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水の恩恵

来た先は裏の畑だった。

リュートが言うには、元々畑で魔法の基礎を教えてくれる予定だったとの事。


「じゃあコレから恩恵の水使うから見といて…。姉さんはアドバイス係ね。」


「うん!メルちゃんがんばってー」


こくりとリュートと対峙する。魔法で水をあげてる姿はチラッと見たけど、どう使ってるかはよく分からない。と言うか見て解るのか?


緊張と不安が混ぜ合いになるけど、教えてくれるリュートはいつもの通りだ。

少し伏せられた目に長い睫毛が影をつくっている。整った容姿に色素の薄い髪と肌。

うーん、美少年…。


「…んで、聞いてる?」

「ごめんなさい。現実逃避してました。」


真顔で答える私にイラッとした表情のリュートが「折角教えてるのに、真面目にやってよね。」とキレ気味に言う。すみませんでした。


ふぅ、と息を吐いて苛立ちを逃がすと眉を釣り上げて目を細める。


「んじゃ、もう一度言うから今度はちゃんと聞いてよね。次聞かなかったら教えるの辞めるから。」

「はい!」


本当に解ってる?と言いたげに訝しんだあと、いつもの落ち着いた顔に戻る。

「じゃあ、まず見てて。」


リュートは解り易いようにと私の高さに合わせて掌を上にあげ、その空中に水球を生み出す。


まるで水の玉が掌の上で浮いているように見える。その水の玉が掌の上で踊り、いくつもの小さな水球になりぐるぐると回り始めた。


「うわぁ〜〜すごぉい‼」

目に見える魔法の奇跡、これがテンション上がらずに居られるべきか!!

踊る水球を見ながら交互に両手を上下させてテンションの度合いを表す。うわぁうわぁと言葉にならない奇声を発してたら目の前からプッと吹き出す声が聞こえた。


「…姉さんと同じ反応…ふっくく…」

なんと!あの苦笑いか含んだような口角釣り上げて笑う笑顔以外しなかったリュートが声を出して笑っとる‼

見ていたリンダがショックそうに「えっ⁉わたし…し、してないよ!タブン…」と語尾が小さくなりながら頬を赤らめて恥ずかしがってた。


私はそのまま「ふおぉぉ」とテンション上がったまま、今度は両手を揃えて上下しながらスクワットしたらリュートが耐えきれなくなって「ふはっ!」とお腹を抑えてくの字になった。勿論魔法は中断され水球は霧散した。


「なっ何変な行動してるの…ふふ馬鹿なの?」

変なツボを刺激されたようで片手を口元に当てて笑いを堪えているけどクククと声が漏れて我慢しきれてない。


うわぁぁぁ〜普段笑わないヤツのギャップ萌ぇぇぇえ‼やだぁ〜私もなんか楽しくなってきた〜


こういうあまり笑わないヤツが声を出して笑ってるともっと笑って欲しくなるよね、こう―…使命感というか!

「リンダ、リンダ!」

「なになにー?」


急いで手招きしてリンダを呼ぶとすぐに近くに来てくれる。


「リンダ!可愛いポーズ!」

「え!?え?こ、こう?」


そこで何故かリンダは手を横にわさわさと上下に動かし始めた。リンダのチョイスは虫か!?

他にもあるだろ!どこを可愛いと思ったの!?


「っくは!姉さん!なぜソレェ!!」

リュートも私と同じ事を思ったのだろう。息も絶え絶えに突っ込みながらドシャっと地面に片膝をついてリュートが笑う。体がぶるぶる震えていた。


「え、ぇぇぇえ!」

「くっ…し、しぬぅ」

「あははははは」

リンダは何故リュートが沈んだか判らず慌てる、その光景で私は大爆笑した。


暫くしたらリュートの笑いが治まってしこたま怒られた。ぜぇーぜえーと肩で息をして疲労困憊だ。

リンダは楽しかったねと笑っている。

後でこっそりとリンダに言われた事だけど、リュートがあんなに笑ったの始めてみた。と笑っていた。


「…折角基礎教えようと思ったのに…無駄な時間くったな…何もしてないのに…疲れた。」

「笑ってたからね!あー楽しかった!こんなに笑ったの久しぶり!」

「わたしも楽しいー!」


二人で笑っていると後ろから土を踏む音が聞こえて振り返る。

リュートは私とリンダの対面にいたから後ろに気が付いてたみたいだけど何も言わなかった。


「…これは、一体どういう状況だ?

表までリュートの笑い声が聞こえて驚いたぞ。」


思い出したようにファインはククっと喉を鳴らして笑う。それにリュートが悔しいような恥ずかしいような顔になって無言で真っ赤になってた。


「お兄ちゃん!」

「ただいま」


近づくと大きい手のひらが頭を撫でる。

外から帰ってすぐ来たのか軽装にベルトで帯剣していた。


「三人で何して遊んでたんだ?」

ファインは私の頭を撫でくりまわしながら聞いてきた。

頭がボサボサになるけど、ファインの大きい手で撫でられるのは気持ちいいのでそのまま答える。


「今ね、リュートが笑ったからもっと笑わせようとして怒られてたとこ!」

「目的違うよ!君に恩恵の基礎を教えるところだったんだよ‼」


即座に否定された。

「ちょっとファイン!この子なんなの!人の話まともに聞かないんだけど!」

キレ気味なリュートはファインにあたり始めたけど、ファインも私の頭を撫でくりまわしながら「うーん」とマイペースだ。


「メルディはお転婆だからなぁー。そう言えば、よく逃げてたな。」勉強から。と付け足された。

oh…ヒロイン…。いや今は私でもあるんだけどね…。


懐かしいものを見るように優しい目だ。ただその目は慈愛というより生暖かい目だ。そんな目で見ないでください。

リュートは笑いに耐性がない話。

一回ツボるとしばらく引っ込まない。

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