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最終話

 神をたおしたあと、しばらくして幸せが『ある』ようにされていた帝都の人間も元に戻り。

 『あった』天使たちも消え去ったあと、一つのセレモニーが開かれている。

 魔族と人間との和平交渉がまとまり、同時に一つの祝い事――魔王と次皇帝の婚約発表だ。


「ふふ、幸せそうですね、二人とも」


 緑の乙女――ミスティが穏やかに微笑みながら、サンタ――三枝高城に語り掛ける。

 その後様々な人間の尽力により最も重症だったミスティは命を取り留めた。

 二人の視線の先には喜びに満ち溢れた次皇帝と、顔を真っ赤にしてでもいやそうではない魔王が見える。


「ええ、平和をプレゼント出来てよかった」


 ゼニゲバは本当に心を入れ替えて国のために今でも東奔西走している。

 汚職で手に入れた金も利子をつけて真面目に返している。

 一部の部隊がいまだに「サンタ万歳!!」と言っているが。


「もう(どうでも)良い」


 という魔王のセリフがすべてだろう。

 高城は隣に佇むミスティとつないだ手に微かに力を込めた。

 それに気付いたミスティも指をしっかりと絡める。


「よくなるといいですね」


「ふふ、よくするんですよ、高城」


 互いに頬に朱をさしたようにかすかに赤くなる。

 いまだに呼び捨てにするのとされる方が慣れていないようだ。


「でも、僕は――」


 その言葉の先をミスティは唇でふさぐ。

 たっぷり時間をかけて離して。


「連れ去るんでしょ? サンタはわるい子を」


 悪戯っぽい笑みとウィンクを合わせるミスティ(わるい子)

 それに気付いてお手上げとでもいうように空を仰ぎ。


「ほーっほっほっほ!! そうだともわるい子(誰よりも大切な人)よ、どこまでもどこまでも連れて行こう、いい子(もっと大切な人)になっても」


 少年は快活に笑う。

 生きる目的をサンタにもらい。

 サンタとして手に入れたから。


 サンタはわるい子を抱きあげる。

 何よりも大切な者として。


「ええ、どこまでもどこまでもいきましょう」


 乙女は柔らかに笑う。

 わるい子として連れ去られるから。

 いい子となっても手を取ってくれるから。


 わるい子はサンタの首に手を回す。

 決して離れたくない者として。




 両者は笑顔を交わして旅だった。

 サンタを必要とする世界を渡り歩く。

 長く、永く、しかし明るい旅として。

ありがとうございました。

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