03-20 異変
第20話 異変
双子の言うところのお家。
最初みんながエレウテリア家の屋敷のことだと思った。当然である。
そうでないことに気が付いたのは当然アルビスだけ。
だけどここからさらに奥に行って秘密基地でお泊りなど許可が下りるはずがない。
どうしようかと考えているうちに双子の必殺技が放たれた。
寝転がってのイヤイヤ攻撃である。
こうなるとアルビスは何も言えなかった。なぜってそれ『イヤイヤ攻撃』を教えたのが自分だから。
なのでまた小神様のせいにした。
曰く、小神様にかくまわれていた時に住んでいた場所であると。
だんだん嘘が苦しくなってきたね。
そしてベアトリスやレムニアがぜひ見たいと言い出したのだ。
となると…まあ、仕方がないのである。
◇・◇・◇・◇
「うわーっ、よくこんなところを…」
「これなら絶対に見つからないわね」
たどり着いたメンバーはその絶妙な隠れ家さ加減に感心した。
川を渡ったところにある砂利の水辺。その上に張り出した大岩の下側から潜り込まないと入れない入り口。
外から見て見つかる可能性は皆無だろう。
「うわっ、すでにここからかー」
「何というか、かえって城より住みやすくないか?」
室内に招き入れられた客人たちは内部構造にも感心した。
構造物は既に使えるようになっている。
双子が帰ってくるなり、ふさがれていた明り取りや水路を、隠者の手や魔法で整えて復活させたのだ。
そして布団とかいろいろ小物を要求。
あっという間に立派な家(住処)に戻ってしまった。そして寛ぎだす二人。
それを見て苦笑するアルビス。
他にここにいるのはカナリア、ベアトリス、レムニア、エリアス(国王)、国王の護衛の騎士が一人である。
あっ、あとモップ。
あとは残念ながら仕事のために居残りであった。
ちなみに秘密基地までの移動方法だがみんな大して苦労はしなかった。
浅瀬に行ってから岩の下に潜り込まないといけないのだが、みんな身体能力が高いからね、ぴょんぴょん飛び跳ねればすぐなのだ。
おまけでアルビスがちょっと足場を作れば何の問題もない。
一番苦労したのは実はベアトリスだったりする。まあ、お母さんは脳筋の人ではないから。
双子もアファナトスの指導で、ディアーネは飛行能力が上がっているし、エドワードも空中を歩くぐらいはできるようになったので楽勝でした。
ついでに言うと一番ノリノリだったのが王様だったりする。男の子なんて生き物は基本的に秘密基地とか好きなのだよ。
もちろん周りの人、主に護衛の人とか難色を示したが、王様がごり押しして振り切った。まだ王様なのは内緒なので言葉を選んでいるうちに押し切られた。
それを見たアルビスは『困ったやつだなあ』とか思っていたのだが、多分このことを知ったらみんなが『お前が言うな』と口をそろえたことだろう。まあ、本人は気にしないんだろうけどね。
そんなわけで、アルビスの秘密基地に招待された一行なのだが、実際に見てみるとその構造の見事さに目を見張ったというわけだ。
「既にこの時点で完成してるわね」
「回りの環境を利用して、見事に全体を構築しているね」
「これって小神様が用意してくれたの?」
もちろんそうですと、答えようとしたのだけど…
「ちがうのー」
「兄さまが作ってくれたのー」
手遅れでした。
だが修正はきく。
「えっと、魔法は精霊様に教わったから」
嘘ではない。
一応教わったし、クロノだって精霊様だ。
なので周りの人の脳裏には小神様に指導を受けつつここを作るアルビスのイメージが構築されたりして。
ひどい誤解である。
小神様の立場からすると風評被害である。
結局その日は秘密基地で一夜過ごすことになった。
ちょっと感心しつつも戸惑う大人たちと、自慢げに家の自慢をする双子たち。
ほっこりしながら見つめるアルビス。
アルビスの作った美味しいご飯を食べ、大人はお酒がないことを残念がり、それならと『発酵』で果実をお酒に変えてふるまったり、それで大人たちを心底びっくりさせたり。
なかなか楽しい一夜だった。
ちなみに大人たちが一番びっくりしたのはもちろんお酒が作れること。
お酒というのはこの世界ではなかなかに秘匿事項の多い商品なのだ。
「お酒なんて糖度のある食べ物があればなんだって作れるのに」
またびっくり。そんなことも知られていないのだ。
熟成した本物にはかなわない感はあるのだが、まあ、間に合わせにはね。
◇・◇・◇・◇
「何だ? 何があった」
クダチ男爵は騒ぎを聞きつけ外に出てきた。
一応代官なので村の屋敷が住居ということになっているのだが、実際はこの作業場に泊まり込みになっていることがほとんどだったりする。
働きすぎには気を付けてほしいところである。
それはさておき。
「それが、最下層に潜っている奴隷たちが三層の様子が変なのではないかと上申してきまして」
「ほう、それは感心なことだな」
「オーヤ卿の差配が良いですからね。ここの待遇自体、犯罪奴隷としてはかなり良いですし、功績を上げれば褒賞が何かしら出ますから、奴隷たちも自分が役に立つところを見せたいのですよ。
お見事な差配と言えましょう」
犯罪奴隷といってもここでこき使われているのはもともと件の騎士団にいたものたちで、極悪人というにはせこい連中だ。
金目のものを全部盗んで売り払おうというのだから犯罪者であることは間違いないし、強請り集りなども常習なので、嫌われ者という意味ではピカ一なんだけど、それでも終身とされるまではいかなかった。つまり年季が明ければ解放される公算が高い。
そして鉱石などを掘る鉱山奴隷などはかなり過酷な環境で、年季があってもそれまでにご臨終というケースも多い。
ここに送られた奴隷たちも最初は腐っていた。
もともと少し腐った連中だ。救いがあるとすればボス同様、悪党というよりはろくでなしの部類だったことか。
そして、一応は国の支配階級にいたことか。
彼らは知っている。
ここではなく鉱山に送られればどんな目に合うか。
彼らは気が付いたのだ。
『ここで頑張って、年季明けまでよい待遇で働いた方が絶対お得』
と。
しかもクダチ男爵は善良で合理的な統治者だった。
役に立てば間違いなくリターンがある。
なので彼らは今、まじめに仕事をするし、役に立てることがあれば有効活用しようと目を皿のようにしている。
なので彼らは気が付いた。
ああ、ちなみにこの迷宮の最下層というのは現在のところ攻略されている一番奥の意味だ。つまり第四層のことである。
四層は現在塩を取りながら探索がなされている所で、ひょっとしたらもっと下に続く通路が見つかる可能性もある。
「ふむ、つまり魔物の様子がおかしいと…」
クダチ男爵は隣を見た。
「はい、彼らの報告をまとめますと、三層、そして四層の魔物の発生が明らかに少なくなっています。
一説によりますと、迷宮の魔物の湧きは定量があって、その数はその階層に満ちる魔力の量に従うということです」
「すると、魔物の湧き以上に魔物を取りすぎたということか?
いや、それはおかしいな。
迷宮での採掘が始まってからの採掘量は把握しているが、そう大きな違いはないはずだ」
「さっ、さすがです。オーヤ卿。小官そこまでは気が付きませんでした」
「とはいっても迷宮の魔物の湧きには波があるはず、そのせいではないかの?」
「いえ、小官の報告が悪かったです、現象は例えば今まで10だったものが1に減ったような感じなのです」
クダチ男爵は顔をしかめた。
それは確かにおかしい。
「すぐに調査隊を編成しろ、構成員は騎士を中心に。奴隷は案内に少数。すぐに調査にいれろ」
クダチ男爵は落ち着いて指示を出しながら、実はかなり焦っていた。
この塩迷宮は祖国の浮沈を左右する重要な施設だ。
それがどうなるか、それはもう、重要なことなのだ。
報告に来た役人がお大慌てで動き出したとき…
「たすけてくれーーーーーっ、ドラゴンがでたーーーーーーー!!」
迷宮から飛び出してきた奴隷の一人が倒けつ転びつ飛び出してきて、ここが見せ場とばかりに絶叫を放った。
マジで?
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
おお、みんなの憧れドラゴンが出た!
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
10月アルビス8歳1か月。双子5歳9か月




