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タイトル未定2026/01/08 17:01

ここから遠い遠い、

みんながまだ知らない、あるところに、

小さな小さな国がありました。



その国の人たちは、

だれかに優しくしたり、

一生懸命がんばって、よいことをすると、

胸のあたりがぽかぽかと温かくなって、

きらり、とちいさな光が灯るのでした。



それは、だれの目にも見えないけれど、

たしかにそこにある――

「こころのきらきら」でした。



そんな国の、小さな小さな町に、

ララという女の子がいました。



ララは、すこし泣き虫で、

人前に出るのがあまり得意ではない、

おとなしい女の子でした。


でもララは、

だれよりも優しく、きれいな心をもっていました。



花がしおれていれば、そっと水をあげ、

迷子の犬がいれば、

日が暮れるまで、いっしょに飼い主を探してあげました。


風に飛ばされた紙くずを見つけると、

だれが見ていなくても拾って、

ごみばこへ入れました。


だれかが落とした手袋を見つけたときは、

持ち主が困るかもしれないと思って、

汚れないように、

分かりやすい場所へ、そっと置きました。




ララのすることは、

ほとんどだれにも気づかれません。


ほめられることも、

ごほうびをもらえることもありません。


それでもララの胸の奥では、

きらり――

ちいさな光が、たしかに灯っていたのです。




ある日、その町にふしぎな男がやってきました。


その男は、夜空を思わせる深い紺色の帽子をかぶり、

胸には星の形をしたバッチをつけていました。



男は町の広場に立つと、にこにこと笑いながらこう言いました。


「さあさあ!あなたのキラキラ!もっと輝かせてみませんか?」


人々は、きょとんとして男を見ました。


男は大げさな動作で、箱の中から小さな星のかけらを取り出しました。


それは、ガラスのように透きとおっていて、

光を受けると、きらり、とまぶしく輝きました。



「これはね、心のきらきらを誰にでも見えるようにしてくれるものなんです」



そう言って男は近くで見ていた男の子へ星のかけらのペンダントを差し出しました。



男の子は困惑しながらもペンダントを首へ下げると、ぱあっと星のかけらが明るく光ったのです。


「ごらんなさい……!キミの優しさが星を輝かせたのです!」


それを見た人々は大さわぎ。




「わあ!」

「見えた!」

「きれい……!」


男は満足気に頷くと、トランクから大量のペンダントを広げました。


「さぁ、この町をキラキラにしましょう!お代は結構!全ての友人達へ!」




それからというもの、だれかが親切なことをすると、

星のかけらはぴかっと光ります。


すごいことをすると、

もっと大きく、もっと強く光ります。



「すごいね!」

「きれいだね!」


と、声が飛び交いました。


町は、たちまちキラキラでいっぱいになりました。


ララは、少し離れたところから

その様子を見ていました。


(……きれい)



子どもたちは自分のきらきらをみんなに見てもらえて、ほめてもらえて、うれしそうでした。


ララは、自分の胸に手をあてました。


いつものように、

胸の奥は、ぽかぽかと温かい。


でも、その光は町に溢れるような明るい物ではなく、だれにも気付いてもらえません。


ララは、ちいさくつぶやきました。


「……わたしも、みんなみたいにキラキラしてみたいな」


その声は、だれにも聞こえませんでした。





それからです。


みんなの心は

少しずつ変わっていきました。


「どう助けるか」より、

「どれだけ光るか」を

気にするようになったのです。



星のかけらをつけた子どもたちは、

前よりもたくさん走り回り、

前よりも大きな声を出すようになりました。


「見て見て! こんなに光ったよ!」

「ぼくのほうが、もっときらきらだ!」


だれかが転ぶと、

まわりを見回してから、助ける子がいました。


「ねえ、今、見てた?」

「ちゃんと光る?」


星のかけらが強く光ると、

ほっとした顔で手を差しのべます。


でも――

だれも見ていないときは、

そっと目をそらして、通り過ぎてしまいました。


町のすみにあった花だんは、

だんだん水をもらえなくなりました。


だれも見ていないところで星のかけらを光らせても、誰も褒めてくれないから。



人に見せるためのお掃除。

見られてから助ける親切。

あまり光らない優しさは、やらないこと。


ララは、少しだけ悲しくなりました。




道ばたのゴミも、誰も見ていなければ誰も拾いません。

中には褒めて貰う為にゴミを捨てる人もいました。




「だってだれも見てないし」



そんな言葉が、あちこちで聞こえるようになりました。


ララは、それを見ていました。


胸が、きゅっと痛みました。


それでもララは、

前と同じことを続けました。


しおれた花に、水をあげました。

だれもいない道で、紙くずを拾いました。

泣いている自分より小さな子のとなりに、安心させるようにそっと座りました。


星のかけらは――ほとんど光りません。


きら……と、揺れるだけ。


通りすぎる人々は、その光に気付きもしませんでした。

見ていた子どもは、指をさして笑いました。


「ちっちゃ」

「それ、意味あるの?」


そんな声が聞こえても、

ララは何も言いませんでした。





ある日、友達の多い人気者の女の子が、見ていなければ気付かないような、小さく目立たないキラキラを光らせているララを見て言いました。


「あなたの良い事、ちっとも光らないのに……どうしてやってるの?何の得があるの?」


ララは少し考えて、照れながら笑いました。


「誰も見ていなくても、例えキラキラが小さくても。誰かの為に何かできれば……それだけで胸がぽかぽかして、キラキラするの」



――その時、ララの星のかけらが白く美しく瞬きました。

その輝きは人々のような強い光ではありませんでした。


それでも、宝石のようにキラキラして、誰よりも美しく輝いたのです。



女の子は、ララの星のかけらの輝きに目をキラキラさせ、それからララの隣に静かに座りました。



「……ね、お友達になりましょ?私も……そのキラキラ、いつか見れるかな?」


「うん……!きっと……!」


二人はしばらく何も言わずに、いっしょに空を見上げました。




星のかけらは、ぴかぴかとは光りません。


でも、胸の奥では温かい光がしっかりと灯っていました。



* * *



町の人たちも、やがて気付きはじめます。


誰にも見えない光ほど、本当は綺麗なんだって。




道端のごみが、ひとつ、ふたつと掃除され、綺麗になっていました。


胸元の星のかけらは、小さく光るだけ。


それでも、町の空気は元通りに柔らかくなっていったのです。



ララは今日も、控えめに星のかけらをキラキラとさせています。

それでも、ララの顔には笑顔が浮かんでいました。

だって、胸の中に確かにあるキラキラは、誰にも見えないけれど……それは本当の一番星なのだから。


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― 新着の感想 ―
読ませていただきました! 可愛くて優しくて、心があたたまるお話だなぁと思いました。 物語から溢れている優しい空気感がとても心地良くて、読後、とてもほっこりとした気持ちになりました。 素敵なお話を読…
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