2話
時間は少しさかのぼる。
雪が降り積もる森。
深夜に近いその時間、耳が痛くなるほどの静寂が満ちている。
不意にどこからともなく音楽が聞こえる。
ジングルベルだ。
その音楽と共に八頭のトナカイに引かれたソリに乗って赤い服を着た恰幅のいい老人が現れる。
「Hooo, HoHoo、サンタがプレゼントを持ってきたよー」
しかし周りには誰もおらず闇に吸われるようにして陽気な声がむなしく響いた。
だがサンタは少しも落ち込んでいる様子はない。
なぜならサンタは相手を見つけ出して必ずプレゼントを贈る存在だ。
たとえ草の根かき分けてでもプレゼントを渡すだろう。
「HoooHoHo!! あっちに良い子の気配がするぞぉ、プレゼントを渡しに行こう」
さて読者諸兄は疑問に思ったことはないだろうか?
たった一人のサンタがどうやって一晩で世界中の子供にプレゼントを渡しているか?
その答えは単純である。
「さぁ、よい子のみんなぁ、サンタが行くぞぉ」
言い切ってトナカイに鞭を入れた瞬間――
ソリは音を置き去りにした。
そう移動速度が早ければたった一人で世界中の子供にプレゼントを渡すことは可能なのだ。
サンタの追跡を行っている機関の発表によると計測したその速度はマッハ22を超えている。
「HoooHoHo!!」
宇宙船の大気圏突入速度を大幅に超えるその速度は断熱圧縮を引き起こし、まずはトナカイが白熱化する。
その後に音の壁を貫いた轟音が響く。
しかしそれはソリの遥かかなた後方。
そのソニックブームは出発した森の一角を跡形もなく破壊するには十分すぎるほどのエネルギーを持っている。
が、ソリとトナカイが下りただけのかすかなあとしか残っていない。
なぜか?
賢明なる読者諸兄に改めて言うのも烏滸がましいがあえて記す。
サンタだからだ。
サンタは寝ているよい子の枕元にそっとプレゼントを置き、気付かれることなくその場を後にする。
ならばソニックブームのエネルギーをそっと始末することなど朝飯前にもならない。
(物理的に)ジングルベルの音を引き連れた(断熱圧縮により)まばゆく輝くトナカイとサンタは夜空に上っていく。
では1時間後にまた




