無自覚なる女の戦いの勃発
皆様こんにちは、島北 悠凪です。
最近は暑くなってきましたね。
季節の変わり目で、体調を崩しやすくなってますので気を付けたいですね。
それでは、第4話「無自覚なる女の戦いの勃発」、最後まで楽しく読んでいただければと思います~!
……これは悪夢か何かか……?
「善宗くんっ?どうしたの?早く帰ろうよ~☆」
お、俺は天馬先輩と帰るつもりだったのに……なんてことだ……。
「あら、あなたは……転校生の……」
「富士凛華ですっ!宜しくお願いします!あっ、善宗くんとは仲良くさせていただいてま~す☆」
むぎゅっっ!!
「なぁっ……!?」
だ、抱き着かないでくれ……!いきなりその馬鹿でかいおっぱいを押し付けられたら……顔が……歪んでしまう……!
「あらあら、私も、古賀君とは仲良くさせていただいているんですよ」
「「えぇっ!?」」
ど、どういうことだ!?天馬先輩がいきなり俺の腕を掴んできたぞ!?
凛華さんも素っ頓狂な声をあげて驚いた表情を見せる。
「へ、へぇ……そ、そうなんですかぁ……」
おいおいおい……なんなんだこれは……!?
「これから、古賀君は私と一緒に帰るつもりだったのですが……」
「そうなの、善宗くん!?」
あれ!?俺、もう天馬先輩に一緒に帰る約束取りつけてたっけ!?
「あ、ああ、そうだったんだよ」
これは乗っておくっきゃないよな……!
「ぶーー……」
凛華さんは頬をぷくーっと膨らませてこっちを見つめてくる。
「……じゃあ、私も一緒に帰る!!」
「……古賀君が良いのでしたら構いませんが……」
「善宗くんっ!一緒に帰ってもいいよね!?」
う、う~ん……せっかく天馬先輩と一緒に帰れるチャンスだったんだが……でも、凛華さんもわざわざこんな夕暮れ時まで待っててくれたんだし……無下にはできないよな……。
「ま、まあ、大丈夫だよ……」
「本当!やったぁ!!」
むぎゅううううううううううっっ!!
だからいきなり抱き着かないでくれ!!っていうか、天馬先輩の顔がなんだか引き攣っているように見えるんですが……!?
「では、帰りましょうか」
「は、はい」
天馬先輩は足早にスタスタと校門に向かって歩き始めた。……もしかして天馬先輩、なんか少し怒ってる……?
そりゃそうだ、直接絡んだことのない女の子がいきなり後輩の男に抱き着いたり、イチャイチャしてるような光景を見せられたら普段大人しい人でも少なからずイライラするものだろう。
「て、天馬先輩!」
「……どうしましたか?」
「あ、あの……なんか機嫌悪くなってません……?」
「……いえ、そんなことはありませんよ?」
うーん……妙に不気味な笑みが怖い……。
「善宗くんっ?早く私たちも行こうよ~」
「あ、うん……」
……くっ!!なんてこった!!凛華さんタイミングが悪すぎだ!!せっかく二人で一緒に帰るつもりだったのに……無念だ……。
俺はしょうがなくべたべたくっついたいる凛華さんを静かに振りほどいてそのまま天馬先輩の後ろを足早について行った。
天馬先輩は、俺や凛華さんとは違う路線の電車に途中で乗り換えるので、途中の駅までは一緒なのだが……。気まずい……。うーん……。
「ふふふ~☆」
凛華さんはいつの間にかつけてる眼鏡姿で俺の横でずーっとくっついているし……勘弁してほしいなあ。
☆☆☆☆☆
普段乗る電車よりもだいぶ遅い時刻、帰宅ラッシュに突入しかけの乗車率の電車の中で、俺と凛華さんと天馬先輩が横並びになって、揺れる車内で静かに立ち尽くしている。
「…………」
天馬先輩は静かに、こちらを見向きもせずに吊革に捕まって静かに電車に揺られている。
「い、いい加減に離れてくれないかな……?」
「え~?なんで~?」
凛華さんはたわわすぎるおっぱいを押し付けて俺に密着している。そんな密着するほどまでは混雑していない車内でなんでこんな密着してくるんだ!!
キーーーーーーーーーーーーーッッ!!
「うおっ!?」
「きゃ~~~~っ!!」
「きゃっ……!!」
突然、轟音を響かせながら電車が急停車して、天馬先輩が俺にぶつかってきた。
「ただいま、前方の駅で線路内の立ち入りがあったため……」
車掌さんが状況説明のアナウンスを流しているが、俺はそんなどころではなかった。
「だ、大丈夫ですか、天馬先輩……」
「は、はい……」
むにゅん……
天馬先輩のたわわなおっぱいが俺の腕に……や、柔らか……。
「うわ~ん!びっくりしたよ~!!」
むにゅむにゅううっ!!
おいおいおい!!なんでまたくっついてくるんだ!!あと鼻水が出ている顔で制服に泣きつくな!!
「……私も……怖かったです……」
えぇっ!?ちょっ!!なんで天馬先輩も俺の腕に抱き着いてくるんだ!!
顔を赤らめて俺の視線から目線を背けながらもじもじしている天馬先輩……か、可愛い……。
だが、それよりも、美少女二人に抱き着かれているこの状況が、周りの人たちにとってみたら羨望の光景極まりないだろう。サラリーマン姿のおっさんから、他校の高校生か中学生くらいの男まで、羨望の視線を俺に向けていることに気づく。
「お待たせしました。電車の走行を再開いたします。まもなく、九段下、九段下、お出口は……」
「……あら、もう着くのですか……」
電車の運行が再開されると、すぐに天馬先輩は俺の腕から離れて、凛華さんを一瞥すると、ドアの前に移動した。
九段下駅に到着した電車は、開閉音とともにドアが開く。他路線との乗換駅なので、ほかの多くの乗客もこの駅で降りる。
「では、さようなら」
「は、はい、さようなら」
天馬先輩は車内で挨拶をすると、そのまま静かに長い髪を靡かせながら、電車を降りて、そのままホームを直進する。
「……あれ、怒ってたよなあ……」
「そうかなぁ?」
「……ていうか、いつまでくっついているの?」
「え?いいじゃ~ん!」
「凛華さんは周りの視線とか気にならないのか?」
「……気にならない!」
「で、でも俺は気にするんだが……」
「む~~~」
凛華さんは項垂れたような声を発すると、俺の腕から離れて、背が小さくてつり革が届かない彼女は座席端の手すりに手をかけた。
そのまま何かを話すわけでもなく、いつになく静かな凛華さんを不思議に思いながら、電車に揺られる。
☆☆☆☆☆
「……ねえ、善宗くん」
「なんだい?」
今まで静かにしていた凛華さんが突然声を発したので、少し戸惑いながら声を返す。
「昔はさ、周りの視線とか気にしないで、いろいろ楽しく友達と遊んだりってしていた?」
「えっ……それってどういう…………うぐっ!!」
凛華さんの質問は、時間差で俺の頭に反響するように響き渡った。それと同時に、かち割れるかのような強烈な頭の痛みに襲われた。
「……やはり覚えていないのか……」
「……えっ、今、なんて……」
「ううん!なんでもない!っていうか、善宗くん、大丈夫?」
「あ、ああ……」
あまりの頭の痛みに、凛華さんの声はほぼ聞こえなかったが、何かを呟いていたように見えた。いったい……。
「……あっ!次、善宗くんが降りる駅じゃない?」
「あ、本当だ……」
まだ朧げな視線を車内の電光掲示板に向けると、確かに「次は 大島」の表記がでていた。
「家まで帰れる?」
「ああ、大丈夫だ……頭痛は一時的なものだから」
俺は頭を左手で押さえながら、電車が停車するのを待つ。
電車が到着すると、俺は「じゃあ」と一言、凛華さんに残してゆっくりと電車を降りた。
さっき言われた一言は俺の頭に相当根強く残ったみたいだ。今まではこんな長時間、頭がふらふらすることはなかったのに……。
あのタイミングであの質問をしてきた、その意味は一体なんだったのだろうか。俺には過去の記憶の大部分、いや、ほぼ失っていると言っても過言ではない。なのに、過去の友達の話をするなんて……。
……いや、よそう。ここで考えても答えなど分からない。凛華さんのことだ。特に深い意味もなく、昔の話をしようとしたのだろう。
俺は普段よりも遅い足取りで地下駅から地上へ向かう階段を上り、そのまま自宅のマンションに向かって歩を進めた……。
☆☆☆☆☆
「……善宗……」
凛華は車内のクリーム色の天井を見つめてぽつりと呟いた。
「……やはり、忘れちまったんだな……」
第4話「無自覚なる女の戦いの勃発」、読んで下さり有難うございました!
文奈先輩の静かな嫉妬……いいですよね……。
東京都心に住んでいる人は聞いたことあると思います、九段下駅。
ちなみに天馬姉妹の家は東西線沿線だったりします。その為に、文奈先輩は九段下駅で乗り換えたわけですね。
では、ここからは次回予告を。
第5話「千本院の鋭い視線は誰が為」は、美緒ちゃん回です。善宗と美緒ちゃんの語り合う回です。
普段はツンツンして棘のあることばかり言っている美緒ちゃんですが、善宗の為にいつもとは誓う雰囲気で凛華ちゃんという存在を語ります。
次回、第5話は6/17(土)投稿予定です!
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それでは、また次回お会いしましょう~!!