表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

ブルームーン

「乾杯!」

 今夜は親睦会。親交を深める…という名目の、要するに飲み会だ。居酒屋のお座敷を貸し切って、総勢20人。若手がメーンになっている。

「ドキドキする!」

 敦子は、営業の山下と仲良くなりたくて、チャンスをうかがっている。

「あんまり飲みすぎないでね」

 麻里が釘を刺すが、敦子には聞こえていないようだった…。


「あ、今なら大丈夫かなぁ?」

 敦子はビール瓶を片手に、準備万端といった様子。

「先輩、お願いします!」

 山下とは、ほとんど面識はなかったが、麻里は先輩として、一肌脱ぐことにした。

「山下さん」

「お~、受付嬢のお二人さん」

 …酔ってる。麻里は、不安に感じつつも、

「あ、こちらは…」

「園田敦子です。あ、ビールお注ぎします!」

「お、気が利くね」

「そんな~」

 …敦子は物怖じせず、積極的にアタックしている。


「麻里」

名前を呼ばれ振り返ると、そこには岡田の姿があった。カバンを持って、帰り支度を整えている。

「あ…、岡田くん」

 ふたりはお座敷を離れて、少し静かな場所へ移動した。

「俺、もう帰るけど、麻里はどうする?」

「私も帰りたいところだけど、敦子が…」

 麻里の視線の先には、山下と楽しそうにおしゃべりをしている敦子の姿があった。

「山下さん…。敦子ちゃんの手には負えないと思うよ」

「そうなの?」

「深入りしないほうが賢明だ」

「…わかった。ありがと」

「じゃ、麻里も気をつけて帰れよ」

「うん。お疲れさま」

「お先に…」

 麻里は岡田を見送ると、お座敷に戻って、ふたりの監視を始めるのだった。

「そろそろお開きで~す。このあと、二次会に参加される方は―」


 麻里と敦子は、ふたり揃ってお手洗いへ。パウダールームでメイクを直していると、敦子が鏡越しに話しかけてきた。

「先輩!このあと、山下さんから『ふたりで飲み直さないか』って誘われたんです~!」

 と、嬉しそうにしていた。岡田に忠告されたけど、敦子が本気なら引き止めるのも良くないのかな…と、そんなことを思いながら店を出ると、山下は秘書室の北原さんとタクシーに乗り込み、そのままどこかへ消えてしまった。


「ふたりも二次会行くよね?」

 幹事の斎藤さんに声をかけていただくも、

「あ、すみません。これで失礼します」

 麻里は敦子の腕をひっぱり、その場から立ち去った。ヤケ酒になると大変だからだ。


 麻里と敦子は、酔い覚ましにジュースバーでスムージーを買うと、夜の公園へ。

「あ~あ、なんでこうなるの~?」

 敦子はショックを隠せないでいた。でも、敦子が山下のことを深追いしないでくれて、麻里はホッとしている。公園には噴水があって、夜はライトアップされている。ふたりはスムージーを飲みながら、その噴水を眺めていた。空を見上げると、そこには満月が…。なんだか、ブルーに光って見える。


 …よく見ると、暗がりに男女の人影が。こちらには、気がついていない。あれは………、川原さん―。麻里の表情が曇る。敦子も、暗がりの男女に目をやった。

「川原さん!?」

 そのとき、ふたりは抱き合った…。

「敦子、行こ」

 麻里は無理をして、平静を装っている。

「きっと、なにか事情があったんですよ…」

 敦子が必死にフォローしてくれるが、何を言われても耳に入らない。そのまま無言で駅にむかった。

「先輩?大丈夫ですか?」

「…うん。ごめんね。また、明日」

 敦子を電車に乗せると、麻里はホームのベンチで動けずにいた…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ