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パラドックス

 川原は殺人事件の一報が入り、現場へと急行した。すると、そこには女性の無残な姿が…。首を絞められたことによる窒息死。犯人と思われる人物の特定を急ぐ。監視カメラの映像を見ると、見覚えのある男が現場の部屋を訪問している。


「こいつは、…岡田?」

「知ってるのか?」

「あぁ」

 麻里は岡田と一緒だった…。川原は急いで、麻里に連絡をとる。しかし、一向に繋がらない。

「クソッ!」

 川原は拓未興産へとクルマを走らせた。岡田の自宅が判明すると、その場所へむかう。ハンドルを握る手にも、力が入る―。


 岡田は麻里を抱きしめたまま、真実を打ち明けた…。

「彼女から会いたい…ってメールが来たんだ」

「それで、昨日?」

「うん。だけど、『触らないで。あんたのことは好きじゃないのよ。』って」

「そんな…」

「『ただ、私の誘いを断る男なんていなかったから、その気にさせたかっただけ。』と言われて―」

 麻里は岡田にかける言葉も見つからず、ただジッとしていた。

「俺は、ずっと麻里のことが好きだったんだ」

「えっ?」

 麻里は驚いて顔をあげた。すると、岡田は麻里に…キスをした。


「私…、いつも自分のことばかり」

 岡田は屋上の端まで歩くと、麻里の方を振り返って「君が一緒なら、もっと幸せなんだけど…」とつぶやいた。岡田の言葉に、麻里はコクリとうなずいた。


 川原が岡田のマンションへ到着したその時、見上げると人影が! まさか…? エレベーターに駆け込むと、同僚の刑事は岡田の部屋がある5階のボタンを押すが、川原は迷うことなくRボタンを押していた。 


 麻里も岡田の側へ近づこうとしたとき、ホールの扉が開いた。

「やめろっ!」

 川原はふたりの姿を確認すると、大きな声で叫んだ。

「来ないで!」

 麻里の悲痛な叫びに、川原の心は引き裂かれそうだった。

「ダメだ!」

 しかし、岡田は最後に微笑んで、麻里の目の前で…、宙を舞った―。


「イヤーーー!」

 川原は急いで麻里の元へと駆け寄った。麻里は、ショックで泣き崩れている―。


 しばらくすると、麻里は落ち着きを取り戻した。

「ずっと寂しくて…。でも、岡田くんは私と一緒だと幸せだって言ってくれたから―」

「そんな」

 川原は麻里を抱きしめた。

「俺が、しっかりつかまえてなかったから…」



 麻里は冷静になると、自分のやったことを恥ずかしく思うようになっていた。岡田に罪を償うよう導くことも出来ず、自分が満たされないからと、軽率な行動をとってしまったことを。あの日、川原と一緒にいた女性は、ただの後輩だったと聞かされた。お父上を事故で亡くされ、そのことで慰めていただけだと…。麻里は、なお自己嫌悪に陥った。別れの手紙と合鍵を入れて、川原のマンションのポストへ落とした。そして、あの河川敷を歩いていた。溢れだす涙をとめられずに…。


 よく晴れた日曜日。麻里は引越しの朝を迎えていた。仕事も辞め、川原の前から姿を消した―。

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