03-24 ドラゴン戦見物
第24話 ドラゴン戦見物
アルビスたちがポテポテ、和気あいあいとやって来たのでその騎士は驚いた。
彼はこの迷宮に派遣されていた一般の騎士で、レムニアたちの側近のように精鋭ではないのだ。
彼のような騎士は二名来ていて、だからドラゴンに突撃せずに入り口で留守番と相成った。これは仕方がない流れだろう。彼らを戦闘に加わらせても足手まといにしかならないのだから。
あと奴隷もここに残されている。元は騎士だが、まあ、威張ることが仕事のぶっちゃけなんちゃって騎士だからこれも仕方ないと思う。
そこにアルビスがやってきたわけだ。しかも弟妹とにこやかに。しかも冒険者風の男二人を引き連れて。というか後者は引きずって。
冒険者風の二人は当然あのおバカな会話をしていた二人である。
彼らはコゴスが追いかけてきているものと思い込み、わき目も降らずに迷宮を全力疾走していた。
だが突然見えない壁に激突し跳ね返されることになる。全力疾走だったのでその衝撃で気を失っていたりした。
もちろん壁はクロノが張ったバリアである。
全速力でブロック塀に頭から突っ込んだようなものである。
アルビスがコゴスを倒した後、クロノと合流したときにもまだ伸びていた。というか結構大怪我だった。
「仕方ないなあ」
アルビスは築城と変成を使って拘束具を作り、二人をガッチリ拘束。そのうえで回復魔法までかけてここまで引きずってきたのだ。
気が付いた後、最初はアルビスたちを脅したり、なだめすかしたりして逃げようとした二人だったが、拘束が強力で、後ろ手に腕を固定したところで上半身を石のような拘束具で固められては逃げようもない。
アルビスが相手にしないと見ると今度はお互いに激しくののしり合いを始めた。
これが実に分かりやすかった。
話を総合すると二人は見知らぬ冒険者風の男に依頼され、この迷宮のボス部屋によくわからない箱を配達に来ただけだという。
だから悪いことはしていないという主張だね。
だけどその直後に迷宮に強力な魔物が発生したのだから何か関係があるに違いない。それにアルビスもこの迷宮の存在を忌々しく思っている人間が枚挙にいとまがないのも知っている。
あんまりうるさいので今度は口を拘束し、動かないので動く気になるまでとりあえず殴ってみたりした。
そしたらいい子になった。
「だからこれでいいのだ」
「「いいのだ」」
子供の教育としてどうなのだろうと思うが、話せばわかるなんてのは何もしない奴の妄言だ。話を聞かずにわめき、暴れるやつに言うことを聞かそうと思えば実力行使しかないのだ。
もちろん今度は回復はしなかった。
というわけで上半身を白い石膏のようなもので固められた男が二人、ボス部屋の前に引っ張られてきたのである。
そしてボス部屋の中では今まさにドラゴンとの戦闘の火ぶたが切って落とされたところだった。
子供三人はワクワクが止まらない感じだったりする。
だが、見張りについていた騎士は妙に挙動不審になった。
ひっくくられてきた男二人を気にしているのが見て取れる。
(あー、そりゃ気になるよね)
一応の理解を示したアルビスだったが、そんなこともあるだろうと流し、今はドラゴンの方に興味を惹かれる。
なので会話もちょっと上の空。
「その二人がここにドラゴンを持ち込んだらしいよ」
随分思い切って端折ったな。
だが事の重大さというのは通じたのだろうか。見張りの騎士は顔色を変えて男たちを睨んだ。
男たちはすっかりあきらめたような感じでおとなしくしている。
(まあ、こっちはこれでいいや)
そしてアルビスは意識をドラゴンに戻す。
他にも奴隷たちがボス部屋の入り口前でドラゴン戦を見物している。
「どうかご無事で、どうかご無事で、どうかご無事で…」
「この探索が功績になって恩赦が出ますように」
「手柄手柄、手柄さえあれば~いいんだ~」
奴隷たちは素直であるらしい。
そしてアルビスたちは知り合いの活躍をワクワクしながら見ているのだった。
◇・◇・◇・◇
そんなわけでアルビスは『この程度は楽勝なんだよね』といった感じで観戦を決め込んでいるわけだ。
それはここに入るときに王様たちがかなり気楽にやっていたからである。アルビスも気分的に物見遊山になってしまったのだ。
だが実際ドラゴン戦をしている当人たちにはそれどころではなかった。
まあ、オリジナルは20mを超えてくるのが当たり前で、しかも様々な能力を持ち、立体的な空間機動を駆使して攻めてくる危険な生き物だ。
危険度(ランクS)なのだ。
いや、小さいから(A)ぐらいか。
つまり国が総力を挙げて立ち向かわねばならないレベルの危険生物なのだ。
下手をすると国の何割かが焼け野原になったり、都市がいくつも瓦礫の山になったりするレベルの魔物、それがドラゴン。だからドラゴン。大迷惑生物である。
幸いなのは生息域というか縄張りが大体決まっていて、そこから出てくる固体がめったにないということだろう。
つまりドラゴン戦なんてめったにないのだ。
わざわざ刺激することもないので人間の側から手を出すことも禁止されている。
それほどやばいのだ。
ただここにいるのは10メートルほど。つまり小物。しかも空戦タイプなのに地の底。そして本物ではなく迷宮魔獣だ。本物のような特殊な能力はもたないと推測される。つまり王様たちに有利。
と、王様たちも思ってました。
でも実際は。
「かたい、硬すぎる」
「剛剣も効かんじゃないか」
みんなが持っている武器は当然魔導武器《d‐oss》だ。それぞれに特徴はあるが、すべて魔法の武器である。
レムニアは得意のレイピアで関節の隙間を狙ったり、目のような急所を狙ったりするが…
「ゴーレムが相手じゃ意味がない!」
目玉も塩の塊だからね。どういう理屈で動いているのかわからんけど。
大剣を使う騎士もいる。
金剛剣の使い手だろう。自分の身長ほどもある巨大な剣をブンブンと振り回してケツァルコアトルスにたたきつける。
だが全身に生えた細かい羽毛がその剣を受け止めるのだ。そしてはじき返すのだ。
王様だって黙っていない。王様の武器は大きめの片手剣だ。幅広でまっすぐな刀身を持っていて、先端が両脇でかぎづめのように尖っている。
一番効いているのは王様の攻撃だろうか。
「圧し斬り!」
王家伝来の重合剣の技なんか出したりして。
これがかなり重たい一撃のようで、これを食らうとさすがのケツァルコアトルスもどきも巨人に殴られたようによろめいている。
霊獣アファナトスから受け継がれるという、惑星の重力を利用する技なのだ。
だがそれでも決定打にはならないでいた。
そしてその傷も時間経過とともに修復されていくのだ。
というか迷宮魔獣というのはここが恐ろしい。
考え方としてはゲームキャラというのが分かりやすいだろうか。存在力があるかぎり滞りなく動き回るし、倒すにはヒットポイントを削り切らないといけない。
だから目がつぶれたり、手がもげたりしても実はそれほど弱っていないということもある。
そしてケツァルコアトルスもどきが変異を始める。
白一色だったその体に色が付き始める。
黄色や緑、赤、そして青、淡い色が全身につき始める。
「これはいったい!」
騎士の一人が声を上げた。
「よくわからんがかなり良くない感じだ。全力で!」
王様がそこまで言いかけたときにケツァルコアトルスもどきの尻尾がたたきつけられた。
すでに体長は10mを超えそうだ。
近衛の騎士やレムニアが即座に動いて尻尾を受け止める。
一人なら負けたかもしれないが間にはいった四人でなら受け止められた。
だがけが人も出てしまった。
「くっ、このままでは!」
誰かがそううめいた時。
「えーい」
「なのー」
小さな影が飛び込んで来た。
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10月アルビス8歳1か月。双子5歳9か月
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