表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

ファジー

 翌日、麻里は仕事を終えると、着替えを済ませ会社を出るところだった。すると、エントランスには川原の姿が―。長い足をクロスさせ、ぼんやりとしている。

「川原さん。どなたかと、お約束ですか?」

 麻里が声をかけると、

「これ…、忘れ物」

 川原が手にしていたのは麻里のリップスティックだった。

「あ!すみません。どこかに落としたとばかり…。ありがとうございます」

 麻里は川原から受け取る。

「でも、連絡していただければ、こちらから伺いましたのに。…これだけのために?」

 すると川原は、

「あ、その…、よかったら食事でも…」

 と、言いかけたとき、川原のお腹がグゥ~っと鳴った。麻里はクスッと笑って、

「喜んで」

 と答えたのだった―。


 食事を終え、川原は麻里を駅まで送ると、

「また本部に戻らないといけないんだ」

 と、足早に消えてしまった。


 麻里は自宅に戻ると、川原にメールをすることに。

《ごちそうさまでした。お仕事、がんばってくださいね!麻里》

 川原は麻里からのメールに、顔をほころばせていた…。



「先輩、あれから川原さんからお誘いはないんですか?」

 敦子の言葉に、麻里はドキッとしていた。確かに、あれから1週間以上も連絡がない。

「忙しいんじゃない?」

 麻里は強がってみせるのだった。この、あいまいな関係に、麻里はもどかしい思いをしていた…。


 仕事が終わってロッカールームで着替えをしていると、


ブー ブー ブー


 麻里のスマートフォンが鳴る。

「川原だけど。今日は、ゆっくり食事ができそうなんだ。よかったら…」

「はい!」

 麻里は電話を切ると、自然と笑みがこぼれた。それに気がついた敦子が、

「あ~!川原さんなんでしょ~?」

「えへへ…」

「それじゃ、楽しんで来てくださいね!」

「うん」

 敦子と別れて、麻里は川原との待ち合わせの場所へ急いだ。


 ふたりは川原行き着けの居酒屋さんへ。まずは、ビールで乾杯。ふたりで、いろいろな料理を注文する。

「私、料理は好きなんだけど、ひとりだと…」

 そう言いながら、麻里はサラダを取り分けている。

「あ、でも、カレーライスは好きだから、そのときはたくさん作るんですけどね」

 と付け加えた。すると、川原が、

「それじゃ、今度作ってもらおうかな」

 と優しい笑顔を見せてくれる。麻里はそれだけで幸せな気持ちになっていた。


「えっと…、それじゃ―」

 食事を終え、川原は迷っているようだった。麻里は、

「もう1杯、飲みに行きませんか?」

 強引に誘いかける。

「それなら…」

「じゃ、行きましょう!」

 そして、ふたりはオシャレなbarへ…。


「…すごいね」

 カウンター席は、ゆったりくつろげるソファー席。テーブルは水槽になっている。

「好きな人と、絶対に来たかったんだ~。…あ」

 麻里は自分から告白してしまった。

「えっと、敦子!ほら、受付の後輩なんだけど、あの子がそんなこと言ってたから…」

 川原は、そんな麻里を愛おしい…と思うようになっていた―。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ