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家族になりました(弟ver.)

作者: ひぐれとろ

「家族になりました」無印の弟視点です

姉弟の会話セリフは追加も削除もしていません

あれは僕が5歳の時だ。

片親で一人っ子だった僕に母親と姉ができた。

それまでの僕は、仕事に家事にと忙しく働くとーさんを困らせたくなくて。

あの時は同年代のコよりもだいぶ大人しく聞き分けの良すぎる子供だった。


「は、母に、どんな弱味を、握られたのです、か!」


ねーさんになるコが泣くんぢゃないかという顔でガチガチになっていて、かーさんになるヒトはその様子を面白おかしく笑っていて、とーさんは笑わないように表情を固めている。

笑いを押し込めるために数秒固まっていたとーさんがそれでも笑わないようにと苦い顔をして、面白いという感情を隠さずに笑顔になる。


「違うよ。僕以外の誰かが幸せにした彼女を見るぐらいなら、僕という鎖に繋ぎ止めようと思ったんだ」


とーさんがそう告げたあと、意味のわからないような顔をしながらも自分の母親を庇うように腰辺りに抱き着くねーさんになるヒトが印象的だった。

僕もとーさんの云った意味がイマイチわかってはいなかったけど、確かに!と頷いたことを覚えている。






「ねーさん、ソレとって」


「ハイハイこれねー」


今日はとーさんとかーさんの再婚記念日だ。

結婚記念日、としなかったのは前妻との間に僕が産まれたのだという見えない絆の証なんだって。

ねーさんだけは理解してない顔だったけど、かーさんも前夫を思い出してるような表情をしていた。


そして僕は料理中。

ねーさんは助手だ。

僕よりも二歳年上なだけのねーさんに負けたくなくて、早い段階で家事を手伝っていた。

最初はどうにかして追い越してやる!て思っていたのに、僕が上達する度に自分のように喜んでくれるねーさんを見たくて頑張った。

特に顕著だったのが料理だ。

ねーさんが美味しそうに食べる姿を見るためだけに味付けを微調整して。

頬を赤らめて美味しいと表現する姿は可愛かった。


「ちょっとねーさん、味見しないの!」


隠れているつもりで隠れていない。

口動いてるの見えてるよ!


「やー、やっぱりあんたの料理好きだわ。ウマーイ、腹立つー」


「腹立つ、て…。愛情がこもってるからだよ?」


ねーさんに対しての愛情は十分に込めている。

親二人のための料理なのに、食べてほしいヒトはねーさんただ一人。


「愛情、ねぇ…」


「そう。ねーさんと僕とぢゃ、どういう想いをどれほど込めてるのかが違うんだ」


納得いかない、とデカデカと顔に書いている姿にバレないよう苦笑する。

気付かれない方が良いんだけどね。


「ん、完成!」


「お皿はこれで良いよね?」


待ってましたと大皿を差し出して。

偉いでしょ、と云わんばかりの可愛い表情にありがとう、と応える。

お皿に盛った料理をテーブルに持っていくと後ろからねーさんがついてきた。

いつの間にか追い越した背が縮まることなく逆に離れていって、今では頭一つ分違うのだ。

見上げてくるねーさんを抱き締めたいと思ったのは何度目か。


ちなみに親は二人で出掛けてる。

四捨五入すると50歳になるとーさんが嬉しそうに出掛ける様には苦笑しか出なかった。

かーさんはねーさんと姉妹に間違われるほど若々しくて綺麗だから良いけどね。


「それにしても二人遅いね?予定では帰ってきてるはずなのに」


「どうせ、とーさんが帰りたくない、てごねてるんだと思うけど」


「変わらず仲が良いのもよろしいけどさー、もう少し周りの目を気にしてくれと思うわ」


テーブルに並べられた料理を物欲しそうに見詰めながらラップをかけていく。

ねーさんは出来立てを温かいうちに食べることが幸せだという。

電子レンジを使うと味が変わる、て云うけど僕には違いがわからない。


「折角の出来立てなのになー」


「仕方ないよ。今日ぐらいはとーさんの為に我慢しよう?」


もし僕がとーさんの立場ならゆっくりイチャつかせてくれ!と思うからね。


「あんたの中では父が第一優先だもんね。…ファザコン」


とーさんも大事だけどそれは血の繋がった家族だからだ。

第一優先はねーさんだよ、と心のなかで訂正しておく。






それから親が帰ってくるまでの二時間ほどの間にねーさんにせがまれて軽食を作った。

自分でも難なく美味しいものを作れるのに僕に頼む、ということが重要だ。

胃袋を掴んでいる証拠だからね。

思わずにやけてしまった顔は見られていないと思う。


そしてここからが難関だ。

ねーさんが長風呂に入っている間にぱぱっと作った手作りケーキ。

案の定とーさんにはニヤニヤと意地悪い笑みを向けられたけど無視だ。


「ねーさん、ちょっと良い?」


ドアの前で深呼吸してからコンコン、と軽くノックする。

開いたドアの向こうでは軽く驚いた顔をしながらも部屋へ招き入れる仕草。

腕と太ももを惜しげもなく露出した姿に一瞬躊躇したけど部屋へと足を踏み入れる。


「えっと予定から遅れてこんな時間になったけど…これ、よかったら食べない?」


ローテーブルに置いた箱からミニケーキを取り出すと途端に瞳が輝いた。

でも不思議そうな顔をしてるねーさんに気付かない振りをして座るように促す。

僕は横に座って平常心を保つ自信がなくて、少し迷った末に真向かいに座った。


「今日はとーさんとかーさんの記念日かもしれないけど。でも僕とねーさんが出会った日でもあるから、その…」


「そっか!母と父は再婚記念日を過ごしたから、私たちは家族記念日を今から祝おう、てことだね!」


家族記念日だからというわけではない。

ただなんでも良いから理由をつけてねーさんと一緒に祝いたかっただけだ。


「あ、でも家族記念日だったらやっぱり親も呼んで…、ん?」


いらない気遣いをして立ち上がるねーさんの手首を慌てて掴む。


「今日は二人にしてあげよう?明日、また四人で祝ってさ」


「それならこのケーキも明日まで取っておかなくちゃだよね。…食べたいけど」


名残惜しそうにするぐらいなら二人で食べようよ。

いや、食べさせてあげるからさ。

僕まで立ち上がっちゃうとややこしくなりそうで掴んでいる手首を引く。

思わず力が強くなってしまったのは焦っていたからだ。

ねーさんがすぐ隣に座ったことで石鹸の香りがした。


「え?ちょっと、ダメでしょ?」


「良いから口開けて?あーん」


同じ石鹸を使っているのに動揺してしまった心を隠すように一口分のケーキを差し出す。

おずおずと口を開けてパクついた姿になんとも云えないほど煽られて。


「んー、美味しい!」


頬を赤らめる可愛さに思わず笑ってしまう。


「ほら、あんたも食べなね?私だけだと太っちゃう」


「もちろん食べるよ。はい、あーん」


もう一度手ずから食べてほしくてフォークでクリームだけを取り差し出す。

体型なんて気にしないでよ、て意味だったのだが取りすぎてしまっていたらしく、唇の端に付いたクリームを舌で舐めとる仕草に理性が負けた。


「ん、ぢゃあ僕もいただきます」


何を口にしたのか自分でもわからないほどにねーさんの唇だけに視線を向けて。

驚いてるなぁ、と理解しながら止まらない欲望に身を任せる。

唇を舐めればほんのりと甘く感じたのはクリームのせいか、それとも…。

抵抗からか後ずさろうとしたので逃がさないように後頭部に手を添える。

口を開いてはくれなかったことが今出来る唯一の抵抗みたいだ。


「強情だね?」


「…んっ」


後頭部に添えていた手で耳たぶから鎖骨にかけてをなぞり、なけなしの理性でそれよりも下にいくことを禁じる。

小さく洩れてしまったらしい声に思わず手が双丘に向かってしまったけど、すんでのところでねーさんの腕を掴むことで自分を誤魔化す。


「な、なんで…!」


「ねーさん。確かに、こんな時間に来た僕が悪いかもしれないけど。でもね」


そんな格好をしてるねーさんが悪いんだよ?と責任転嫁。

恥ずかしそうに、それでいて無意識に唇を舐めたねーさんに高揚する。

こういうのも間接キス、ていうのかな?

もう一度ねーさんのそこに触れたくて、でも警戒しているから仕方がなく掴んでいる方の指先にキス。

逃げようとしたのをおさえて、怖がらせたくはないけども我慢できずに舌で触れる。


「ねーさん」


ピクリと肩が動いた。


「ねーさん」


涙目の姿に罪悪感を感じたけども。


「…好きなんだ」


真っ赤な顔で緩く首を振る姿は拒否には見えない。


「じ、冗談」


「なんかぢゃない。…好きなんだ」


「私たち、姉弟だよ?」


「義理のね」


「…家族なんだよ?」


「うん、そうだね」


「だから、えっと…その、だから」


「ねーさん」


わざと恭しく手の甲にキスをする。

慣れていないだろう展開に首まで赤くなってくれるのに嬉しくなる。


「連れ子同士は結婚できるんだよ?」


あ、しまった。

まだ頬は赤いけど眉を寄せてしまった。

失言でした。


「ねーさんのことだから、結婚、ていう言葉を出すのが早い!て思ってるんぢゃないかな」


どうにか今の状況を打破するべく頭をフル回転。

…あまり使いたくないけどこれは最終兵器を投入、かな。


「でも、逆を云えばそれだけ本気なんだ。今は姉弟で家族だけども、少しだけで良いから僕を異性として認識して?」


ねーさんは僕の甘えた声に弱い。

本人は苦手だと思っているらしいけど、この声を聞くと頬を上気させて眼を潤ませる。

気付いたのはずっと昔。

それ以来、ここぞというときに使うようにしているのだ。

武器は最大限使用しなくちゃね?。

思わず、といった風に頷くねーさんに腹黒さを隠して笑う。


「云っておくけど今まで姉としてしか意識してなかったから、すぐに異性として見るとか難しいと思う!」


ねーさんの性格上逃げ道を用意しておくのは計算内だ。

それでも面白くないのは事実。


「もちろんそれは理解してる。…だからさ、ねーさん」


良いことを思い付いたのを隠しもせず笑む。

予感が働いたのか逃げようとする動きを力で押さえ付けて。

離さないとばかりに手首を掴んだまま引き寄せる。


「今のうちに、意識せざるを得ないようにしてあげる」


え?、という声が聞こえたような気がしたけども。

気にせず口付けてこれ幸いと開いていた口の中に舌を入れる。

今度は強い意思で後ろへと逃げようとするのでそのままの力に沿って押し倒す。

バランスを崩して頭を打ち付けると危ないから後頭部を支えてあげるけど、口が離れたことに関しては不満。

まぁ、ねーさん自身で逃げ道を無くしてるからバカだよね。

そのおかげで僕は得しているわけだけど。

出来うる限りで衝撃を受けないように倒して間髪入れずに口を塞ぐ。

逃げ惑う舌を絡めて軽く吸っても無反応。

あんまり好きぢゃないみたいだ。

残念。


「…これはお気に召さない?」


「ぅ、うーん…」


鼻先が触れ合う程度で離れ、そう投げ掛けてみるもやっぱり浮かない返事。

今のこの体勢も一因だと思うから仕様がないかもしれない。


「ぢゃあどんなのが好きか教えて?」


出来るだけ抵抗させないように、甘えた声を出せば顔を真っ赤にして固まってしまう。

その隙にねーさんを起き上がらせて腕の中に閉じ込めるように座らせる。

怖がらせるつもりなんてないけども逃がすつもりもないから許してほしい。


「ねーさん」


深いのが嫌なら軽く。

キスしてるんだとわからせるためにわざとチュ、と音をたてて。

触れるだけの行為に焦れながら今さらだとしても優しく、を心がける。


「やめな、いで…」


反応が無くてこれもダメかと離れたら、弱々しい力で二の腕辺りの服を捕まれた。

眼を潤ませて真っ赤になった顔に理性が飛ばなかったのを誉めてやりたい。

やめちゃいけないという言質を取ったから怖がらせないようにキスを送る。


「音、や、ぁ…」


これ以上続けると我慢できそうもなくて離れようとしたのに、もっと、とすがられて欠片ほどの余裕が霧散する。

ねーさんも余裕がないのか息が乱れていて凄く可愛い。


「ん、わかった」


軽くキスするだけで先には進めず拷問のようだけど。

服を掴んでいた手はいつの間にか腰に回されていた。


お読みいただきありがとうございました



以下、おまけ

本編よりも弟が残念気味…?



朝。

ハッキリいってほとんど眠れなかった。

我慢に我慢を重ねて舌を絡ませるほどにまで深くキスできるようになったけど、あれ以上交わっていたら制御の利かなくなった手がねーさんを蹂躙…ぢゃなくて辱しめ…でもなくて、えーっと、怖がらせていたと思う。

あの時の第一目的は僕を異性として意識させることだから、無理矢理コトを進めるのはダメだからね。

それのおかげで部屋に帰ってきてからが大変だった。

詳しくは云わないよ。


暴走しそうな手を無理矢理ねーさんの肩に置いてキスを止めれば蕩けた涙目で物足りなさそうな表情をされる第一関門。

揺らぎそうな弱っちい理性を奮い立たせて離れれば。


「ぃやっ…もっと、して…?」


なんて別の意味で捉えたくなる言葉を云われる第二関門。


「だーめ。これ以上はちゃんと僕とのことを考えてくれたらね?」


きっとこの台詞を吐いた時には腹ペコの肉食獣のような眼をしていたと思う。

余裕そう?

紙よりも薄っぺらい理性でしたが何か?

ていうか、これ以上があるならばそれはめくるめく大人の世界になるだろう。

不満そうなねーさんをお姫様だっこでベッドに寝かせたら、頬にチュ、とされた第三関門。

そのまま襲わなかった僕は偉いと思う。


そして自室へ逃げるように帰ってきてから時計を見たらいつの間にか日付を跨いでいた。

どれほどキスに夢中になっていたんだ!なんて恥ずかしかったけど、だからこそ我慢の限界だったのかと納得。

あれこれとしてからスッキリしたはずなのにベッドの上で悶々としてたら朝日も昇りきった朝でした、という。

あー、ケーキそのままにしてきちゃったよ、なんて現実逃避。

このままベッドの上でゴロゴロしてると大学に遅刻するから思いきって起き上がる。

寝不足特有の頭の怠さが襲うけど、長年我慢していた欲を一部でも叶えられたからプラスだね。

ねーさんの唇はビックリするほど柔らかかった。

なんて思いながらドアを開けたのがいけなかったんだ。


「っ!…ねーさん、おはよう」


きっと、かーさんに僕を起こしに行くように命じられたのだろうねーさんが目の前に立っていた。

どんな反応を返されるのかと内心ドキドキしていると、プイッとそのまま階段を降りていってしまう。


「早く、支度しなね…」


見間違いでなければ耳が赤くなっていたと思う。

慌ててねーさんを追いかけて、無言のまま肩に手をかけて引き留めると、真っ赤な顔で振り向いた。


「…昨日の今日で、あんたにどんな顔して良いかわかんないっ」


それは弟に向ける表情ではないことは確かで、プラスして嫌悪という感情がないことも確かだった。

思わず、それはもう無意識で顔を近付けてしまったんだけどねーさんは真っ赤な顔のまま逃げることはしなかった。

触れ合うだけぢゃ物足りなくて舌で唇に触れたら、ハッとしたように逃げ出そうとするのでねーさんを壁に押さえ込んで逃げ道を無くす。

足場は階段だから安定というほど幅もない。

口の中に舌をねじ込み満足するまで絡ませて離れれば。


「こんな顔で、リビングに行けない…!」


なんて両手で顔を隠しながら可愛いことを云われた。

でもね、ねーさん。

隠しきれてない頬と耳が美味しそうなぐらい真っ赤に染まってるよ?


部屋へと逃げるように去ったねーさんを見送って。

僕も別の意味ですぐにはリビングに行けなくなったな、と思ったのだった。








ということで、ありがとうございました

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