我とかそういうのじゃなくて安心したのだろう。皮袋の水筒を取り出してリュートに渡してた。


しかし“俺式”って何?

「お兄ちゃん、俺式のサーチ魔法ってどういうの?私も出来る?」

「…どうだろうな。土の恩恵しかないから出来るか解らないな。

簡単に言えば地面に介入して情報を得る魔法だ。地の表面を辿ってその範囲に何かあるか解るサーチ魔法なんだけど、リュートみたいに真面目で情報の選別せずに受け取るとこうなる。」

「…情報の選別とか…聞いてないんだけど…というか、僕…植物の情報まで入ってきた…うっ…」


水を飲んで落ち着いたのか顔色が幾分良くなってたのに思い出してまた気持ち悪くなったようだ。

リンダが介抱してる。


「いやぁー、悪い。出来たらやると思って言わなかった。しかし他の恩恵持ってると、ソレに因んだモノも感じること出来るんだな…。」


興味深いと楽しそうに考察するファイン。

それを具合悪くなりながらも拳を震わせるリュート。だけど決して悪びれないでファインは開き直った。

「まぁ、ちょっと予定外だけど、でも最初ってそんなものだろ?あとは慣れだな!」

ハハハと軽快に笑うファインをリュートは歯をギリギリ食い縛りながら悔しげに怒ってる。

私も何となく自分の足元を見て氷の恩恵を使ってみた。

すると足元に霜柱が立つ。


おぉ!


更に範囲を拡げ、私を中心に短い下草を巻き込んでパキパキと音を立てて霜柱が育つ。

その様が少し楽しい。

一歩踏むと霜柱が潰れクシャっと音を立てる。


おおぉ!

案外これなんとも言えない楽しさあるんだよね。


「うわぁ!凍っちゃってる、メルちゃんすごーい!」

リンダは言い合ってる二人を置いて私のもとに来ると霜柱の近くまで寄って見る。

私はイタズラ心が疼いてリンダを囲むように指定して範囲を拡げた。

「ひゃ!」

急速に成長した霜柱がリンダを中心に範囲を拡げると、声に気付いたのかこっちを振り返ったファインが感心していた。


「メルディの魔法は派手だなぁ、サーチしたら気付かれそうだ。」

辺りに霜が残り私とリンダの周りだけ冬のようだ、でも直ぐに溶けてなくなるだろう。


「でもお兄ちゃんのサーチは解った気がする。

リンダまで範囲を指定した時リンダの足が解ったもん。」

ちょっと得意げにファインに胸を張る。

やったぜぇーフッフゥ~!

そんな私にファインは声をあげて笑った。

「ハハっ!氷も感覚あるもんなんだな、じゃあメルディも森の方をサーチしてみようか、的を絞らないとリュートみたいに酔うから気をつけろよ。

あとそのまま使うと森が氷漬けになるから抑えてみてくれ。じゃないと余計な魔力食うぞ。」


笑いながら頭をポンポンと叩く。

くそぅ、まだ繊細なコントロール出来ないんだよ


ムムム…と目を瞑って恩恵に意識を向ける。

すると、まるで水の中にガムシロの色付きポーションをいれた時みたいに紺色のモヤが下から沸き立つ。


そのモヤを蛇口を捻って出すみたいに調整するが、この力加減が難しい。

さっきの霜が降りる状態で自分的に「少し」だった。

それをもっと少なく……。

…一滴、一滴、スポイトで垂らすように、少なく…。


そういえば―…的、かぁ…つまり検索だよね…

ニク、肉…エモノ…ニクゥ―……いた!肉!


「兄ちゃん!お兄ちゃん‼いた!肉!獲物‼捕まえたぁ!」

パッと目を開けるとバキンっと音が響いて森の色が変わった…そう氷色に。


「…え?」

「あー、やっちまったな。」

「…君、馬鹿なの?」

「あわわ、凍っちゃった。」


私の目の前に広がる光景は森の手前が木々の表面が総て凍り氷の植物みたいになってる。

そしてその先に道の標のように真っ直ぐだったり曲がりくねった導火線のように凍った道が出来てた。


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