14話
そこは煉獄のような景色であった。
遠くには溶岩の川が流れ、空は雷雲に覆われている。
そして何百という数のドラゴンだ。
そう一頭で一軍団を容易く撃破するドラゴンが、だ。
一つの大陸が丸ごと焼き払うことすらできるそんな兵力だ。
「ときは至れり!!」
一際大きな赤いドラゴンが咆哮する。
なんということだ神にすら匹敵するエンシェントドラゴンだ。
それに呼応するように多数のドラゴンが咆哮する。
「ついに穏健派のメタリックドラゴンは全て彼岸の檻に追いやった!! これより地上への侵攻を行い、魔族人間どちらも食い滅ぼそうぞ!!」
「オォォォォ!!」
幾多もの咆哮が重なり地を割らんばかり――いや咆哮のみで岩が砕け始めている。
その咆哮が収まるのをまちエンシェントドラゴンが宣言する。
「セフィロト、“赤きゲブラー”トリガラが命じる、存分に食らい腹を満たせ!!」
「トリガラ万歳!! トリガラ万歳!!」
口々にそう叫びながら空へと舞い上がるドラゴン。
災厄がついに解き放たれ――
「メリィィィ!! クリスマス!!」
(断熱圧縮の超高温によって発生したプラズマによる)光をまとったサンタがプレゼントを持ってやってきた。
(その余波に巻き込まれた)多くのドラゴンが(叩き落されることで)地に下りる。
「何奴!!」
「サンタだ!! プレゼントを持ってきたよぉ。」
トリガラは息を吸い込みブレスを吐きかける。
「いらぬわ、下等種!!」
天を焼き尽くすそのブレスは回避不能の攻撃だ。
「ハッピーホリディ!!」
が、ブレスが広がりきる前にたどり着けば話は別だ。
急加速を行うことでサンタはトリガラの前にたどり着く。
エンシェントドラゴン、その名に恥じない巨体と威圧感を持っている。
だがサンタは相手が何であろうとわるい子なら炭をプレゼントするか連れ去るものだ。
「プレゼントだ、わるい子」
(刃がついた)棒状の炭(素の塊)をトリガラにプレゼントする。
「足りんぞ下等種!!」
足りない。
足りないのだエンシェントドラゴンはそれこそ山のように巨大な存在サンタでは小さすぎるのだ。
距離をとりブレスを吐くためにトリガラを空を飛ぼうとして。
「ジィッングル!! ベェェェル!!」
そう叫び巨大化した。
なぜか!?
博覧強記なる読者諸兄ならばもうお気づきだろう。
日本の特撮物の中にとても有名なサンタがいるのだ。
フォッフォッフォッと笑い、超高速で移動できる。
まれにいるサンタのように青みがかっている。
そして何より宇宙忍者と言われている。
以上のことからかの存在サンタはなのだ。
「なっ!! 化け物め!!」
「フォッフォッフォッ、サーンター」
そう言いながら炭をプレゼントする。
さしものトリガラもたじろぐ。
「くっ!! あとすこしのところで」
「そこまでです、トリガラ」
そこで凛とした言葉が響く。
その声に驚愕したトリガラは周りを見渡し、見つけた。
「“金のティファレト”ー!!」
視線の先には金の鱗を持つエンシェントドラゴンがいる。
殺意のこもったその視線をティファレトは涼やかに流す。
「ええ、“金のティファレト”ダシガラです」
一時間後にお願いします。