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お兄さま

ブクマ&評価ありがとうございます!

ストックある分毎日12時に更新予定です。

いつの間にか眠っていて声をかけられる。


「お嬢様、起きてください」

優しく言うような、起こす気ないだろうてきな細やかな声。


目を開けたら優しく微笑んでる精悍な顔がある。

「ファイン、おはよう…ございます?」


子供の高い声が自分から発せられる違和感になれない。あとファインにどう声をかければいいかも掴めない。

普通に地で接した方が良いかな?最初に記憶喪失したふりをすれば良かった。いや今からでも遅くない?


「おはようございますお嬢様」


「あ、あのその『お嬢様』ってなんのことでしょう?」


ファインは限界まで目を見開き口をあんぐり開けたような驚いた顔になる。すまんね。

そうだよね、こんなこと言われたらビックリするわな。

でも今後のことを考えたら接し方に問題でるしお嬢様言葉なんていずれ崩壊するわ。


「おおお、お嬢様はお嬢様ですが、き記憶が?でも私の名はさっきまで…」

混乱してるのかはくはくと鯉のように口が動いてまともに言葉になってないが言いたいことは解る。


「その、貴方の名前は解るのですが…名前だけで…なぜそう呼ばれてるか解らないの、です…。

あと此処はどこでしょう?見覚えないですが私たちの家ですか?」


キョロキョロ見渡すように周囲を見た後ファインに向くと、ピキッと固まっていた。

記憶喪失あるあるの「ここはどこ?わたしは誰?」をやってみたのだがファインのキャパをオーバーしたようだ。

16歳の若人なんだよね、ごめんね。と罪悪感が胸を締めるが俯いた私を不安がっていると勘違いしたファインが意を決したように私の両手を手に取った。


「す、すまん!メルディさ、…メルディ!なっ名前を覚えてるのは勿論俺たちは兄妹だからだ!」

無理に明るく笑っているが必死に言うファイン…本当に申し訳ない。でもファインは本当に良いお兄ちゃんキャラだから、こんな状態だけどちょっと、少し、いや…かなりうれしい。


「あに、…お兄さ、ま?」

「そう!お兄さまだよ!」


照れくさいがファインが嬉しそうに満面の笑みで肯定してくれる。ふふ、お兄ちゃん可愛い~アニキ呼びしなくてよかった!

前世では(クソガキ)はいたけど年上の兄弟居なかったから憧れてたんだよね~。


「ここは山小屋で今は避難しているところだ。昨夜、野党に襲われてしまって旦那…いや、父さんと母さんが逃がしてくれたんだ。父さんと母さんは覚えているかい?」


正直記憶が戻った前後は他人の記憶の様で実感がない。首を横に振る。

ファインは悲痛な表情になって、小さく「そうか」と私の手をぎゅっと握った。


「ごめんなさい」

思わず口から洩れてしまった。ファインに色々なものを背負わせている。記憶はあるのに。

正確なヒロインの記憶ではないけれど、ファインが苦労するのは知っている。

口を引き結んで申し訳なく思っていると、ファインはそっと頭に手を乗せポンポンと優しく撫でてくれた。


「いいんだよ。」


柔らかく微笑む彼はまるで後光がさすように眩しい。こんなん惚れてまうやろぉぉ~さすが乙女ゲー!

スチルがないのが残念でならない。つーかこのシーンがゲームになかったのが信じられないわ。


「さて、そろそろ移動しなきゃな。」

ファインは靴を私に履かせ、手を差し伸べてくれる。


「実はな、不安にさせるけど今俺たちは追われてるかもなんだ。安全なところに移動しないと。

でも大丈夫!お兄さまはな、結構強いんだ!」


「うん!」知ってる!

ファインは最初に仲間になる初期メンバーの戦士だ。攻撃力もあり防御力も高く初期の回復魔法も使えるようになる使えるキャラだ。MPは低く最初にしか使えないキャラとも言われてるが育て方によっては化けることを私は知ってる。


ファインは照れるように笑い、出発の準備をする。

窓を覗き、私に距離をとり出入り口の扉を軽く押すと外を警戒する。

安全を確認すると手招きで私を呼び外に出た。


早朝の冷たい空気が頬を撫でる。時期は初夏だと思うが少し冷えぶるっとした。

「メルディ、悪いけど少し急ぐ。背中にしがみ付いてくれ。」


流石に森に幼女を引き連れと追っ手の手にかかると判断したのか背負うことにしたらしい。

しゃがんで私が乗りやすくしてくれるのは良いんだけど…。


なぜ上着を脱いで待ってるの?


おずおずとファインの背中に乗り跨る。ドレスのようなスカートだからかなり下がすーす―する。

「よし!ちょっとしがみ付いててな」

ファインは立ち上がり片手で私のお尻を支えてたが、そういうと手を放した。

支えが無くなってガクッと下に下がりそうになるのを両足でガチっとファインの腰にホールドする。


ビ、ビックリしたぁ…


再びファインが、よっと、と言い上にあげてくれたから今度こそ支えが無くなる前にガチと彼の胸板辺りをホールドする。

安定したのを感じたのか手を放し、両手でファインのコートを広げると私を包むように被せ、前でキュッと袖を結んでいた。


確かにあまり引っ付かなくても落ちなくはなったけど…これって赤ちゃんをおんぶする時にする。抱っこ紐のようなものでは?なんか恥ずい。


「これで走ってもメルディの負担は抑えられる、揺れるだろうけど我慢してな。」

「う、うん」


返事した途端ヒュっと風を切るように走り出す。思わず悲鳴が漏れそうだ。

前にファインの頭があるからそこまで風は強くないし背中が当たって暖かいのだけど、風景がすごい速さで流れていく。ひゃーーーファイン早ぁぁ!

でもちょっと楽しくなってきたぁぁぁあひゃひゃひゃぁぁぁ


前世でジェットコースター大好きだったもんで案外平気だ、上下揺さぶられるけど許容範囲だ!

山の木の切れ目から街が見える。大きい街で城も見えることからここはリーゼンブル城とリーゼンブルの城下町だろう。


「お、お兄さま、あの町行くの?」

「ん?そだよっと」


山の斜面に差し掛かりファインはジャンプで跳ねると器用に着地して山を滑り降りる。

登山のような道はなく垂直に近い場所も軽々と滑っていく。

よく手でバランスを取らないで両足で滑っていくものだ。

何となしにゲーム上の属性は土だったなーとしょうもない事思いだした。


この世界は魔法に精霊、恩恵などがある。ファインは土属性の恩恵を持っていて効果はクリティカル防止だった。でも他にもなにかあるのかもしれない?それとも両足が負担に耐えられるだけ鍛えてあるだけ?


考えてたらいつの間にか山の麓までたどり着いていた。早い。


「メルディはすごいな!」

「え?」何が?

いきなり褒められたことに驚くと、ファインはニカっと後ろを振り向いて笑った。


「正直耳元で叫ばれるかと思ったからさ、なかなか肝が据わってるなってな」


そっか、普通のご令嬢だったら叫ぶか…でも私だしな!

「ううん!楽しかったよ!」

「そっか、メルディは強い子だな!」


ちょっと得意げに笑ってしまった。6歳の体に精神ひっ張られてるのかな?

でも実際周りに私ほどジェットコースター得意な人が居なくて密かな自慢でもあるんだ。ふふん


「さて、追っ手はいないみたいだし、ここから歩こうか。」

ファインがすっとしゃがんでおりやすいようにしてくれる。


コートを解き地面に降り立った。

ずっとおんぶされてたからか変な感じがする。


ファインがほらっと手出してきたから私も彼の手を握る。

大きくゴツイ手、よく小説で比喩されるような手はこんな感じなんだと思った。


なんか本当にお兄ちゃんのようだなぁ。子供のころに戻ったみたい。

実際子供になったんだけどね。悪くないかな。





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