13話
何かが落下した轟音が響く。
そしてそれにはこんな声がついている。
「ミスティ、君やっぱり脳筋だろ!! 上る方だけ考えて下りるの考えないとか!!」
それはミスティをお姫様抱っこした高城だ。
顔では抗議の声を出しているが、壊れ物を扱うように丁寧極まりない。
「ち、違います!! 不死者に対して物理的に体を破壊するだけで満足しそうな高城さんを追いかけただけです」
どこか言い訳じみた口調でミスティは返す。
その腕はしっかりと高城の首に回されており信頼しきっているようだ。
「ふぅ、でも助かったよミスティ」
「こちらこそ助かりました高城さん」
しかしすぐに互いに感謝して口論は終わる。
そこで高城は気づいた。
「あれ? トナカイが居ない――そう、もう少しってことか」
「行くのですか? 高城さん」
抱かれたままミスティは小鳥のように首を傾げる。
それにはっきりうなずいて肯定を返す。
「うん、魔族の国はこれできっと何とかなる、あとは人間側の国を何とかする」
「そう、ですか」
乙女は悲しげにうなだれる。
少年は困ったように微笑みを浮かべ。
「だから、離してミスティ、じゃないとわるい子になるよ」
どこか脅かすように少年は語り掛ける。
未練を断つように。
が、乙女のそれへの答えは首に回した腕に力を籠めることだ。
「わるい子で良いです、だから連れ去ってください」
「ミスティ、たの――えっ!?」
乙女は首に回した手を少年の頬に添えて口づけを行う。
たっぷり時間をかけた後で少年の唇から自身の唇を離した。
その顔には悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。
「こんなことをしちゃったりたくさんたくさんわがままを言うわるい子です、だから――っひゃ!!」
乞うような響きを持ったその言葉に少年は乙女の唇を奪い返す。
「これが僕の答えだよ」
「もぅ!! 高城さんはずるいです!!」
言葉とは裏腹に笑みを浮かべて少年の胸を叩く。
少年は薄い笑みを浮かべて。
「うん、じゃあ連れて行くよ、ミスティ」
「ええ、連れ去ってください高城さん」
そしてサンタはわるい子を空へと連れ去った。
一時間後にお願いします。