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ジョーカー

作者: 霧後天晴

2020年、地球。沢山のロケットが飛び立った。ロケットは10個、それぞれ、ナンバーが付いている。いろいろな国のロケットが多くの国民を乗せている。

大きな国は一つの国で一つのロケット、小さな国は集まって一つのロケットを動かしていた。大きな国のロケットは一と、二と三のロケット。三つとも核を持っていた。

一のロケットの中で宗教家が隣の大臣に声をかけた。

「地球は核爆発で住めなくなりました。なのに、何故このロケットは核を持っているのですか?」

「貴方の批判は痛いほど分かります。けれど、もし、新たに住む星が小さい星なら、我が国民の為にも他の国への抑止力は必要なのです。それに、核は原発という平和利用もできます。」

 宗教家は黙ってしまった。地球は資源の奪い合いで戦争になったことを知っていたからだ。新しく住む星が資源の多い星とは限らない。

新しく住む星の目星はついていた。銀河系の中にもう一つ太陽のような惑星があり、その周りで地球のような惑星が10個あることを確認していたからだ。

 核を持っていた3つのロケットはそれぞれ1番いい星を選んで着陸宣言をした。弱い国のロケットは残りの星を早い物勝ちで、住む事になった。


二の国の話し

 二の国では、皆が浮かれていた。これから、来る未来が楽しみでしかたない。きつく、苦しいロケット生活も、もう、おさらばだ。

 しかし、その中の一人、ジンドリアという男は沈んでいた。彼は四十代半ば、人生は下り坂だと諦めていた。ロケットの生活が気にいっていたからではない。皆が浮かれているのが、許せなかった。彼は人生の青春をロケットの中で過ごした。娯楽も限られている。体を使う遊びは禁止だった。結婚もしたが、狭いロケットでは、子供は一人しか作ってはいけなかった。「喪失時代の子」そう呼ばれた。年上の地球世代はうらやましいが、年下の人間達も喪失世代を生きていくしかない。つらいのは自分の世代だけではない。それが、慰めだった。

しかし、慰めは星の発見によって、なくなった。元気な30代から下は、新しい星を満喫するだろう。私達はそれを横目で見ながら、老いていくのだ。

「ジンドリア、逆噴射の調整を頼む。」

上官の命令が下った。

「我が国は核をもっているのだから、気をつけないといけないな。」

そう、核を持っている。その核の近くに住まわされた影響で、我が子は、まともに口の聞けない子になった。何故、こんなものがある。宇宙に捨ててしまえばいいものを……。いや、いっそ、ここで爆発した方が……。

「シンドリア、きちんと調整してくれ。噴射の力が弱すぎる。」

「今、噴射出力を最大にしています。」

 俺は、努力した。だが、人生というのは、運で決まる。頭が良くても、健康でも、関係ない。人生は運だ。俺も、このロケットは運がなかった。シンドリアはレバーをほんの少し下げた。


 着陸の衝撃で、二の国のロケットが爆発した。その星は放射能を浴び、住めなくなった。残りは9つの星になった。


四の国の話

 四の国の人々は浮かれ騒ぐのが大好き。今が大好き。昔も未来も考えない。浮かれているうちに人間が増えた。星がきつくなった。そこで、王様は考えた。当分男の子はいらない。生まれてくる男の子を殺してしまえば、人は減る。

 さて、王様には何人もお妃がいる。そのうちの一人が男の子と女の子の双子を産んだ。お后は女の子が一人だけ生まれたと報告した。男の子は影でひっそり育てた。双子は仲良く育った。けれどもやはり男の子だ。成長してくるにつれ、しだいに男らしくなり、周りに分かってしまった。

 王様は自分が決めた事だから、見本を見せないといけない。男の子を群衆の目の前で殺した。双子の女の子はその様子をじっと見ていた。

次の日、双子の女の子は王様の前に進み出て、男の子のような低い声で呟いた。

「どうして僕を殺したんだ。」

 女の子はその場で銃を乱射して、周りのみんなを殺してしまった。そして、最後に女の声で、

「何をしたの?おにいちゃん!」

と、叫んで、自殺した。

 王様が死んで、規律が乱れ、狭い星の中で戦いが起きた。星は、死の星になってしまった。


 百年程過ぎた。2つの核を持つ強い国、一の国と三の国は巨大な文明を築き、大きな都市を造ったが、資源はすぐに足りなくなった。あちこちで戦いが起き始めた。

 弱い国がいくつか集まった星は、まず、資源を造ることからはじめた。大きな都市はできなかったが、大きな農地ができた。そして、少しづつ贅沢に生きようとしていた。

核を持つ強い星は、力の弱い星に言った。

「私達が造ったお金で貴方達の作った食べ物を買いたい。」

 何枚かの紙切れで大量の食べ物を取って行こうとする強い星に弱い星は、怒りを覚えた。だが、相手は核を持っているので何も言えない。弱い国の代表はなんとか、理屈で帰ってもらえないかと考え、おそるおそる言った。

「この紙切れで私達は何が買えますか?貴方達の文明は地球にいた頃より、進んでいるんでしょう?」

「ウム、便利な家電製品はどうだ?飛び出すのはもちろん匂いも……」

「待ってください。私達の星には電気がありません。それに、電気はエネルギーを大量に消費するので、作る気もありません。」

「それならば、これはどうだ?甘くないものも甘く感じるダイエット食。いいにおいのする壁紙。有害物質を除く網戸」

「私達には肥満はいません。それに、空気も汚れていません。この紙切れは私達にはいらないみたいですね。」

「待ってくれ、断るなら、核爆弾を落としてもいいんだぞ」

 2つの強い国は他の弱い星をどんどん支配していった。そして、しまいには、放射能を浴びた星を除いて、全てお金によって支配できる国になった。

「昔の地球のようだ。」

強い国の学者は言った。

「そのうちここも住めなくなるぞ。」

 強い国はしばらく豊かだった。そして、本来豊かだった弱い国は貧しくなった。

 しかし、強い国にも問題があった。他の国への切り札だった核から、放射能が漏れだした。地中に埋めるか、コンクリートで固めるか悩んだ末、核を使う技術が不十分な弱い星を奴隷星にして、そこに置くことに決めた。

 その弱い国は核の扱いが下手だった。核は爆発して星は死の星になった。

 強い国は爆発した星を一番の友好国と表彰し、次の奴隷国を探した。だが、どの星も核をきちんとは扱えなかった。

「まるで、トランプのババ抜きだ。ジョーカーを手に取れば爆発する」

 とうとう、人類の住む星は核を持つ強い星2つになった。強い二つの星は核の扱いに困っていたが、ライバルの星も持っていたので、捨てなかった。そして、ある日、一方の星で操作を誤って、核が爆発した。もう一方の星では、それを見てもう一方の国は核を捨てた。

「ようやくジョーカーを手放すことができた。」


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