ある国の、在る狂った国の中の
「この国は狂っている」 その言葉を口にしたのは誰か? しかしそれは其の国を知っている者なら誰もが一度は思い、その事実から目を反らしていた。 争いの絶えない国、血で血を洗う民と屍の上に積み上げられた国の中で、全てが狂っていた。 其の国の民でさえ、国が、己が狂っている事を意識の水底で認めていた。だが、其れが何になろう? 狂った世界で正常にいられるには自身も狂うしかないと、誰もが知っていた。 『正常』こそが【狂気】だと誰もが信じた。 これはある狂った国の狂った民の中で狂った戦争に狂った男の