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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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03-17 お塩革命

第17話 お塩革命



 大声をあげたあと、レムニアは大慌てで奥にはしって行ってしまった。

 すわ一大事かーっ!

 とか思ったが、全然そんなことなくて、アルビスたちは普通に家に帰ってまったりしました。


 ちなみにメニューはカツカレーとキャベツの千切り、ドレッシング。そして味噌汁、漬物である。

 やたら家庭的に見えるかもしれないがこれは現在のスクード地方の『超贅沢』な御馳走なのである。

 フルコースなど目じゃないのだ。これを作れるのは本当に限られた者だけだから。


 だからこういった特別な日にだけ用意されるスペシャルな美味。それがカツカレー定食。

 なんだかなあ。


 一番小さいアネモネの赤ちゃんはまだ食べられないけど、家族団らんの楽しいお食事だったりするので楽しそうでGood。

 孤児院がすでに機能しているので残念ながらユマたちはいない。ほんと惜しいことしたね。


 それで翌日。


「まあ、レーン様が呼んでるですって?」


 アルビスたちはレムニアに呼び出された。


◇・◇・◇・◇


「こちらは、エリアス殿だ。私の親戚の~やつでな、今回、王国からの使者として見えられた」


 珍しくレムニアがお仕事モードで一人の男性を紹介した。

 なんでも塩迷宮の確認と、エレウテリア家の陞爵の使者としてきたらしい。

 その男性は無駄にさわやかな笑顔で気さくに話しかけてきた。


「初めましてエリアスだ。今回の発見は王国を救うほどのものだったよ。国王陛下も大変お喜びだ」


 そして顔を引き締め。


「また、そのせいで大切な家族を亡くされた皆さんには心からお悔やみを申し上げる。

 せめてもということで国王陛下は今回発見された迷宮にコンラート殿の名を残したいと仰せです。

 コンラート塩迷宮と…」


 これはこの世界において大変名誉なことなのだ。

 自分の名前がずっと残るというのは。


「ありがとうございます。あの人もきっと喜びます」


 合わせてエレウテリア家には『法衣伯爵』の爵位が与えられることが知らされた。


 この国の貴族としては上から二番目、あるいは三番目となる。

 公爵位は常に一代限りで、名誉職というか救済措置みたいな扱いなのでこれは除外。

 なので爵位の一番上は実質『侯爵』となる。

 辺境伯というのは侯爵と同等の扱いなので、これも一番目といって支障がない。

 なので伯爵というのはそういう立場。上位貴族になるのでこれを叙爵できるのは国王のみとなる。


 これによってエレウテリア家はスクード家の子飼いの貴族ではなく、スクードと同じ王国の臣ということになるわけだ。

 ただ寄親はスクード辺境伯家になるので今までと大して変わりなし。


 この伯爵までが上位貴族という扱いの身分で、自分の部下に子爵位、男爵位、準男爵位、騎士爵位を授ける権限を持つことになる。


 つまり侯爵、辺境伯、伯爵が大名で、他は大名の家臣という感じだろうか。

 国王が直接任命した下級貴族が旗本かな。


 と、まあ、ここまでは通達事項。

 その後はお茶を飲みながらの詳しい報告という名の雑談となった。


◇・◇・◇・◇


 さて、アルビスからしてエリアス氏はなかなかにかっこいいやつだった。


 さわやかだがちょっと豪快で、それでいて実直な感じの人だった。しかも子供の相手は慣れているらしくうまくソレイユちゃんをあやして見せるしエドワードとディアーネの前で演武を見せて喜ばれたりもしている。

 ただ子供に披露するのが演武というのは彼の本質を表しているだろう。


 だがアルビスは当然そいつが誰だかは知っている。


※ ※ 鑑定 ※ ※

 イロス・アファナシアⅢ(さんせいと読む)

 人族 男性 33歳

 評価…王様…悪人ではないよ…割と王様してる。ちょっと好き。

 備考…アファナシア王国現国王さま…苦労人だね…女難の相があるよ。

    レムニアの弟分だね。

※ ※ 以上 ※ ※


 変な人はとりあえず鑑定するから。


(王様じゃねえか!)


 とか思ったけど本人が名乗らないからスルーするアルビス。結構図太い。

 その王様が出張ってきたのはやはり塩をどう利用するかということらしい。


「それじゃやっぱりきましたか?」


「ええ、早速にね。この領で塩の販売を始める前よ」


 王様なのにレムニアに対してはちょっと低姿勢。本気で弟分なのだ。

 その二人の話はちょっと重い話だった。


 レムニアが言うにはこの国には塩ギルドというのがあるらしい。


 塩の売買を取り仕切る組合だ。


 これは輸入される限られた量の塩を効率よく公平に分配することを目的に作られた組合なのだが、実情は隣国、ド・アーク帝国の出先機関のようになっている。

 塩の輸入量はそのアーク帝国の胸先三寸で決まるので、これまでは思うように文句も言えなかったのだ。


 そんな組織が、大量の塩が市場に出回るとなって黙っているだろうか。

 スクードで塩を売ろうというその時に、すぐさまやってきて『塩は自分たちが管理することが決まっているので現物を引き渡すように』と言い放った。

 もちろん突っぱねた。


「塩ギルドというのは輸入塩を公平に分配するための組織だからね、国内の塩に干渉する権利なんかないのよ。だから相手にもせずにつまみ出したら…」


 忘れ物をしていった。


 まあ、書類鞄なんだが、そこに契約書が入っていて、塩は全量ギルドで引き受ける。その代わりにギルドから相応の謝礼を。みたいなことが書いてあったのだ。


 賄賂である。かなり高額の。

 もしレムニアでなくてアグニア卿とかダフニア男爵とかだったら間違いなくウハウハでサインしていたに違いない。


「そうなれば強硬手段を使わねば収拾がつかなくなるところだったわね」


「まあね、今度は現物が国内にあるのだからやり様はあるさ、ただ傷も大きくなるからねえ…」


 どういうことかというと仮にアグニア元子爵あたりが契約書にサインをしていても、国家に対する背信行為とか理由をつけて取り戻すことは出来るということだ。

 ただその場合、背信行為の責任を取らせる形でアグニア卿は処刑、当然スクード家にも何らかのお咎めがあったに違いない。

 できればそれは使いたくない手だった。


 その意味でもアグニア子爵の失脚はありがたかったりする。


「それでそのあとは?」


「うん、領内の商会に塩をおろそうとしたら商店が受け付けないんだよね。どうもギルドから圧力がかかったみたい。

 それに商会の方もギルドからかなり利益供与を受けていたみたいだから」


 つまりギルドは塩商店、アーク帝国と組んでこの国のお金を吸い上げて自分たちだけで利益を分配していたのだ。


「ふむ、だけど、ここに来るまで結構塩を扱っている店を見たけど」


「うん、それもアルくんの発案でね。商店に頼まずに、冒険者ギルドで販売したのよね」


 塩はあるのに売る場所がない。

 そこでアルビスが考えたのは行政(スクード家)が直接販売元になるやり方だ。

 普通の貴族家は大本の商品を商人に買い取らせて利益を上げる。その方が手間がかからないからだ。

 鉱山であれ、農作物であれ、商人に引き取らせて『よきに計らえ』というのが貴族なのだ。


 スクード家もご多分に漏れず、商人に相手にされないとなったときにどうしようかという感じになってしまった。

 だからアルビスは『専売公社』というのを考えた。というか思い出した。といってもすでに歴史の話なので詳しい仕組みなどさすがに知らない。

 国が商品の値段とか流通とかを管理するということぐらいだ。だが実績はあるのだ。何とかなる。

 なので。


(うちらが直接売ればいいんじゃね?)


 という発想になったのだ。

 だからスクード家で塩を掘り、スクード家で精製し、スクード家で販売価格を決めて、スクード家で販売所を運営する。迷宮で取れる高純度の岩塩なのでかなり扱いやすい。

 価格は固定、全国共通。完全にスクード家のコントロール下。

 これを国中に広げようというのだ。


 ちなみに迷宮の権利というのは迷宮を発見した者。そして迷宮の存在する土地の所有者。この双方にある。


 でも大概は土地の所有者のものになる。

 冒険者が迷宮なんか持ったって大して活用できないのだ。

 なので発見者の扱いは、権利の一部を認めて『迷宮の利益の一部を支払う』とか、『最初に高額の報酬を支払って買い取る』とかになる。


 迷宮とは言っても利益にならないようなのもあるので、利益が常にマイナスになるようでは冒険者も損にしかならない。その迷宮をどうするかはギャンブル的な要素もあるのだ。


 だから今回のように見つかった最初から利益が見込めるのはまれだったりするのだ。


 でも今回は問題はないのだ。この迷宮の発見者は(表向き)コンラートで、存在する場所はコンラートが開拓を進めていた場所にある。魔境の権利は開拓をしたものに帰属する。

 そう決まっている。


 まあ、あの段階で開拓が成功したといえるかどうか。というのはあるのだけど、迷宮の利用が決定したといえるから、いいのではないでしょうか。


 なので領地を返還しても迷宮の権利はエレウテリア家にある。

 普通は冒険者などを入れて迷宮の資源を持ちかえってもらってそこから利益を上げるのが定石なんだけど。アルビスが専売公社化することを決めたので、すべてがスクード家の管理下に置かれている。

 つまりエレウテリア家とスクード家の共同事業と化しているのだ。


 単なる思い付きだったが、エレウテリア家が実質スクード家に囲い込まれた形になるのでエレウテリア家の方も余計なちょっかいはなく、結果、グッジョブだったと言えよう。


 もし、冒険者などの出入りを自由にしていたら、悪さをしようとするものが得をしただろうから。


 そこで問題になるのが人手だ。いま辺境伯家は人材貧乏なのだ。お金も貧乏だけど。

 だがそこにバカが現れた。

 まあ、好き勝手をしていた、左遷された誰かさんの騎士団だ。

 処刑されちゃった人の家人とかもいる。


 結構大量に犯罪奴隷が生まれたのだ。しかも屈強なのが…いや、ただのデブとかもいたが、腕っぷしでゴロまいていたようなのもいるので労働力は十分。

 制約の首輪とか言うので逃げられないようにしているから裏切られる心配もない。逃げられる心配もない。


 管理者だけなら何とか用意できる。

 こうしてコンラート塩迷宮は犯罪奴隷を労働力として稼働を始めたのだった。


 次に問題になったのが販売場所だ。

 普通の商店はギルドの圧力があって言うことを聞かない。というか横流しをして暴利をむさぼることが心配された。


 なのでアルビスはまず冒険者ギルドを使うことを思いついた。


 冒険者ギルドは依頼を受ける組織であり、しかも現在は過去にやらかした経緯からスクード家の完全管理下に置かれている。


 なのでアルビスはギルドに塩の販売を依頼した。

 定額で、誰にでも。ただし一回に1kgまでの販売。お値段は1kgで6銅貨(3000円)、ものすごく安いと大好評です。


 アルビス君の感覚だと、かなりお高い塩という感じなんだけど、日本でも高級なお塩はそれくらいしちゃうのを庶民であるアルビスくんは知りません。アルビス君の普段の生活が分かりますね。


 ちなみに今まで塩ギルドが売っていた塩はこの10倍。一キロで3銀貨~5銀貨ぐらい(1銀貨1万円)。需要と供給のバランスが取れてなくて、しかも輸送費がかかるからという理由でこんなものでした。

 ぼったくりだね。しかもなくては生きていけないものだからそれでも買わないといけない。質が悪い。


 さらにとりあえず供給が安定したので冒険者ギルドに直売所の運営を依頼して、現在に至るのだ。

 きっとこれからは潤沢に塩が使えるようになることでしょう。


(高血圧とか心配かも…)


 そう、塩分の取りすぎには注意しましょう。


 あとは国レベルでもそれ(高血圧ではなく専売のことだよ)をやるだけだ。

 それは大人がうまいことを考えればいいのである。

 辺境伯と国王様の話し合いはまだ続きそうであった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

現在9月。

アルビス8歳。

双子5歳8か月


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