17話
そして場面はいちばん最初に戻る。
記憶力が豊かなる読者諸兄は疑問に思ったのではないだろうか?
エルフの王国編がないと。
水戸黄門を浮かべていただきたい。
あれの印籠が槍に変わっただけのシーンである。
樹を奉る種族の前に世界樹と同一視される生命の樹を持った存在が現れたら、それはもうえらいことになってしまう。
もちろん「ええいそのような方がこんな場所にいる筈がない」とやられるでしょうが。
「わるい子はここがぁ!!」
「ひぃぃ!!」
サンタには勝てなかったよ。
というわけで人間連合に協力していたエルフの王国は魔族との戦争には消極的和平を結ぶことになりました。
さて話はアイスヴァインのジャベリンをしのいだところから場面は始まる。
「メリィィィッ――――クリスマス!! 悪い子はいねぇがぁ!!」
そこでサンタは袋から炭(モース硬度10)を取り出しわるい子であるアイスヴァインにプレゼントする。
が、甲高い音がしてへし折られる。
「ん?」
「高城さん!! その天使は天然物では傷つかない加護を持っています、多分ほかの兵士さんも」
その様子を見ていたミスティは木槍でドラゴンの一頭を相手しながら叫ぶ。
ミスティが手にするその槍は極小化された生命の樹、つまり世界一個分といってもいい代物だ。
それで倒せないどころか傷も入れることもできないのは異常だ。
「この世界の神様が介入してます、よっぽど魔族との戦争をしたいみたいです」
高城の名を聞いてアイスヴァインは顔に似合わないとても汚らしい笑みを浮かべる。
きれいなメッキの地金はどうやらくず鉄だったようだ。
「どこかで見た顔だと思ったら、敵味方合わせて数万人を殺した勇者様じゃないか」
サンタは無表情でその言葉を受けている。
言い訳はしない。
とでもいうように。
「えぇ!! 何とか言ったらどうだよ殺戮者!! っとぉ!!」
アイスヴァインは木槍をはじきながら距離をとる。
受けた月の光を持った槍は粉々に砕けている。
「怖い怖い、そこの殺戮者のおかげで不死殺しになったみたいだが、その恩か? それとも――」
「その口を閉じなさい!!」
ただ突く、それだけで最上級の悪魔――いや魔神を葬り去ることができる生命の樹はアイスヴァインの加護を貫くことができない。
「!! なんだその槍!? 加護がなかったらすりつぶされるかと思ったぞ」
そこで顔を引き締めて。
「その槍、神へと献上する、よこせぇ!!」
ミスティに一人の天使がとびかかり――
「メリィィィクリスマス!!」
一時間後にお願いします。