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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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03-26 楽に死ねるなんて思わないでね…みたいな?

第26話 楽に死ねるなんて思わないでね…みたいな?



 かなりの大騒ぎだった。いや、みんな唖然としていたから騒ぎとは言わないか?


 レムニアとその近衛たちは『まあ、こんなものか…』みたいな感じだったが、王様たちは唖然呆然である。


 だがいつまでも現実逃避をしてはいられない。

 双子がレムニアにまとわりついて〝きゃいきゃい〟しているし、アルビスはアルビスで双子に、ドラゴンの上でポーズをとらせたりして悦に入っている。

 なかなかカオスだが、そのカオスさがみんなを現実に引き戻した。


「さて、このドラゴン…どんな感じだ?」


 王様と近衛(王様側)が並んでドラゴンを調べはじめた。


「かなり再生がすすんでいますね。やはり竜核(ドラゴンの魔核だけ特別扱い)を誰かが持ち込んだのだと思います」


 迷宮の魔物はゴーレムであるから、本来ならこのドラゴンも塩で出来ていないといけないのだ。いや、確かに最初はそうだった。

 だが時間経過とともにだんだん普通の生き物のように変異が進んでいって、現在は8割ほどが生きたドラゴンである。


 つまり外から持ち込まれた竜核が、この迷宮の魔力を吸い取って再生を始め、その結果ドラゴン、ケツァルコアトルスが復活しかけたということだろう。

 魔核というのは利用価値が高いのだが、ちゃんと処理しないといけないのだ。放置すると復活したりするしね。


ちなみに魔角とは別だよ。迷宮の魔物には魔角がなくて魔核があるのだ。


「となるとこれはアーク帝国から持ちこまれたと考えるべきだな」


「ああー、たぶん?

 まあ、この迷宮で塩が産出するようになりますと、あの帝国はこちら側の国に対する影響力を失います。

 妨害は当然あるかと。

 ただ…」


 騎士たちはそこで黙った。

 タイミング的に動きがはやいのだ。


 アーク帝国が動いたのならまず事実確認から始まって、証拠を残さないように画策してから動き出す。いきなり迷宮に竜核を放り込むなんてのは最後の段階であるはずだ。

 現段階では塩の産出量も定かではないのだ。

 この段階で無茶をするには、国家というのは鈍重な存在にすぎる。


「となると主導したのは塩ギルド。しかしあいつらに竜核は用意できない。となれば…」


 王妃以外に考えられない。

 どちらが主導かわからないが、王妃が動いたのは間違いない。第一王妃ね。


「さすがにこれ以上野放しにはできんか…しかし証拠もないからなあ…何か理由をつけて謹慎…」


『ぐあぁぁぁぁっ』


「何事だ!」


 突然悲鳴が響いた。


「ああ、そう言えばここに悪さしたらしい冒険者を捕まえて来ていたんだった」


「アルちゃん、そういうのは先に言おう?」


 うっかりしてたんだね。


◇・◇・◇・◇


 駆けつけた人々の前にあったのは惨状だった。


「これはなんだ?」


 王様が問いかける。対象は留守番の騎士だ。


「申し訳ありません、我々がドラゴン戦に見入っているうちにこの冒険者たちが逃げ出そうとしまして…その、逃すよりはましかと、つい…」


 留守番騎士の足元にはアルビスが捕まえた冒険者のうち一人が倒れていて、離れたところにもう一人、こちらは投擲された剣に貫かれた冒険者がうつぶせに倒れていた。

 逃げようと走っている時に後ろから剣に貫かれたように見える。


「アルちゃん、この人たち?」


「そうそう、なんかこの迷宮の中に箱に入ったものを置いてくるように依頼を受けたんだって

そう言ってた」


「「うん、言ってた」」


 多分双子はふんわりなんとなく。


 しかしこれで証人がいなくなったと王様たちは眉を顰める。

 証人を殺してしまった騎士は恐縮しきりといった具合であるが、内心はほくそ笑んでいた。


※ ※ ※ ※

【名前】イザク・ロール

【種族】人族

【性別】男

【年齢】32歳

【評価】嫌い 手癖が悪い

【備考】死んだ人とお知り合いだよ わざと逃がしてた 今はお金持ち

※ ※ ※ ※


 しかしお見通しだったりするのだ。


(うーん、これじゃ証拠にはならないよね…それに決定的なところはわからんし…)


 鑑定(精霊の告げ口システム)の限界である。

 精霊だってすべての人間を四六時中監視しているわけではないのだ。

 まあ、当たり前だけど。

 だがこの状況証拠はこいつが冒険者たちの仲間、あるいはその後ろにいるやつの仲間であることは間違いないように思われる。


「うーん、でも僕の拘束ってそんなに簡単に破られたりしないんだけどなあ…

 誰かがわざと壊さない限りは…」


「くっ、このガキ!

 あんな土で作った拘束具がそんなに丈夫なはずはないだろうが!」


 憎々し気にアルビスを睨む騎士だったが、そこにレムニアの鋭い叱責が飛ぶ。

 アルビスは今現在、公式には子爵家の公子で、非公式には伯爵家の公子である。

 一介の騎士風情が無礼を働いていい相手ではない。


 まあ、アルビス自身偉い人に気を使う気もないので、そういう怒り方はどうかとも思うのだけど。


「まあまあ、レーン様、ひょっとしたら何かの拍子ということもあるし、試してみましょうよ」


 そう言うとアルビスは冒険者をそうしたのと同じように塩を使って騎士を拘束する。

 沸き上がった塩の粒子が騎士の両手に絡みつき、それがひも状に変じたかと思うと両手が重なり、そこにさらに塩が降り積もってガッチリした拘束具に変じた。


「なっ、なにをしやがる」


「何って、見ての通り、この拘束具って外から壊さないと壊れないんだよ。

 つまり冒険者たちは誰かが拘束具を壊して逃がしたってことだよね。

 でも、それを壊した人の死体ってないよね。

 何でだと思う?」


 イザクの目は泳いだ。


 周りの者たちの目が集中している。


「まあね、詳しい話は本人に聞こうよね。

 ほら、とっとと生き返れ」


 アルビスはそういうと離れていた方の冒険者を、その手に持っていた杖でトントンとつついた。


 誰もアルビスがいつの間にか杖を持っていたことに気が付かなかったのだ。

 そして杖のその権能はとうに発揮されていたりするのだ。


「がはっ!」


 アルビスが近づくと背中につき立っていた剣がひとりでに浮き上がり、まあ、勿論隠者の手で抜いたのだけど、それと同時に男が咳をして動き出した。


「たっ、たすけ…しぬ…」


 うわーいきかえったー、とか、ぞんびかーとか、大騒ぎになっているが、アルビスはそれを無視して、ケリュケイオンで無理矢理生命維持されている男にヒーリングの魔法を使う。


 天眼で男を透視しながら剣に貫かれた心臓の修復を行う。


(むむっ、でも動き出さない)


 勝手に復帰はしてくれないらしい。でも話はできる。

 無理矢理生命を維持されている状態だ。


「はいはい、もうなおりましたよ(大嘘)、なにがあったのか教えてくださいね」


「そこの、その騎士がいきなり…」


 冒険者の話によるとドラゴンが倒された瞬間、奴隷たちの意識がドラゴン討伐に集中した。

 その時騎士は弟分の拘束具を剣で破壊し、そのまま突き殺した。

 アルビスが助けた方の冒険者の拘束具も破壊され、危ないと思った彼は全力で逃げ出し、その瞬間背中から胸にかけて激痛が走って意識がなくなったのだと話した。


「なるほど確定だな」


 王様が拘束されて動けずにいる騎士を見下ろす。

 ここにいるのは王様のロイヤルガードとレムニアの近衛騎士、あとは奴隷なので彼をかばうものはどこにもいない。

 まあ、そいつが本当の意味での仲間かどうかはわからないが。


 それでも騎士は立派だったのだろう。


「ぐぷっ」


 食いしばった口の隙間から血が流れる。紫色の血が。


「毒です」


 王様たちが慌てて手当てをしようとするが、彼らは忘れている。

 いや、正確にはまだ理解していなかったのだ。


「大丈夫大丈夫」


 アルビスはそういうと杖を掲げて…


 パタリ。


「あっ、いかん、こっちが死んでしまった」


 まだ心臓が復帰していなかったからね。

 杖の効果が途切れると死んでまうのよ。


 慌てて胸に電気ショック。二回ほど電気を流したら心臓が動き出した。

 ちょっと焦げ臭いけど、そこはご愛敬。


 その後毒を飲んだ騎士に駆け寄り、やはりケリュケイオンで蘇生する。

 問題は毒の排除だった。


「うーん、異物を浄化すればいいかな? えっと…【浄化】 うーん、【浄化】【浄化】【浄化】…ん? 【ピュリファイ?】で、あとは【ヒール】」


 毒消しというのはやったことがなかったので最初うまくいかなかったが、イメージをこねくり回して繰り返すうちに『ピュリファイ』という魔法が浮かんでこれを口にしたら何かとつながったような感じがして毒が消えた。

 あとはちょっと面倒くさくなって回復の力をある程度まとめてぶち込んだら【ヒール】という魔法が出た。


 浄化のイメージがもともとあった毒や病原菌を排除する『ピュリファイ』の魔法と統合されて、それが実行されたのだ。

 神殿のかなりの使い手が使えるちょっと高度な魔法だったりする。


 生き返ってしまった騎士は愕然と周囲を見回した。


「ざーんねん、ぼくがいる限り死ねるなんて思わないでね。まあ、死んだら死んだでやり様はある気がするけど?」


 新しい魔法を思いつきそうだった。


 騎士は周囲を見回し、真っ青を通り越して真っ白になってがっくりと頭を垂れた。

 燃え尽きたか?


 とにかく一件落着までもう少しだ。




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