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男子会

ラルが嬉々としてメルディとリンダを連れて部屋に戻っていった。


食堂にシスターと男三人が取り残される。


「…で?ファイン、何処の子ひっかけてきたんだよ。『お兄さま』って呼ばせてさ。」

最初に会話を斬ったのは食べ終わって頬杖をついているダリルだ。

言外に犯罪かよとジト目をしながらファインを見ている。

リュートは真っすぐ姿勢が良いままファインを見る。


「かわいい子だったね。それに不思議な『色』をしてた。」

「なに?リュートタイプ?」

「え?別に?」


顔色変えず答えるリュートにダリルは「つまんね」と返す。


「ひっかけてないし…それに…別に良いだろ!!

ちょっとメルディは記憶を無くしててな、ちょっかい出したら絞めるぞ、特にダリル!」


どう説明すればいいファインは言葉を濁した。でも釘を刺すことを忘れない。

「ファインがそう言うようになるなんてなー、そんなに『妹』が大事なのか?なんで戻ってきたか解らないけど俺世話しないぞ。」

「記憶ないんだ…。大変だね。ボクは力になるよ。ファインには世話になってたし。」


「リュートは良い子だな~」

ファインは破顔しリュートの頭をワシワシ撫でる。

リュートの髪はさらさらで指の通りがいい。撫でててなんとなくシスターに向いた。

シスターはほっこりと男連中の会話を聞きながら水を飲んでいる。


「なぁシスター、よくリンダとリュートを引き取られませんでしたね。」

身内の贔屓でも男の目からしてもリンダとリュートは見目が良い。メルディに並ぶほど美少女、美少年だ。

白に近い淡い色の金髪に青が混ざった綺麗な緑色。見た目も精巧な人形のようでしかも双子、希少価値が高い上に実はリュートだけ二つの恩恵を持っている。

正直青田買いする貴族、もしくはアレな貴族に目を付けられそうだと思ったのだ。


正確に言葉の意味が解ったシスターはニコリと笑って答えた。

「あんまり相性が良さそうでなかったからお帰り頂きましたよ。それにリンダちゃんとリュートには好きな未来を選んでほしいですもの。」


あぁ…やっぱりあったんだ。

シスターは自分が育てた子供を簡単に渡したりしない。子供の意志を尊重し、大事にしてくれるとお眼鏡にかかった人にだけ子供を託すのだ。

そんなシスターだから、貴族から金は貰わない。弱みを見せて子供を連れていかれるのを避けている。

この孤児院の運営のお金は国の補助と過去この孤児院を卒業した元子供達と善意のお布施と寄付のみ。だから運営は貧困だ。


それでも贅沢しなければ洋服と燃料と食事はあるし、人としての誇りを守れるなら安いものだ。

この孤児院で世話になった人は皆シスターに感謝している。ファインもその一人だ。


「シスター。シスターが困ったらボクだけでいいなら別に構わない。シスターの方が大事だよ。」

「あらあら、リュートは頭がいいのね、ファインとは大違いだわ。リュートを他のお宅に渡さないのは何も相手が変態だからってだけじゃないのですよ?」


今この会話をしたことにシスターから嫌味をくらう。そしてリュートたち双子を引き取ろうとしたやつが変態(幼児趣味)なのは認めるんだな。


「リュート、貴方は恩恵を持ってるでしょ?」

「はい、水と土を持ってます。」

「その恩恵はあなたを守ってくれますし、どんな道にも連れてってくれるわ。焦らず自分の道を探しなさい。」

「…はい、シスター」



恩恵を持っていると職業に困らない。

水の恩恵を持っていればいつでも水を呼べるし、使い方次第で自衛も出来る。

更に水と土の組み合わせで畑にも効力があるのだ、植物に干渉出来るのかリュートが育てる植物はいつも元気で立派な作物が採れる。そして育つのが心なしか早い。誤差の範囲だろうが、それだけでも凄いことだ。


恩恵一つでも困らないのに、恩恵が二つ持っているだけで引くて数多なのだ。

そう、誘拐に気を付けなければいけないほどに…。

だから恩恵を持っているのは此処だけの秘密だ。


…まぁ、リュートとリンダは恩恵無しでも誘拐を気を付けなければいけないけど。リュートはそのこともちゃんと解っている賢い子だ。


「ファイン、明日メルディちゃんの洗礼を終えたら着る物買ってあげたいのですが、時間ありますか?」


今メルディは一人に出来ない。だけど着の身着のまま出てきたから何もない。今のメルディが着てる服もリンダの服だ、限りがある。


かといってシスターも教会から離れられない。

ファインは難しい顔をしてシスターに訪ねる。


「…俺も、急いで確認したいことがあるので難しいです。ラルにサイズ図ってもらって帰りに買ってきて貰うことは出来ますかね?」

「それはラルちゃんに聞かないとですね。」


ダリルは肘を支えに顔を乗せながら二人のやり取りを険しい目で見ている。

「なぁ、ファイン…。」

「ん?」

「何に巻き込まれてるか詮索しないけどさ、あんまラルを巻き込むなよ。仕事先も決まってんだしさ。

つか巻き込むなら多少の説明くらいほしいぜ。」


ファインはキョトンとした目で、じっとダリルを見る。ダリルは何となく浮き足立って「…なんだよ。」と警戒していると、ファインは納得いった表情になって爆発を落とした。


「…あぁ、お前昔からラルのこと大好きだもんな。」


「………は?」

一瞬なに言われたか解らない顔をしたが、すぐ意味を飲み込むとダリルの褐色の肌が徐々に色付いて、驚きに瞳を見開く。


「ば、ばっ!バッカ!!いきなり何を言って!ばばばババアなんて好きじゃねぇよ!!口喧しいし可愛げねぇし、俺より背ぇ高ぇし強ぇし!!俺は大人しいリンダの方が好みだ!!」


「え?姉さんを?迷惑。」

「うるせぇ!!」


慌てて罵るダリルにファインは微笑ましいものを見るような目でさらに追撃する。因みに悪気はない。

「普段俺らの前だと冷静なくせに、ラルの前だとクソガキになるよなー。別に他の女の子が今まで居なかった訳じゃないのにさ、未だにシスター以外の女に免疫ないし。」


「だぁぁぁぁぁぁあ!!!!もう!うっせぇな!お前もうだまれぇぇぇ!!」

耳まで真っ赤になったダリルがファインの背後に回って首を腕で締める。ダリル的に本気で締めてるがファインは楽しそうに声をあげ、笑いながらダリルの腕を外そうと掴んだ。

「ははははは!苦しいってギブギブ」

「だったらお前もう黙れ!!それにシスターは女じゃねぇー……」

言葉が尻すぼみ、さっきまでの勢いが消えていく。

ファインはダリルを見ると、さっきまで真っ赤だった顔が、今度は真っ青になって固まっていた。

無理もない。


シスターを見るとに~~っこりと、とても良い笑顔をしていた。

子供達の軽い紹介。


ダリル(12)→グレーの髪にオレンジの髪で褐色の肌の異国風の男の子。

普段口が悪いが冷静沈着。だけど異性の前(特にラルの前)でクソガキになる。


リュート(9)→淡い金の髪に青に緑を足した綺麗な色彩の美少年。

リンダの双子の弟。よく人を試してしまうクールな毒舌。

水と土の二つの恩恵の持ち主。(孤児院の皆知ってる。)


ラル(14)→茶色髪にオリーブ色の瞳のスレンダーな体型。

現在孤児院の一番お姉さん。来年孤児院を卒業予定。面倒見がいい。


リンダ(9)→淡い金の髪に青に緑を足した綺麗な色彩の美少女。

リュートの双子の姉。弟と違い何も出来ないコンプレックスを抱えているけど弟のリュートが何より大事。自分探し中。

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