女子会
夕飯を食べ終わるとラルにリンダと共に連れられラルの私室に入る。
現在部屋の数に余裕があるみたいで一人部屋なのと喜んでた。
あれ?なんで私ファインと同じ部屋なんだろ?まぁいっか。急ぎだったし。
「メルディちゃん!メルって呼んでいい?」
「うん!いいよ!私もラルって呼んでいい?」
「大歓迎だよ!ねぇねぇ、今いくつなの?うち今年で14なのリンダは9歳だよ、ね!リンダ!」
「う、うん!」
思ったより年上だった。
部屋に入るなり質問ラッシュが始まる。薄い座布団のような場所に座り、ラルはベッドに座って輪になってお喋りをする。
やはり長く住んでいる部屋だから物は少ないが個性がでてて可愛い小物や手芸道具が置いてある。
「私はたぶん6歳、ちょっと記憶があやふやだけど」
「あやふや?」
「うん」
「ふーん、でも多少なら年齢の差異なんて誰も解らないから大丈夫だよ!シスターもシスターの歳になると、どうでも良くなるって言ってたし!」
…それって歳きいちゃったやつかな?
「ねぇねぇ、メルは将来何したいとか決まってる?」
私はうーんと手を顎に当てて考える。
乙女ゲーの女王フラグ回避とサブの死亡回避と祖国滅亡回避かな~やりたいことだけど、でもそういう意味じゃないよね?
あっ、そういえば寝てる時に乙女ゲーのこと考えてたよね。何だっけな半ば夢見てて忘れ…。あっ思い出した!
「冒険者になりたい!」
「ぼうけんしゃ?」
リンダは首を傾げて聞き返すがラルはビックリしてた。
「冒険者って遺跡とか危ない魔物退治とか?!危ないよ!メルって可愛い見た目なのに意外なことしたいのね!」
「危ないの?」
リンダが私に質問してくる。
「ううん、危ないことしないよ?強くなってね、モンスターでお金稼ぎながら別の国とか旅したいの。」
「答えになってないし、十分に危ないよ。メルって本当意外な性格してるのね。っていうかメルって戦えるの?それってファイン知ってる?」
最もな疑問だけど全て否だ。私は首を横に振ってラルとリンダから視線をそらした。
「お兄さまは知らないし、私戦ったこと一度も無いの。」
「じゃあ現実的じゃないじゃん。ビックリした。でも強くなる事はうちも賛成かな…。メルとリンダ可愛いから誘拐されそうだし、心配だし…シスターに習った方がいいと思うよ。」
え?シスター戦える人なんだ…意外。
だけど驚いてるのが私だけみたい?皆知って常識なんだ…怒らせないようにしよう。
シスターのたまに笑顔に浮かべる恐怖を思い出して胸に刻む。
「…わたし、戦うのやだよ…。」
リンダは俯いてぽそりと呟くように言う。両手を胸の前でギュッと握り怯えているようだった。
「私もね、正直戦うのも命を奪うのも傷つけるのもやだよ?でもね強くなきゃいけないこともあると思うの。」
「例えば?」
脳筋な思想のメルディに呆れたようにラルが相づちをうつ。
メルディは指を折りながら。
「えーとね、まず心配をかけなくなるでしょ、お兄さまに何かあったら自分で動く事が出来るし、モンスターを倒して素材とお肉が食べれるでしょ。
あと守られるのだけは嫌だし、自分のせいで周りが傷つくのが嫌。あとは強ければなんとかなるでしょ?」
「最後はともかくメルって本当に6歳?」
「6歳だよ(肉体的には)」
ラルが頬杖を呆れたように突っ込むがメルディは笑いながら答える。
リンダはそんな二人を見て感心していた。
「二人とも強いんだね、こわくないの?」
不安そうに首を傾げると柔らかそうな薄い金色の髪がさらりと揺れる。
ラルは肩を竦めて「強くないわよ」と伸ばしてた足を胡座に組み直す。
ラルに続き私も当然だという顔をしながら「怖いよ」とリンダに伝えた。当たり前だ。
そんな私たちの反応にリンダは驚いたような表情をする。さっきまで憂いた表情していたけど、今度は目が落ちそうなほど目を開いて私たちを交互に見ている。パチクリとしてて可愛い。
「わたし、ラルちゃん十分に強いと思うよ?」
「それはリンダにしたらでしょ?ダリルにも何とか勝てるけどさ、きっとすぐに追い越されるわ。アイツ日に日にデカくなってるし。背もいつか追い越されるよ。」
ラルは憮然とした表情で腕を組んで眉を顰める。男女の差は相当な実力が無いと埋めにくい。
「でもまぁ、いいのよ。うちに『強さ』なんて必要ないから。今の働いてる裁縫屋に引き取られる予定だしね。」
「引き取られる?」
義理の親に引き取られるということだろうか、折角仲良くなれそうなのに…。
「あぁ、メルは知らないわよね。シスターの教育方針というか、此処の孤児院のルールなの。
15歳で成人として孤児院から出て行かなきゃならないのは他の孤児院と同じなんだけど、シスターはね、うち達が独り立ちできるようにしてくれるの。
うち、裁縫が昔から出来ていたから、10歳の時シスターが今の場所を紹介してくれてね。そこでお仕事させてもらってるの。
他にもやりたい事が見つかったらすぐに相談しなさいって言ってくれたけど、今の仕事場が合うみたいだし小母さんも小父さんもいい人でそのまま働いて跡継ぎになってくれって頼まれてるのよ。」
「へぇ~ラルは凄いね!あそこにある裁縫道具はお仕事の道具なの?」
「あの裁縫道具はシスターが初めてくれたものと小母さんが譲ってくれたりしたの、うちの宝物だよ!」
年相応にえへへと笑うラルはとても可愛いかった。
「じゃあ、ラル来年には此処からいなくなっちゃうんだね。せっかく仲良くなれそうなのに寂しいな。」
「わたしも寂しい。ラルちゃんはお姉ちゃんみたいなの。」
しょんぼりする私とリンダに困ったように笑いラルは両手でワシャワシャと髪をシャッフルされて私たちは小さな悲鳴をあげた。
「もう!寂しがらないの!うち達は『家族』になれないわ、ここの皆は仲間なの。仲間が発つのはとても嬉しい事で誇らしいことなのよ!」
「でも…。」
ラルは言い聞かせるように私たちに言うがリンダは納得出来なかった。寂しいものは寂しい。
孤児院の子供たちは多分将来の保証がない。
小さい頃に、子供が欲しい人が子供を引き取る他、自分たちで何とかしないといけない。
何時までも孤児院に残ることは出来ないのだ。
「大丈夫よ!うち、この王都から出ることないし!またリンダに会いに来るよ!」
「っ!本当!?」
「当り前よ!ここは実家みたいなものよ、家族ではないけど仲間なんだからいつでも会いに来るわ!メルも新人だけど、もううち達の仲間よ、いつでも職場にも孤児院にも遊びにきなさい。ここはメルの実家にもなるんだからね。」
「…ありがとう」
『家族』ではないけど『仲間』か…。
うん、ここでやっていこう。やっていける気がする!
メルディの一人称→私
ラルの一人称→うち
リンダの一人称→わたし




