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ランハルト・フォン・エルビンス

変態注意

リーゼンブル王都の貴族が多く暮らす上層区の一角の屋敷。

エルビンスの本家とは別の王都に居座る為だけの屋敷だ。


窓から見る王都で思い出すのは貧民街にある孤児院の教会。

まだ9歳の見目麗しい双子の姉弟と新しいメルディという名の見事な青銀の髪と薄紫の双眸の愛らしい少女。

               

美しかった。青銀のまるで水が流れるような艶やかな髪。

リーゼンブル公爵家にもたまに現れる髪色だが、過去の喪った王家をも彷彿させるような髪色だ。


欲しい。欲しい欲しい欲しい!

珍しい髪色だからこのチャンスを逃せばもう手に入るチャンスはないだろう。


ったく、あの女狐が…!毎度私の邪魔をしおって!!忌々しい!

何が『風解(ふうかい)の魔女』だ!昔の戦争で戦果をあげた事で王の覚え目出度いと聞くが、そんなもの過去の栄光だ!


今やただの老いた老婆だ…。何十年前の事だと思ってる!


しかしあの女の庇護下では手が出しにくいのも事実。


クソっ!!!!


サイドテーブルに感情のまま拳を叩きつけ、置いてあったワインとグラス揺れる。

教会で子供たちに見せていた優しい表情は、今や欲望と憎悪で歪められていた。


その時部屋にノック音が響く。

エルビンスは先ほどの表情を内面に隠し穏やかな声色で入室を促した。


「どうぞ、入ってください。」

「失礼します。旦那様。」


入ってきたのは成人満たない幼さが残る執事服をきた少年。


熟練の執事のようにはいかないが、たどたどしく慣れないが一生懸命形にしようとしている姿にエルビンスはさっきまでのささくれ立っていた気持ちが癒されていくのを感じた。


「こんにちはトリヴィス。よく来てくれましたね。」


トリヴィスはリンデル領の孤児院から引き取った子供だ。

長い髪を後ろで結び前に流した真紅の髪に金茶色の瞳、子供のわりに鋭い顔だが将来が楽しみな整った顔立ち、そして火の恩恵を宿している。

私に懐いてくれている優秀な可愛い子。


「はい、ご用は…いつもと同じで?」

「そうです。さ、来なさい。」


エルビンスは自分の膝をポンポンと叩くとトリヴィスと言われた少年は軽く溜息を吐いた後、さっきまでの気を使った所作じゃなくて、普通に歩いてエルビンスの近くまで来て膝の上に乗る。


エルビンスはまるで女の子が人形にするようにトリヴィスをぎゅっと抱きしめる。そしてトリヴィスの(うなじ)に顔を埋めた。


「あぁ~、やはり子供(あなた)はいいですね。癒されます。」

「はぁ…そうですか。良かったですね。」

「ほかの子達は上手くやってますか?」

「問題ありません。…呼びましょうか?」

「そうですね。お願いします。」

「…旦那様、今日はどうしました?」


さっきまで項に埋めたまま会話していたが、いつもとは違う態度にトリヴィスは振り向く。

「いやね?あの女狐が、また私の邪魔をするのだよ。」

「………。まだあそこの孤児院の子を狙ってるんですか。諦めてくださいよ。」

心底呆れたような表情をするがエルビンスは気にしない。これもいつもの事だ。


「それに、その双子を諦めてから貴方は何人の子供を屋敷に召上げましたか?まだ足りませんか?」

「いやいや、諦めてはない。あの女狐が手放さないか確認はしているだけだよ。そうではなくて、新しいメルディという少女が欲しいのだよ。」


トリヴィスは正面を向いてエルビンスを好きにする。そして気付かれないようにそっとため息を吐いた。


エルビンスは色んな孤児院に通い、見目麗しい子供を引き取るのを趣味としている。

可愛い子どもは癒やされる。要らなくなっても引く手数多だから処分にも困らない。懐いてくれれば腕の中の彼のように優秀な子として育ってくれる。

子供とはなんと素晴らしいことか…。


あの女狐が双子を他所に養子に出したら直ぐに買い取るつもりだった。

双子のリュートの方は頭も良く優秀そうなうえ、リンダの方も子供の無邪気さが癒やされるし着飾れば自慢にもなろう。

双子をセットに茶会に参加すれば私以上の子などいないに違いない。

更にあのメルディという少女…素晴らしい。


三人の子供を引き取り『萌木の会』に顔を出させたときの反応はとても心地好いものになるに違いない。


あぁ、その時が楽しみだ。


しかし双子は3歳からあの孤児院に引き取ったと情報を得ているが未だに養子にだす気配がない上に、あの一見以来教会に顔をだすこともなかった。

今回たまたま、王都に用があり寄ったら噂で新しい子が孤児院に入っていったと聞いたから寄った。まさかあんな美しい子供だとは思わなかった。

あの子が増えていたのは、きっと運命の精霊の思し召しに違いない。


必ずや、次こそは私に渡してもらうぞ。



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