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希望は夢でしかないのかな

作者: 夜空光

小説の練習で書いた作品なので、後味の悪さはあるかもしれません。感情移入ができる作品を書きたくて即興で考えたものです。

続編(救済編)は今のところ考えておりませんが、気が向いた時に書くかも知れません。

最後まで読んで頂けたら幸いです。


 そして、わたしはページをめくった。


 祖父に頂いた大切な一冊の本。

 そこには夢と冒険が書かれいて、一枚一枚ページをめくるたび、胸が高鳴り、期待と不安でいっぱいになった。

 

 身体が弱くて外にも行けない病弱なわたしは、大きな館の二階の寝室から窓の外に見える空を眺めながら、物思いにふけっていた。

 庭に植えられたガーデンからわたしのことを気にかけては、綺麗に育った赤や黄色の花を白い布に包んでは花束にして、無表情だった私の部屋までおもむき、ベットに腰を据えていた私のために笑顔で花束を手渡してくれた祖父。


 頻繁にわたしの部屋を訪れてくれる祖父は、最近になって暇つぶしになればと気遣って、童話や小説といった本を持ってくること多く、なにかと話し相手になってくれた。

 いまのわたしにはこの時間が愛おしくて、ずっと続いてほしいと思えるようになっていた。


 今年で70歳を迎える祖父は、いつも紺色のスーツを着込んで、身長が170と高く背筋も伸びてて、わたしには勿体ない自慢のおじいちゃんだった。

 そんな祖父から、最近貰った一冊の本がわたしはとても気に入ってしまい、気がつけば就寝時間ギリギリまで何度も読んでいた。


「そんなに気に入ってもらえると、わしも嬉しいよ。アリス」


 ベットの上で腰を起こして大切に本を抱いていたわたしに、祖父は幸せそうな笑顔で頭を撫でて言った。


「…………だって、ほんとに好きなんだから」


 頭に触れる祖父の大きな手の平の温かさから、わたしは心に響く心臓の音が心地よくて、この時がずっと続いてほしいと本当に思えた。


「アリス、また少し息が荒くなっておるな。すぐに使いを呼んであげよう」

「――――あっ! …………はい。ありがとうございます」

「…………」 


 少し朦朧もうろうとしていた私は、いつの間にか意識を失い、目覚めた時には窓から見える景色も暗く、星が覗いている。


「…………」


 まだ頭に残る祖父の手の温もり。

 胸元まで掛けられた布団から両手をスルリとだすと、わたしはそっと祖父の触れた頭に手を乗せる。

 華奢なわたしの手は長い銀髪の隙間を縫ういうにゆるり絡んだだけで、すると心の熱が冷めるようにジワリ、虚しさが込み上げ――――


「――――ッ!?」


 わたしは自分の瞳から流れる数滴の涙に驚いた。

 訳も分からず流した涙。

 しばらく泣いたこともない。

 涙は感情が高まると流れるものだと、いつかの本で読んだことがあるけれど、この涙をわたしはどうしても止めることが出来なかった。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 気づくと暗闇の中で佇んでいたわたし。

 さっきまでベットの上にいたはずなのに、自由に動かすことの出来なかった足を動かして、ふらつきながらも歩み続けていた。


「暗くてなにも見えないよ。 …………叔父様、助けて……」


 あまり喋ることをしないわたしの声は震えていて、まともに大きく叫べなかった。どこまで行っても終わらない暗い世界。彷徨い続けていたわたしはついに、その場に塞ぎ込んで泣き始めた。


「…………うぁ、帰りたい。帰りたいよ。どこへ向かえばいいの――――」


 それからどのくらいの時間が経ったのだろう。

 空には星もなく、地面までもが真っ黒で、それでもわたしの姿だけはハッキリみえる。色白の手や足も、ピンク色の水玉模様のお気に入りワンピースのパジャマまで。それでも見えないその先が――――。


 一生、この世界に取り残される気がして、不安がわたしの脳裏を過ぎって仕方なかった。今まで、ずっと1人きりだったのに、それが当たり前だったのに、祖父の愛情に触れてからはそれが当たり前となって、今ではこんなにも心細い自分がいて。


 ひんやり冷たい地面にひざまついたわたしは、両手を合わせて一心に祈り叫んでいた。


「神様、お願いします。もし神様がいてくださるのなら、わたしを叔父様の居る場所へ帰してください――――」



――――そして訪れたのは沈黙だけで、わたしの願いは届くことはなかった。


最後まで読んで頂き感謝します。

時間がある時に、また違った作品を考えるかと思いますが、いつになるかわかりませんので、気長に待つことになると思います。


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