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ファイン目線・前半

中途半端に長いので2日に分けました。逆にいつもより短い気がします。

日の出と共に起きて腕の中で丸まっているメルディを見る。

健やかな寝息で顔色も良い事にホッとしながら昨夜の事を思い出した。


夜、布団の中で休んで少し経つと寝息が聞えてきたのも束の間、浅い呼吸をし始めた。

異変に気付いたものの声をかけても収まる事はなく、徐々に悪化し始めて過呼吸を起こし始める。


咄嗟にメルディの手を掴むが、固く目を閉ざしているのに、声だけはハッキリ「ママ、パパ」と両親を呼んでいた。


「メルディ!メルディ‼」

起きてる時とは全く違う様相で咄嗟に揺さぶっても、名前を呼んでも反応は無く額に汗を滲ませながら目に涙が溜まる。


焦っては駄目だと、冷静な判断をしなくてはと思っても考えが纏まらない。

咄嗟に朝のシスターの宥め方が頭に過ぎった。


ゆっくり、ゆっくり、一定のリズムで…手を握りながらメルディの震える体を軽く叩いた。

どうか、落ち着いてくれと祈りながら、泣かないでくれと懇願しながら、息が止まりそうな過呼吸から唸り声に変わり微かに目が開く。

ホッと息を吐いた。でも…メルディの虚ろで朦朧とした目に自分が映ってないことが堪らなく悲しかった。


屋敷に入ってたったの一年と数ヶ月、ほぼお嬢様と関わりなく暮らしていた。なのに記憶を失ってたったの一日、屋敷での時を軽く超える時間を今一緒に居る。


だから勘違いした。俺にとってこの一日だけで彼女が特別な存在になろうとも、メルディにとってたったの一日、俺は彼女の特別に成り得なかったこと。

その時、ふとメルディの朦朧とした目と確かに合った。焦点が自分に結ぶ。


「ふぁ、いん…にい、さま」


握っていた手を微かに握り返され、小さな掠れた声に自分の名前が紡がれる。

「…メルディ」


心に安心と歓喜が宿った。少しは彼女の中に自分は居るだろうか、多少は信頼されてると自惚れても良いだろうか?


静かに、落ち着くまで一定のリズムで叩いてると、小さく「もう、大丈夫」と横たわったメルディから声が聞こえる。


手を止めはしたが、メルディと繋いだ手から震えが伝わってきてその手だけは離さなかった。


「兄さま、一緒に寝て、いい?」

「ああ」


甘えてくれることが嬉しい。

メルディが俺を入れるため横にズレるが、俺から手を離さず俺も離す気はない。


流石に布団に納まると手を離されてしまったが、俺の胸に頭を押し付けるよう寄ってきた。


そのまま少しすると寝息が聞こえてくる。


今度は怖い夢を見ないといい、安心して寝てくれたらと願う。

メルディの青銀の髪を指に絡めて梳くように後ろに流す。柔らかく、冷たいのが気持ちいい。


そのまま抱くように掌に納まる小さな頭を撫でて、自分も眠りについた。


………そして、そのまま自分まで熟睡してしまうとは何たる失態、恐るべし子供の体温。

いつも日の出と共に起きるのに、今日はいつもより日が高い。

せめてもの救いはメルディが起きてないことか。


そろそろと起こさないよう、メルディから離れてベッドから下りて出かける支度をした。


もう一日続きます。

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