19話
その様子を視界の端に映しながら、ドラゴンのブレスをよける。
風が舞うように死のブレスを気負いなくくぐる。
「うーん、高城さんがこっち来るまでにドラゴンは何とかしたいなぁ」
そこで何事か気づく。
「ああ、そうか、生命の樹は世界だからいけるかも」
と言って空へと跳び上がる。
軽やかな蝶のようだ。
好機とみてドラゴンや魔法使いは一斉射撃する。
それに対してミスティは木槍――生命の樹の穂先を向けて。
「真名ミスティルテインとして命ず、開け!! 生命の樹よ」
生命の樹――すなわち世界が開いた。
狙った相手は生命の樹の向こう側にいるため、世界をまたがなければ届かない。
そのことに驚愕するがすぐに気づく――自然物では傷つかないので結局はこっちの勝ちだと。
「じゃあ、さよなら十のエンシェントドラゴンによろしくね」
は?
という表情を全員がいまだに空を舞っている緑の乙女に向ける。
跳んだら、落ちるごくごく当たり前の話だ。
もし上空から大きな器が覆いかぶさってきたらどうなるか?
包まれてしまう。
これもまた当たり前の話だろう。
「う、うわぁぁ!!」
そして地面にいた兵士は十頭の普通のドラゴンと共に生命の樹へと飲み込まれた。
「開けたら閉める、うんうん後始末はしっかりとね」
満足げにうなずきながら生命の樹を持ち運びやすい大きさにする。
「ほぉっほっほっほ、終わったようだねぇ」
「うん、しばらくしたら出すから大丈夫大丈夫」
すると地平線の向こうに天から地へ光の柱が伸びる。
「あれは? 大神殿もある帝国首都の方向!?」
「そろそろ、最後、かな?」
するとミスティはどこかはにかむように両手を高城に差し伸べる。
その様子に苦笑を浮かべて。
「ふふ、僕のわるい子は味をしめてしまったのかな?」
「ええ、私わるい子ですからたくさんたくさんわがまま言いますよ」
「仰せのままに」
そう言いながら嬉しそうに抱き上げる。
少年は自由にトナカイを呼んで付き従ってくれるのをどこかで理解している。
しかし、わるい子を抱き上げて連れ去る特権を手放すつもりもないのだ。
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