畑
ブクマ有難うございます!※虫注意
12/28森を雑木林に変更しました。そんなに木は深くないので林程度だと思ってたいただけたらと思います。
今日からリンダとリュート君の双子と一緒に畑仕事をすることになった。
前は夜の湯沸かしで裏に行ってちらりと畑を見たが、明るい時に見ると結構範囲が大きかった。
…10坪(20畳)くらいかな?畑としては小さいけど9歳の子供二人で世話してるわりに広いくらい。
「リンダ、リュート君今日からよろしく。」
「うん!メルちゃん一緒に頑張ろうね。」
「よろしく。あとリュートでいい。」
お前もか…個人的にはリュート君は君を付けたいな、可愛い子に敬称を付けたい。
でも嫌なら仕方ない。今回は引くけどいつか愛称で呼べるくらい親しくなったら『リュー君』と呼んでやる!
ぐへへと心の中に目標を掲げてるとリュートが一瞬顔をしかめた。感づかれた?
「ところで私何をすればいいかな?」
話を誤魔化すとリュートが私に話しかけてくる。
「君も恩恵持ってるんだよね?どんな恩恵なの?」
「えーとねぇ、闇の恩恵って聞いてるけど、シスターいわく混ざりすぎて何の恩恵を持ってるか解らないけど、紺色があったから氷か水を使えるんじゃないかって言ってた。使える恩恵を探すことから始めないとなんだって」
「…あいまいだね。でもメルちゃんそんなに恩恵持ってるんだ、すごいねー!」
「『君も』ってことだから二人も恩恵あるの?」
「ううん、わたしは持ってないよ。弟のリュートが水と土の二つ持ってるのー!」
いつも控えめなのに、リュートのことを話す時は満面の笑みでテンションも高い。自慢の弟なんだなーというのがすぐに解る。そしてリンダの方がお姉さんだったんだねー。
反対にリュートは眉間に皺がよっている。不服って感じだ。
なんとなくリュートを観察してると、スッと表情が戻ったあと目が合った。
リュートは一部始終見られていたと気付いてバツの悪そうな顔をする。意外ところころ変わる表情にほっこりした。
その後もっと表情が険しくなって敵意を感じた。なんかゴメン。
「君、余裕みたいだけど恩恵の魔法使ったことあるの?シスターから基礎教えてもらう時間もなかったんじゃないの?」
「うん!ない!だから何も出来ないよ!」
「使えないな」
「そうだよ、使えないよ。だからやること教えて。」
たぶん嫌味のつもりだろうけど、正にその通り!
リュートが苦虫を噛み潰したような顔をしている。せっかくの可愛い顔が台無しだ。だがその顔もまた可愛い。
「え、えっと、じゃあメルちゃん。わたしと一緒にお水あげよー。
んとね、シスターのお願いでねリュートが育てる畑と私が育てる畑を別にしてほしいって頼まれてるの。だから井戸に近いほうがわたしの畑であっちがリュートが育ててる畑だよ。」
井戸近い方に耕してある畑がある。柔らかくなった土はリュートにしてもらったらしく、ウネに現在私達より頭一つ分くらい大きくなった植物が支柱に支えられながら小さな青い実をつけて青々と立っていた。
リュートの畑にも同じ植物が植えてあり、経過の実験でもしてるみたいだ。
青い実は心なしかリュートの植物の方が大きく連なってる気がする。他のウネには白い花を咲かせたものや葉だけ茂ったものもある。
見たことあるけど、トマト、人参、ほうれん草?かな…
リュートの畑と比べてもとくに変わったところはないけど、リュートの畑の方がトマトが色付いてるのが多いかなー?くらいだった。
「じゃ、メルちゃん、畑のお世話しよ。早くしないと鐘がなっちゃうよ。」
「鐘?」
リンダに手を引かれて井戸に移動する。
バケツ一杯に水を汲み畑の近くに置いた。
「鐘はね、朝と夜を教えてくれるんだよ。
朝の6の音と夜の6の音で音が違うの、鳴る数で解るようになるよ。」
「へぇー、たまに聞こえる鐘の音ってそれだったんだね。どこからなってるの?」
「中央にある大聖堂だよ、行ったことないけど大っきい鐘があるんだって!」
除夜の鐘みたいな?頭に思い浮かぶのは大人より大きく吊り下がってる寺の鐘だ。でもファンタジーだと金色っぽいなー。
凄く結婚式のイメージがでかい。
「すごいね、でも時計とかないの?」
「とけい?」
リンダが解らないと首を傾げてる。
「えっとね、時間…鐘がなる時が解る道具…かな?」
そういえば、ゲーム上で朝夜の表記あるけど時間無かった気がする。必要ないし。
「んーっと解らないけど、鐘鳴らす人はないと困ると思うから。あるんじゃない?」
迷いながら言うリンダ。うんうん唸りながら作物の葉に付いてる幼虫を掴んで水のバケツとは違う少し小さいバケツにポイポイ入れていた。
ギョッとした。可愛い女の子が平気で幼虫(大)をワシ掴んでバケツに入れる姿に戦慄した。
いや、私も周りの女の子に比べ平気な方だと思う。「うっわ、一ノ瀬さんマジ勇者…」とドン引きされた事も多々ある。
ていうか毒とか大丈夫?毛虫じゃないけどさぁ
きっと今、私がリンダを見てる視線でいつも見られてたと思う。
いやぁ〜、でもちょっと素手は無理かなぁ〜。
はし…箸欲しいなぁー、切実に。
そこらに落ちてる枝使おう。
畑の害虫を退けて、手で作物に水をあげる。
「畑の水ってこんなものでいいの?」
畑全体に撒かないでリンダの言う一部だけに水をあげた。まだバケツの半分は余ってる。
「うん、大丈夫だよ。シスターが言うにはあげすぎると自分でお水を探さなくなっちゃうんだって。
逆にリュートの方は沢山撒いてるけど、あれは魔力を含んだ水をあげるとどうかの実験なの」
あーなんか聞いたことある。根が小さくなるんだっけ?まぁ、近くに森あるし水分豊富なのかな?良くわかんね。
リュートの方を見ると雨みたいに細い水を畑全体に降らしてた。すげー。
「じゃあこのお水どうする?」
バケツを持って中の水を揺らして遊ぶ。
「あ、それはねメルちゃん来て来てー。」
リンダを先頭に畑の奥の更に奥。
雑木林の近くにちょっとした花畑があった。
花壇みたいに柵とか囲いはなく、そのまま種を蒔いたみたいに色とりどりの花が疎らに咲いている。
統一感は無いけど、それも自然体で綺麗だった。
「うわーお花畑だ!綺麗だね!!」
「今ね、ちょうどいい時期みたいで咲いてるの。前にシスターが何の種か解らないお花の種が沢山入った袋を持ってきてね、リュートと一緒に蒔いたのよ。」
くすくす笑うリンダも花が咲き綻ぶように笑う。
やべぇ、妖精さんかよぉぉぉお!!
感動して全身喜びに震える。神様ありがとう。
正直リンダの笑顔で花畑の感動が霞んだけど、リンダは喜んでくれたと満足した笑顔だ。
「残りの水はこのお花達にあげるんだよ」
と花を指さしたらリンダの顔が何かに気づいた様で口をムスーっとさせて細く可愛い眉毛がキュキュっと上に釣り上がった。
え?不機嫌な顔?可愛いんですけど…
「どうしたの?」
リンダはムスーっとした顔のまま花を指差す。
「あの虫がねー、また来たみたいなの。」
良く目を凝らしてみると、花に確かに飛んでる虫がいる。いやしかしデカイな。離れてても見えるてデカ過ぎるでしょ。
ここが異世界であることを感じるわ。
花の花弁にフリフリと黄色と黒の縞模様のケツが見える。うん。蜂ですねぇ。
花の花粉を一心不乱に身体に擦り付けるよう動いている。
たぶん大人の親指くらいデカイ。オオスズメバチかよ。
でも、太めのフォルムに首にファーみたいなモフモフ…あれは…。
記憶を探してるとリンダが蜂を追い払おうと近寄る。
ちょっ!素手で殺る気か!
「リンダ!だめ!危ないよ!」
「だ、だって虫は駆除しないとってシスターが…」
いやいや、だからって素手でやらないでも…
「だ、大丈夫!益虫もいるよ!」
「えきちゅう?」
オオスズメバチは害虫だけどな!でもあの蜂は…




