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孤独な星 月夜の影  作者: Peco*


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13/15

カオス

 ひとりで過ごす週末。麻里は繁華街の書店を訪れていた。そこは以前、通り魔に襲われた場所のすぐ近く。『もう、怖くない…』そう自分に言い聞かせるが、やっぱり足が震える。


 買ったばかりの雑誌を胸に抱きしめ、雑踏から抜け出し、都会のオアシス・海の見える公園へ立ち寄った。ベンチに腰をかけていると、麻里のスマートフォンが鳴った。…真田からだった。

「あれ?まだ帰ってないの?」

「あ、もう家に着くところ…」

 嘘をついた―。

「そうか。明日、お土産買って帰るからね!」

「…うん。ありがと」

 麻里は電話を切ると、大きなため息をついた。川原とはすれ違いばかりの日々で、いつも寂しい思いをしていた。それなのに、今はこんなに会いたいなんて…。溢れる涙を拭っていると、

「彼女、ひとりなの?」

 見知らぬ男に声をかけられた。麻里は慌てて、その場を立ち去ろうとする。しかし、

「…泣いてるの?俺が、慰めてあげようか?」

 男が麻里の肩に手を伸ばしてきた。そのとき、

「オイ」

 振り返ると、そこには川原の姿があった。男は『チッ』と舌打ちすると、足早に消え去った。


「…どうして?」

 麻里が震える声で尋ねると、

「ひとりじゃ危ないだろ…。送るから―」

 麻里は川原の言葉を遮って「大丈夫」と、言い放つ。しかし、このまま置いて帰る訳にもいかず、

「いいから、クルマに乗れよ」

 川原が、麻里の腕を掴もうとしたそのとき、

「ひとりで来たんだから、ひとりで帰れるわ」

 麻里は強い口調で言い返す。だけど、瞳には涙が溢れている。川原は麻里を抱き寄せると、

「困らせないでくれ…」

 とつぶやいた。麻里は緊張の糸が途切れ、川原の腕の中で、泣きじゃくる。ふたりは導かれるままに、川原のマンションへ―。


 麻里はリビングでサイドボードのグラスの中に鍵を入れてあることに気がついた。それは、麻里が川原に返した、この部屋の合鍵。麻里が結んだ赤いリボンが、そのままの状態になっていた。

「これ、ずっとこのまま…?」

 麻里が振り返ると、

「あぁ」

 川原は麻里を強く抱きしめると、

「誰にも…、渡したことはない」

 とつぶやいた。そのまま、ベッドに倒れ込む―。


「また、…俺に抱かれてもよかったのか?」

 川原の言葉に、

「だって、嫌いになって別れた訳じゃ―」

 麻里は川原の首に腕をまわした―。くちびるが触れあうたびに、心の片隅で凍り付いてた孤独で寂しかった夜の記憶が、波にさらわれて泡のように消えていく。叶わない恋だとわかっていても、今はこのままで…。

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