03-21 ドラゴンが見たい!
第21話 ドラゴンが見たい!
その知らせがアルビスの元、というかレムニアの元に届いたのは翌朝早くだった。
届けに来たのは、可哀想な護衛騎士である。
というのもこの護衛騎士、昨日一緒にいた騎士である。
しかし、宿泊場所である秘密基地の広さや、拠点への連絡の必要性から、昨日一人で送り返されたのだった。
で、本来なら、他の騎士たちと一緒にレムニアや王様を迎えに来るはずだったのだが、迷宮の方で非常事態が発生し、レムリアたちの居場所を知っているのが、彼だけだったので急遽、呼び戻すために、一人早朝に叩き起こされ、送り出されたのだった。
そしてその内容がドラゴン出現。
「ドラゴン? 見間違いじゃないのか?」
エリアス(イロス王)は思わず漏らしてしまった。
「そうよね、こんなとろにドラゴンなんて出るはずないし~」
はい、レムニア様朝なんでちょっとぼけてます。
というのも無理のないことなのだ。
というのもドラゴンというのはかなりの珍しい魔獣だったりする。レアどころかURぐらい珍しい。
この大陸では数種類が正式に『ドラゴン』と認定されている。
どれもかなり特徴的な魔獣だ。
通常個体で『A』クラス。強い個体だと『S』クラス認定されたりする。
もし討伐できれば英雄である。
ものすごく難しいけどね。
基本的に縄張りというか生息域で暮らしていて、人間とかかわることはあまりないので見かける機会などはないだろう。
まあ、中には、英雄になりたくて、一攫千金に目がくらんでドラゴンの領域に行っちゃうバカもいるけど大概は人間がパックンされて終わりである。
なので当然この辺りにはいなくて、だからみんなの反応が『寝ぼけたんか?』になるのは無理もないことなのだ。
でもそれも一瞬。
イロスもレムニアもあり得ないとは思ってもそれでも対策を立てるために動き出すように自分を律しているのですぐに対処に動き出した。
まずは詳しい話である。
「なるほど、迷宮の異変か、それでそれを見たものがドラゴンといったのだな?」
「どんな姿かわかるか?」
王様と領主様の質問に騎士は答える。
「いえ、直接見たものは命を落としたようです。生き残りは尻尾と、その男の叫びしか聞いてないと…」
となるとやるべきことは。
「まず確認だな」
というわけでみんなで大急ぎで戻ることになった。
まあ、移動手段としてアルビスたちの協力がないと難しいのである。
主にクロノがね。
◇・◇・◇・◇
クジラに乗って迷宮に到着するとすぐにクダチ男爵と騎士隊長が報告に現れた。
結果、迷宮の三階層で、極めて巨大なそして強力な魔物が暴れているということが分かった。
そしてそれが伝承に語られるドラゴンに酷似していた。ということらしい。
ただ小さい。
思っていたより小さいらしい。
ドラゴンというのは10m越えが当たり前の魔獣で、大きいものになると30mに及ぶ存在もいようという生き物なのだ。
しかしこいつは10メートルに届かないらしい。
「まあ、それでも強力な魔物が出たことは間違いないな。リザード系か、あるいは亜竜系か…まあ、その程度ならどうにかなるだろう」
「へい…(ここでスパーンという音)っっ、まっまさか〝ごにょごにょ〟さま、ご自分で行かれるおつもりで?」
解説…騎士さんうっかり陛下とか言いそうになって頭をはたかれました。しかもはたかれたショックで王様が使っていた偽名を忘れました。
ちなみに偽名はエリアスさんだ。
彼はすぐに迷宮を探索するための部隊を編成し、粛々と事態に対応する。
ただし先陣を切るのが王様と領主さまだったりするのだ。
(王様が最初に突入って…バカなのかな?)
アルビスの感想はひどいものだが尤もである。
だがこのアファナシア王国は尚武の気風が強い国なのだ。
何代か前の王様が『我が国において戦場で先陣に立てぬ者が玉座を戴く事は決してない』と宣ったとか何とかで、王様は割と気軽に出撃する。
まあ、全部が全部じゃないよ、気概を見せろという話でね、すべての戦闘でそんなことやっていたら王様なんて何人いても足りないから。まあ、そんなに居られても困るんだけど。
だけどたまたま最前線に出くわした今回は逃げるという選択肢はない。
というわけで嬉々(あれ?)として突撃。
そして当然我らがアルビスも『おーーーーっ』とか言ってついていこうとしたのだけど、止められました。
「はなせー、どらごんみたいー」
「「はなせーーーっ」」
ジタバタジタバタ…
今回は無駄でした。
◇・◇・◇・◇
しかしアルビスに諦めるという選択肢はない。ないったらない。
自分には魔法がある。結構自信がある。ドラゴン相手にぶちかましてみたい。
それに回復魔法も役に立つはずだ。
何よりドラゴンが見たい。
やはりファンタジー好きにとってドラゴンは憧れなのだ。
問題は双子をどうするか。
「まあ、危なくなったら転移でにげればいいや」
連れていくことにしたらしい。
なのでアルビスは暴れた。
思いきり暴れた。
そりゃもう暴れた。
カナリアにはおとなしくしているように命じてから双子と一緒に暴れた。
結果。
「もうしょうがないわね、ここでおとなしくしてなさい」
閉じ込められた。
「ちゃーんす」
計画通りだった。
アルビスに転移魔法があることを他の人は知らないのだ。
であるならば誰も来ない部屋に閉じ込められている状況は都合がいい。
そして行動を開始する。
「カナリア、君には特別な任務を与える」
「はい!」
アルビスはいつになく真剣な面持ちでカナリアに秘密任務を与えたのだった。
◇・◇・◇・◇ 少しあと。
「あら、カナリア、アルビスたちは?」
「はっ、はい、ベアトリス様。アルさまたちは暴れ疲れて三人とも寝てしまいました」
「あらあら、まだまだ子供ね。
それじゃ寝顔でも」
「ちょちょちょちょちょ、ちょっとお待ちください。今やっと眠ったんですよ、たぶん、いえいえ、その、また目を覚ましたりしたら、元の木阿弥といいますか。
苦労が水の泡といいますか…」
「あらあら、大丈夫よ。これでも母親歴は長いのよ。起こしたりしないわ」
カチャリとドアを開けて中をのぞくと、そこには…
なんかもっこりした布団の山が。
「あらあら、ふて寝しちゃったのね、うーん、これは確かにかわいそうかも」
(ほっ)←カナリア。
「でも一目だけ~」
(ひいぃっ)←カナリア。
そして、その瞬間外でバキッという大きい音が。
「なっ、なに!」
「なっ、なんでしょう、大きな音でした。何か…魔物でも…」
「そうね、カナリアはここにいて、子供たちをお願い、私はちょっと見てくるわ」
「はっ、はい、お任せください。大丈夫です、わたくしがいる限りアルさまたちには指一本触れさせません。ちょっとと言わずにいくらでも!」
「ふふふ、そんなに時間はかからないわよ」
そう言うとベアトリスは足早に階下に降りていった。
(アルさま、ひどいですー)
もちろん音はカナリアが適当なものをほおってこの施設の一部を破壊した音だったりする。
きっとアルくんが直してくれるさ。
◇・◇・◇・◇
さて、アルビスはと言えばいったん上空に上がり、迷宮の入り口付近にまでやって来た。
人間というのは周囲は警戒しても自分の頭上を警戒するのは苦手なのだ。
「ふむむ。やっぱり見張りがいっぱいいるな」
迷宮の入り口付近は結構な数の人間がうろついている。
「兄さま、どうしよう」
「兄さま、やっつける?」
アルビスはよいお兄ちゃんを目指しているので教育も忘れない。
「二人ともいいかい。悪い人ならぶっ飛ばしちゃっていいけど、そうでないならいきなりぶっ飛ばしてはいけないよ。
そういう場合は相手がやる気になってからだね」
正しい教育かどうかはちょっと疑問。
だが潜入自体は問題ない。
音もなく降下する。そして隠者の手やディアーネの風の歌であさっての方向でがさがさと音を立てる。その隙に物陰に降り立った。
そして額に意識を集中し、『天眼』を起動させて詳細を探る。
その結果わかったのは迷宮の外には人が集まっているが、坑道の中にはほとんど人がいないということ。
坑道の奥、聖堂のある作業場に二人の騎士が立っていて、それだけである。
彼らは魔法の使える騎士で、万が一坑道が崩れるようなことがあった場合、王様たちの退路の確保を命がけで実現するための決死隊でもある。
「ふむ。つまり階段辺りは全く無人だ」
アルビスはケリュケイオンで階段の途中に転移した。
双子も連れていく。
そして聖堂にいた騎士をケリュケイオンでポカリ!
ケリュケイオンの権能が発揮されて二人はそのまま熟睡に移行する。
「きっと、見つかったら怒られるんだろうな」
そう思って眠って居る騎士二人に手を合わせて『南無南無』双子は当然真似をして三人で『南無南無』。
でも反省も後悔もしない。
「よーし、この二人のためにもちゃっちゃと行って帰ってくるぞ!」
「「おーーーーーっ」」
王様たちがどうにかなるさみたいなことを言っていたので三人は観光気分である。
初めて見るドラゴンに胸が高鳴る三人だったりする。
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10月アルビス8歳1か月。双子5歳9か月
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