4話
残されたのは死にかけだった少年。
――いや、新たなるサンタ。
「急にサンタだって言われても」
しかし少年の目には確かな生きる意志が宿っている。
なぜか?
サンタだからだ。
胸に宿ったサンタソウルは世界のよい子にプレゼントを届けろと叫んでいる。
であればやるべきことは一つ。
「そうか、僕は――サンタだ!!」
サンタは両手を振り上げ空高く飛び上がり叫ぶ。
聖なるその言葉を!!
「ジングルベェェルッ!!」
そして一瞬煌めくと赤い衣に変わっていた。
サンタが仕事着に着替えるのにかかるタイムはわずか0.05秒にすぎない。
ここでじょ――ジングルベルプロセスをもう一度見ておこう。
飛び上がりジングルベルの掛け声と共にサンタソウルが仕事着への着替えを承認する。
するとトナカイから仕事着が転送され換装される。
「サンタ!! 降!! 臨!!」
ジングルベルが鳴り響きながらその右手には大きな白いズタ袋を持ちポーズをとりながら着地する。
同時に背後にクラッカーが鳴り響き、細い紙テープが舞い踊る。
「む!! 向こうによい子の気配がする!! あれは――魔族の国か」
苦い思い出ばかりがある国なのだろう一瞬苦虫をかみつぶしたような顔をするが、すぐさまそれを振り払う。
サンタはたとえどのような場所だろうとよい子がいるなら向かいプレゼントを贈るものだ。
個人的な感情で判断を誤ることはない。
「よし、行こう初仕事だ」
とソリに向かうがそこでふと足を止めた。
サンタの視線の先にはトナカイ。
そしてトナカイは首を振った。
ソリに乗るなとでもいうようだ。
「……なるほど」
サンタは納得したのか踵をかえす。
決してサンタを主と認めていないわけではない。
しかし獅子は子を千尋の谷に突き落とすように才能ある者こそを厳しい状況を経験させる。
必ず乗り越えることができると信じて。
だからサンタはソリに背を向ける。
まずは初仕事は己の身一つで超えるために。
「待っているんだよい子よ、今プレゼントを届けに行く!!」
そしてサンタは身をかがめ――地を音速を超えて疾駆する!!
一時間後にお願いします。




