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二人の距離

短編→中編→長編ってな感じでやっていきたいなぁ……

仁科悠也には榎本涼花と言う幼馴染がいた。物心つく前からの付き合いなため、ほとんど家族同然の間柄だった。


「涼花ー! 早く起きねぇと遅刻するぞー!」


「あと五分、あと五分で起きるから……」


「お前、そう言って起きた試しないだろ……」


長年の経験からか、悠也はうんざりと言ったように肩を竦め、未だ布団を被っている涼花の布団を引き剥がした。布団の中にいたのは、寝ぼけ眼でも分かる程に端正な顔立ちに、寝癖でボサボサだが脇腹程まである長く黒い髪、同年代の女性と比べたら小柄な体躯の少女・榎本涼花であった。


「あーうー」


「良いからさっさと着替えて学校行くぞ」


「さ、寒くて無理……」


「そりゃお前、12月にもなって半袖で寝てたら寒いだろうな」


普通なら男性が年頃の女性の部屋に無断で入るなどとんでもない事だが、彼らにはこれが普通であり、いつもの習慣であった。


「だってお風呂入った後って暑くってさー」


「その後の事も考えとけよ……。それじゃ、俺は先に外で待っとくから」


「はーい」


涼花がそう返事をしたのを確認してから、悠也は部屋を出た。だが、悠也は幼馴染故に知っていた。涼花がそう言ってしっかり出て来た事が一度もない事を。


「じゃー、学校いこっか」


「髪ボサボサ・ネクタイ曲がってる・シャツはみ出してる! 着ただけかよ……ったく」


悠也はそう言いつつ、彼女の制服の乱れや髪の乱れを綺麗に整えていく。


「んー」


「悠君いつもごめんなさいねぇ」


「もう慣れたよおばさん」


娘が心配なのか、家から出て来た涼花の母親の言葉に、悠也は仕方ないと言った様子でまだ終わっていない部分の乱れを整える。


「よーし、これで完璧生徒会長の出来上がりね!」


「外面だけな」


「外側だけよねぇ」


朝日を受けてきらめく艶やかな黒髪と綺麗に直された制服姿で自信満々に胸を張る彼女に二人は冷たく言い放つ。


「うぐっ……。で、でもほら! 学校ではしっかりしてるし、ね?」


「まぁ……確かに成績は悪くないし、内申も良いんだろうけど……」


「こんなにだらしない奴が生徒会長だって知ったら……ねぇ?」


「大丈夫だもーん。学校じゃ、人気最強! 生徒みんなの憧れ! ついたあだ名が―――姫!!」


ドヤ顔でポーズを決める涼花だったが、やはり二人の反応は冷たいものだった。


「ああ、何も出来ないとことか姫っぽいな」


「見た目だけは母さん譲りだものね♪」


「なんだろう、朝から幼馴染と実母が冷たい」


「冬だからな」


「冬だからね」


二人のその言葉に涼花は膝を折った。


「酷い、酷いわっ! こんないたいけな美少女に――」


「あ、遅刻しそうなんでもう行きますね」


「はい、行ってらっしゃい」


「あ、ちょ! む、無視しないでよぉ!」


悠也に華麗に無視された挙句に置いていかれてしまい、半泣きでその後を追いかける涼花。


「で、今日は早く行かなくて大丈夫なのか? 生徒会長」


「ん? まぁねー。特に行事があるわけでもないし。今は結構暇な時期だよ?」


「へぇー。ま、一般生徒である俺には関係ないけど」


「でも生徒会って楽しいよ? 色んな行事に関われるし、責任も重いけどその分やりがいがあるって言うか」


活き活きとした表情で、生徒会について語り出す涼花。


「涼花って昔っからそう言うの好きだよな。委員長とかも毎回やってたし」


「うん。だってほら……上から物言えるのって楽しいんだよ?」


「だめだこいつ早く何とかしないと」


そう言った涼花の顔は、それだけ見れば10人が10人振り向く程に魅力的な笑顔だったが、言っている事はヤバい人そのものだ。悠也は幼馴染の今後を憂いてため息をついた。


「はぁ……それにしても寒いよねぇ。コートにマフラーに手袋してても寒いんだけど」


「まぁ、冬だからな」


「んー……ニヒ」


「どうした? 気持ち悪い笑い方して」


「気持ち悪いは余計! 悠也、手袋外して?」


涼花は自らの手袋を外し、さらに悠也にも同じ事を要求した。


「嫌だよ。ただでさえ寒いってのに」


「問答無用!」


「あ、おいコラ!」


拒否した悠也だったが、言葉通り問答無用ではめていた手袋を奪われた。


「さて、手つなご?」


「は?」


「だーかーらー、手をつなげば暖かいよね?」


「いや、いいから手袋返せよ」


「……ぽいっ」


悠也の態度に不満を覚えたのか、涼花は持っていた悠也の手袋をあらぬ方向へ投げ飛ばした。更に不幸な事に街路樹の高い所に引っかかってしまい、取れなくなってしまった。


「んなっ!?」


「ごめーん、てがすべったー」


「お前と言う女はいきなり何しやがる!?」


「ニシシシ、手をつなぐしかなくなったよね?」


「くそっ。分かった、分かったよ! つなげば良いんだろつなげば!」


「それでよし」


誰がどう見ても悠也は自棄になっているが、涼花は満足気に差し出された手を握った。


「冷てぇ……」


「う~~ん、暖かい♪」


「どこが!? 普通に手袋してる方が暖かっただろ!」


「いや、手じゃなくてさ。心……かな」


「心?」


普通、薄々でも気づきそうなものだが、悠也は涼花の気持ちに気付く事はなかった。


「ちっ、ここまでしてるのにダメなのかこの鈍感め」


「何か言ったか?」


「あ、ううん。あのさ……悠也は、私の事どう思ってる?」


「何だよいきなり」


「いーから答える!」


「?? えーっと、涼花は……俺の」


「お、俺の?」


色々と期待した涼花だったが、次に悠也の口から出た言葉はその期待をあっさりと打ち砕いた。


「幼馴染だな」


「……はい?」


「だから、涼花は俺にとっては幼馴染。OK?」


「お、おーけー…………って鈍いにも程があるわバカァ――――っっ!!」


「ぐはっ!?」


涼花は空いてる手で思いっきり悠也の顎にアッパーカットを決めた後、泣きながら走って行った。


「な、なんだったんだあいつ…………」


これが、物心つく前から一緒に育った二人の現在の距離である。

どうも、ヨシュア13世でございます。こちらに投稿するのは超久しぶりですねぇ……。

内容はまぁ、練習なんで勘弁してくださいm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが気になります、この短編一つで終わりですか?
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