予定
いつもより短めです。
どこからか、鐘の音が聞こえる。
起きるとファインの姿はなく、部屋の中は静かだった。
「にい、さま?」
呼んでみても返事があるはずなく、ファインの用意した布団を見るとキチンと畳まれ端に寄せてある。
実際一緒のベッドで寝たから用意したのに申し訳なくもある。
でも朝まで夢見ずにぐっすりと寝れたからファインには感謝だ。
部屋の中は明るく、木枠の窓から光が漏れている。夜の闇で真っ暗だった世界が別世界のようだ。
ベッドから起きて靴を履き、手櫛で髪を整える。
日本では有り得ない色、さらっとしていながら、柔らかい髪質。少し毛先がウェーブがかかってて、少し鏡が欲しかった。
自分の姿見てみたい。
部屋からでて、食堂に向かうと、もう部屋から声が聞こえてきた。
扉を開けるとローザとダリルが机の準備をしている。
「遅かったな。」
「おはよう、メルディちゃん。良く寝れました?」
「すみません、おはようございます。シスター、ダリル君。何すれば良いですか?」
挨拶を返すとダリルがスッゲェ嫌な顔をしてこっちを見ている。
…何だよ…。
なぜそんな顔するのかわからず、ダリルを見ながら首を傾げる。
「君ってキメェな、ダリルでいい」
あ、そゆこと。
納得した目で見ると、ダリルはプイッと別なことをしに離れていく。ローザはクスクス控えめに笑いながらこっちに来た。
「ふふ、ダリルの言うこと聞いてあげてください。君なんて呼ばれたことないからムズ痒いのですよ。」
面白いというように笑うローザはとてもお茶目な表情をしている。私もつられて笑う。
「ふふ、そうなんですか?解りました。」
「今キッチンで準備しているはずだから手伝ってあげてください。」
「はい」
奥の続きの部屋に行く。初めて入る場所で中には石の竈と作業台が設置されており、そこでラルが料理を作っていた。
野菜の炒め物とスープのようだ。
ラルの周りではリンダが皿の準備をして、外に繋がる窪みでリュートが洗い物をしている。
「おはよう、何手伝えばいい?」
声をかけるとラルとリンダが気づく。昨日で大分仲良くなったと思う。
「おはようメル!今お皿に移していくからテーブルに料理を持って行って並べてくれる?」
「わかった!」
それから流れ作業をしてあっという間に準備が出来た。
ファイン以外の皆が席につく。
「…そういえばお兄さまは…。」
部屋に居なかったから、先に行ったかと思ったけど今まで姿を見ていなくて目で探してしまう。
「ファインは朝から用事があるって出かけましたよ、では精霊の恵みに感謝を…。」
心に引っ掛かりを感じながら朝食をいただく。薄い塩味で素材の味だけど食べれるだけでも有り難い。
文句を言っては罰が当たる。
でも物足りなさは感じるから、なにか前世の知識で良いものが在ればいいんだけど…。如何せん低学歴でオタクで、にわか知識しか持ってない自分は役に立たないだろうなとは思うけど、はぁ…。
勉強してればよかったと思わないでもない。
今日はラルが昨日言ってた裁縫屋で仕事、そしてダリルは金物屋で弟子入りしているらしく、そこに行くとのこと。
リンダとリュートはいつも孤児院の畑の世話をして、空いた時間にシスターに勉強を教えてもらっているらしい。今日もその予定だそうだ。
私はシスターから、朝食食べ終わったら『洗礼』を受けましょう。ということで、終わったらリンダとリュートと一緒に勉強をしてもらおうと思ってる。




