表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歯車と人外の近未来図  作者: 依馬 亜連
EX章 オマケと幕間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/47

檸檬

拍手お礼小話の、加筆&再掲載です。

(メフィスト視点のため、口が悪いです)


なお時間軸としては、第一章と第二章の間辺りです。


 プランシー社のデカ女や、その子分のウサ公ががばがば飲んでいやがるが、俺の店(レメゲトン)で出している水は一応、手作りだ。

 煮たたせた湯にレモンの絞り汁を加え、冷めたら輪切りにしたレモンを浮かべる。

「真にいいお店は、細部にまで心配りが行き届いているものなんだよ」

という、俺の所有者サマの提案で実行しているわけだが。


 正直、めちゃくちゃ手間がかかる。冷ますのも一苦労なんだよ。

 特に夏場は、まぁ水をバカみてぇに飲む客が多いこと、多いこと。

「てめぇら、もうちょっと有難そうに飲めってんだよ! そんなに喉が乾いてんなら、ドリンクも注文しやがれ!」

 などとは一応、雇われ店長で、かつ奴隷であるビーストが言えた立場じゃあない。

 揉め事起こして、アミィの姉ちゃんにどやされるのもかなわねぇしな。


 というわけで夏のクソ暑い中。客足が途絶えた今を狙って、店を飛び出した。

 予想以上に客が多く、飲み水に使うレモンが切れやがったんだ。

 普段なら屋根を上りスーパーまでの直線距離を行くところなんだが……今日は暑ぃ。大人しく、商店街のアーケードを歩いてやるか。

 前にウサ公から、

「色が黒いから、暑さも平気なんじゃないんですか?」

と訊かれたが、んなわきゃねぇ。黒かろうが白かろうが、暑いもんは暑い。

 むしろアメリカのサンフランシスコ育ちなんで、暑いのは大の苦手だ。

 打たれ弱い都会っ子で、すいませんねぇ!


 そういや、あのデカ女を始めとする保安課のエリート共は、この時分、暑くねぇのか?

 さすがに店で見かけるのは、スーツ姿だけどよ。それでも上着を脱ぎもしねぇで、いっつも涼しい顔してやがったっけ。ケッ。


 なんて考えてたのが悪かったか?

 チッ。いやがるよ、プランシー社の保安課サマが。

 アーケードの隅にいても、がっちりヘルメットまで被った黒い鎧もどき──デカ女曰く、正式名称は「外骨格付き特殊繊維製強化スーツです」らしいけど、長ぇよ!──はよく目立つ。

 ったく、薄気味悪い連中だ。

 俺の身分証明証でもある、「モンペリエの塔」のメダルを振りかざしてイチャモン付けてやってもいいんだが。あいにく今は、俺を待ってるレモンがいる。

 気に食わねぇ連中だが、無視するか。


 と、黒ずくめの近くを通る時、つい気付いちまった。

 その黒ずくめの背筋が妙にピン、と伸びていることに。そういえば、アイツはウチで飯食う時も、いっつも姿勢良かったっけ。親の躾の賜物ってヤツかね?

 アイツは背筋をまっすぐに伸ばしたまま、片手で人間の男の首根っこを掴んでいた。

 男は目を回してるようだ。まぁ、あの電気を食らわされたか、プロレス技をかけられたか、そのどっちかだろう。ご愁傷様ってか。

 そしてアイツの目の前には、ビーストの女がいた。詳しくは分からねぇが、ホッとした顔で頭下げて、アイツに礼を言ってるみてぇだ。


 ふぅん。俺らの役に立つこともあるんだな、お前。

 そう小さく感心するのと同時に、アイツへ向けて片手を上げた。

「よぉ。お勤めごくろーさん」

 ぎくり、と一瞬身を強張らせて、慌ててデカ女はヘルメットのシールドを上げた。

 やや切れ長の黒い瞳は、きょとん、としている。

 正に、鳩が豆鉄砲を喰らった顔じゃねぇか。いい気味だぜ。

「なんで私だって分かったの」

「んなもん、見てりゃ分かるよ。お前ぇ、結構分かりやすいぜ」

「……どういうことですか」

「ウサ公にでも訊いてみろよ。で、そいつ、落としちまっていいのか?」

「あ!」

 驚いた拍子に手を離し、ごつん、と地面に頭をぶつけた男を慌てて拾い上げている。

 その光景をニヤニヤ見ながら、俺はスーパーへの歩みを再開した。


 意外に鈍くせぇな、アイツ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ