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1、はじめに

〈ぼくらのミッドナイトジュニアスクール〉


1、はじめに


 ふとあの子たちのことを思い出したのは、ひょんな幽霊騒ぎの時だった。柿の実も結ぶ秋深い頃だった。

 怪談といえば、ひんやりとしたい夏だけれども、夏休みの間には会えなかった友だちに対してなら、イベントは延長される。ところがこれは、こっくりさんや七不思議への興味もピークだろう四年生たちにとっては深刻だったらしい。

 その訳とは霊感があると評判だった隣クラスの女子が授業中にひどい耳鳴りを訴えたからだった。ミステリアスこそ女の魅力、と思っていたかはどうかはさておいて、彼女を慕う子たちがまたたく間に校内に幽霊がいると広めた。元々N小学校は何年も前からそういうことに関して妙に噂立っていたので、尚更に信ぴょう性があったのだろう。

 驚き怖がる児童たちをなだめるのに、(かたく)なに幽霊の存在を否定する教員。するとぼくが受け持っていたクラスの子が「メグミ先生は幽霊って信じる?」と聞いてきた。

 当然ながら、ぼくは信じた。耳鳴りを起こさせたその幽霊は、けして悪気があった訳じゃないと断言した。ぼくにはもうこの目で確かめられないけれど、「大丈夫。あいつは悪い奴じゃないよ。今ちょっと注意してるところだったんだよ」と、あの子が教えてくれている気がしたからだ。

 和解をしたのだろう。霊感少女の耳鳴りは二日で収まった。「うるさくしてごめんって聞こえた」と小耳に挟んで、ぼくはうれしかった一方で、ちょっぴり淋しい思いをした。

 もうすぐ、十年。

 実のところ、あの子たちの姿が見えなくなってから、あの日々が特別なものであり過ぎたあまり、あれはぼくがストレスで作り上げた偽りの記憶じゃないかと思う時がある。そのたびにあの子は、腹を立ててか自分の存在をアピールしようと音を立て、ハッとさせられる。

 今頃みんなどうしているのか。どうなったのか。

 気になってしょうがない。

 また今年も、卒業記念日に墓参りをした。「千の風になって」の通り、そこにあの子たちはいない。けれども花束を添えることで、おぼろげになりつつある記憶を少しでも鮮明によみがえらせ、霊妙なつながりを忘れまいとしている。

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