03-22 迷宮の魔物
第22話 迷宮の魔物
「あれは…本当にドラゴンではないか!」
目的の第三層、ボス部屋にたどり着いた王様、領主様連合軍は広いボス部屋でじたばたと動く魔物に驚愕した。
そこにいたのはいるはずのないドラゴンだったからだ。
「でも真っ白だわ、やっぱり迷宮の魔物ね、自然発生…はないわね…」
レムニアが断言する。
この迷宮の魔物は基本『迷宮傀儡魔獣』ばかりだ。目の前のドラゴンも白くて石のようで、迷宮魔獣に間違いはない。
そう、そこにいたのは塩の塊で出来たドラゴンだったのだ。
ではなぜ自然発生ではないと断言できるのか。それは目の前にいるドラゴンが。
「ケツァルコアトルスだな、こんなのが地底で自然に出てくるはずがない…」
という理由。
前にも言ったが迷宮の魔物というのはそのエリアで発生する魔物になるのが基本だ。
だがこの辺りにドラゴンが生息していたという記録はない。特にケツァルコアトルスはあり得ないドラゴンだ。
そして迷宮の魔物は同時に迷宮の性質をそのまま引き継ぐことが知られている。
なのでこの塩迷宮で出る魔物は塩の塊が動き回るタイプの『迷宮魔獣』になるわけだ。
迷宮の魔物というのはこの二つの条件を満たす魔物になる。
そしてさらにドラゴンというのは生息地がほぼ決まっていて、どのドラゴンがどこに住んでいるかというのは割と知られていたりするのだ。
この【ケツァルコアトルス】と呼ばれるドラゴンは別の国に生息する、《《空を生活圏》》にするドラゴンなのだ。
頭は鳥、体は蛇、手足はなく全身に羽毛を持っていて背中に巨大な翼を持っている。大きな鳥の翼だ。
広くケツァルコアトルスという名で知られているかなり有名なドラゴンだ。
となると…
「何者かがドラゴンの魔核をここに持ち込んだということですか」
「ああ、間違いないな」
これが迷宮の例外の一つだ。
例えば年経た迷宮ではアンデット、スケルトンとか、リビングアーマーとかがでることがある。それはその迷宮で死んだ人間が迷宮に取り込まれた結果、迷宮がそれを学習するのでそう言った魔物が作り出せるようになるのだといわれている。
当然無茶をする奴もいたりして、迷宮にほかの魔物の死骸や、魔核を持ち込んだらどうなるか? とか考えた奴もいるのだ。というか当然のように実行した。
その結果、死骸の方はかなりの数を取り込ませないとその魔物が湧くことはなかったのだが、魔核のほうは即効性があって、その魔核を中心にその魔物が再現されることが確認された。
特に上級魔獣の魔核ほどしっかりと再現されることがわかった。
迷宮の魔物は『記憶を基に再現されている』と考えられる所以だ。
なのでほかの魔物の魔角などを迷宮に持ち込むと、迷宮の魔力でその魔物が再現されることになる。
そうするとその魔物がその迷宮で生まれることができるようになるのだ。
「となると、塩ギルド、そう言えばこの飛竜の生息地はアーク帝国だったはず…」
「しかし討伐の話などはきいたことがありませんが」
「いや、あの国も歴史は古い、我が国のように有名ではなくても過去にそういった話があってもおかしくはない。
しかし、困ったな、早急に討伐して魔核を外に出さないとこの迷宮でドラゴンが発生するようになってしまう。
あの大きさならまだ生成途中だろう。
今なら間に合うはずだ」
状況証拠的には塩ギルド、そしてその後ろにド・アーク帝国の思惑が見え隠れするが、直接的な証拠はない。
そして。
「少し危険だがここでやるしかあるまい。ここまで強力な魔物が迷宮の魔物になるのかどうか、記録はないが、エリアス殿の言う通り、迷宮の魔物になってしまわないという保証もない。
そうでなくともあれが完全体になったらそれこそ全軍を差し向けねばならないような事態になる」
「そうだな、すぐに外に使いを出せ、援軍をよんで整い次第攻略だ」
エリアス(王様)が断言する。
つまりこの飛竜は本当の飛竜ではなく、ドラゴンゴーレムだ。
つまりドラゴンの形に形成されつつある迷宮モンスター。
だが他の迷宮魔獣も本物と変わらない力を持っている。
つまり放置すると本物のドラゴン並みに強くなる可能性があるのだ。
いや、疑似生命体であるがゆえにそれ以上に奇怪な能力を持つかもしれない。
彼らは奴隷がかついでいた壺中天から十分な装備を取り出して身につけだした。
メンバーはレムニア、王様。それぞれの護衛の騎士が4人ずつ、ここまではみんなソードマスター級かそれに準ずるレベルである。
ケツァルコアトルスの大きさはまだ6メートルほど、ソードマスタークラスが10人もいれば十分に行けるだろう。
彼らは戦闘態勢を整えて援軍を待った。
◇・◇・◇・◇
そのころアルビスはというと。迷宮の中をズンドコ進んでいたりした。
さて、この迷宮、塩迷宮なのでどこまで行っても塩、塩、塩である。
聖堂までが普通の鉱脈で、そこから先が迷宮になっている。
迷宮は洞窟のような穴が縦横に走る迷路のような構造で、中央に大きな空間があって、そこに下の階層への道があるのだ。
一応ボスもいたみたい。
つまりボス部屋が大きいわけだ。
迷路はかなり複雑で、現在は4階層まで探索が進んでいる。つまり五階層への道、というかボス部屋がまだ見つかっていない。迷路で迷子中。
塩は迷宮の壁を掘削して掘り出している。
この通路、本来なら人が二、三人通れるぐらいの洞窟なのだが、そこを削って塩を掘っているのだ。
洞窟は塩なので基本白なのだが、ごくごく淡い青だとか、緑だとか、桜色だとかに色が付いていて、それがほんのり光って暗闇ということはない。
なかなか奇麗だ。
それは掘り進んでも同じようで、彫られた場所は幅10メートル、高さ4メートルぐらいのトンネルになっているのだけど、それでも明るく光っている。
ここら辺の理屈が全く分からないのだが、掘ったところは時間経過で元に戻ろうとする。
迷宮というのはそういうものらしい。
放っておくとまた細い洞窟になってしまうので、戻る尻からまた削ってトンネルを維持している。そういった坑道が何本かあって、一階層の坑道だけでも、ものすごい量の塩が産出しているのだ。
ただ迷宮というのは魔物の間引きをしないと魔物が際限なく増える性質があり、それが過ぎると魔物があふれてきたりするので、探索は進められているというわけ。
それに出でくる魔物を倒すと素材として岩塩と魔石が取れるので、しかも岩塩が風味付きで、しかも魔物ごとに風味に違いがあって、今ひそかに人気が出ていたりする。
なので高級塩として魔物のドロップアイテムも大事になっている。
アルビスたちは二階層を抜けて、三階層に入った。ここまでほとんど問題なく来ている。
魔物も出てくるが三人の魔法の前ではありんこも同然。
ショットライフル一発で大体かたが付いた。
双子が暴れたがるので順番で戦ったりする余裕まである。
ただ三階層に入ると魔物もそれなりに強くなってきていた。
「えーいなのー」
「ぱーんち」
どこーん、ばこーん。
よく似た兄弟である。
ちなみに今吹っ飛んだのはカエルの魔物。
舌飛ばし攻撃をバリアで防ぎ、アファナトスから教わった空間属性の攻撃、つまりグラビトンパンチとかグラビトンキックとかで魔物をぶっ飛ばしているのだ。
「兄さまはよくわからないけど、もっとシュパッと動いた方がよくないかな?」
つまり動きに無駄が多いということだ。
ポーズとかつけているし。
そんな感じで和気あいあいと進む三人は、魔境での移動とほとんど何も変わるところがない。
暢気なものである。
あるのだが…
「ひいぃぃぃぃぃっ。たすけてーーー」
「兄貴がこんな依頼受けようなんて言うから!」
「馬鹿野郎お前だって賛成したじゃないか」
「だって、迷宮のボス部屋に箱を置いてくるだけで金貨ですよ、普通受けるっしょ」
「ほら見ろ、お前のせいだ」
「えー、そうなんすか?」
「そうだ、お前がみんな悪い、今回の報酬から差っ引くからな」
「ひでーーーーっ」
そんな声が聞こえてきた。
「馬鹿が走ってくる?」
ひどい感想である。的確だけど。
その〝馬鹿〟はちょうど丁字路の出口でたたずんでいたアルビスのたちの前をどたどたと走り抜けていく。
そしてその後ろから〝ウゾゾゾゾゾゾゾッ〟と迫りくる魔物。
「あー、なんか気になること言ってたから、仕方ない。助けるか」
アルビスは魔物の前に飛び出した。
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● ゴーレムは『未完成のもの』という意味だそうで、迷宮が踏み出した不完全な魔獣と考えるといい名前かもしれません。時間経過で…
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10月アルビス8歳1か月。双子5歳9か月
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