03-07 アファナトスにお宅訪問する
第7話 アファナトスにお宅訪問する
「うーむ、重力飛行だと気圧関係ないな」
おそらく高度は7000mぐらいだと思われる。アルビスは、アルビスたちはみんなで連れ立って霊峰を登っているのだ。ただし空を飛んで。
アファナトスに会うために。
遠く眼下に魔境とそこでうごめく魔物が見えるが、遠すぎてよくわからない。ただこの辺りまでくると人間の姿もないので高度は下げられる。
この辺りは魔境のかなり奥で、レベルで言えばⅣとかⅤになる。
当然いるのはすごい魔物ばかりという話なので、ちょっとドキドキワクワクする。
アルビスは最初、カゼコマでの飛行を試みたのだが、これが高度が上がるとともに思うように上昇できなくなった。
クロノは平気なのに。 気圧の関係と思われる。
なのでアルビスも重力制御飛行に切り替えたのだ。
実はアルビスは重力制御飛行にちょっとした忌避感を持っていた。
際限なく加速できるというその性質からくるもので、大気圏内を際限なく加速するとさすがに危ないのだ。
セルフメテオである。燃え尽きるかどこかに突っ込んでクレーターになるか…
なので扱いは慎重に。ということになる。
以前ちょっと怖い思いをしたので安全運転が大事。と悟ったのだ。
まあ、それでも十分早いんだけどね。出発から二時間ぐらいでここまで登ってきたんだから。
ちなみにほかのメンバーはクロノの背中の上。もともと重力制御飛行だし結界もあるのでそちらは快適らしい。
アルビスは気が付いていないけど魔力回路が発達して魔力が全身を循環すると身体機能は自然と強化されるし、それとともに環境適応能力も上がるから高山病を警戒して結界をはる必要はなかったんだけどね。
そんなこんなで目的地にやって来たアルビスたち。そしてそこに見えてきたのは…
「すごい…」
「きれいですね…」
「「かっこいいー」」
それは標高7000m付近にある、巨大な岩場を削って作られた芸術的な建造物。
インドのエローラ石窟寺院群を彷彿とさせる建造物たちだった。
その中央にかなり広い舞台のような場所があり、そこでアファナトスがピコピコと手を振っていた。
そして無事着地。
すると霊獣はやって来た全員の周りをまわってチェック。しばらくそれを続けると何かに納得したかのように頷いて、いきなり個別指導が始まった。
せっかちさんである。
えっ? と思って見つめるアルビスをアファナトスは見つめ返す。その視線には『弟子』といったようなニュアンスが感じられた。
これもおでこ効果か?
おでこぐりぐりの後からアルビスはサードアイに磨きがかかったような感覚を覚えていた。
平たくいうと認識力の拡大。
なんとなく通じ合っちゃうような感じまである。
なのでなんとなく思いが伝わるのだ。
それによると。どうやら全員弟子認定されていたらしい。
ニュ〇タイプはあれなので『天眼』とよぼう。進化である。
アファナトスはまずアルビスの背中にというか頭の後ろに『パ〇ルダーオン』。その状態で重力魔法を展開して実際に空間制御を操って見せた。そしてその中で動いて見せ、一つの型というべきものを教えたのだ。どうやら覚えろということらしい。
それはアルビスから見ても信じられないほど高度な周囲の空間のコントロールだった。
「これやんの?」
大変そうだった。
そして一つの課題をアルビスに授けると今度はカナリアにくっついてまた、アルビスとは違う重力制御を教えだす。
お題は常に一つ。
それが終わったら今度はエドワードとディアーネの番だ。
アファナトスが離れている間は自分でそれを修行し、しばらくするとまたくっついてきて手取り足取り感覚を伝授される。
その繰り返しで時間が過ぎていった。
どうやらアルビスは霊獣の弟子になったらしい。
◇・◇・◇・◇
そんなこんなのお昼過ぎ頃、アファナトスがちょっと行方不明になった。
いきなりシュパっと消えたのだ。
アルビスは見た。慣性制御による瞬間加速であった。
アルビスは考える。『あれに対抗できるだろうか?』と。
「むりだね」
うん、結論はあっさり出た。
まあ、そんな感じで放置されたアルビスたちだったが、行く前に指示はあった。
つまり『休憩』である。
「じゃあお昼ご飯にしよう」
「「「はーい」」」
実は秘密兵器を用意してきていたのだ。だがそれはアファナトスがいないと意味がない。
なのでお昼は簡単に済ませることにした。
作り置きのホットドック。
スクードは北国だからだろうか、腸詰のソーセージ文化が結構いいのだ。
そしてパンも売っているしケチャップもある。
子供だからマスタードはいらない。
そして空間収納がある。
「こういう時収納があると便利だね」
双子とカナリアもすでに収納が使えるようになっているので少し食料を備蓄させておかなければならないとアルビスは考えていた。
この機会に少し持ち物を移動しようかとも思ったが、それは果たされなかった。
アファナトスが返ってきたのだ。
モップを連れて。
◇・◇・◇・◇
実はアルビスもここに来る時にモップを連れてこようとしたのだが、モップがかなり嫌がって叶わなかった。
(いまにして思えばアファナトスにおびえていたんだな…)
モップの様子を見て納得する。
どうやってかわからないが、アファナトスに連れてこられたモップはかなりビクビクしている。
アファナトスに注目し、その一挙手一投足にビクンビクンと反応し、しかも普段は双子を守るような位置取りで動いているモップが双子の背に隠れるようにしてアファナトスの様子を警戒している。
「驚いた。太陽の冠猫はかなり高位の魔物のはずなんだけど…」
アファナトスの前ではまるで子猫よりも頼りなく無力に見える。
それだけアファナトスがとんでもなく強いのだ。
「「もっぷ、どしたの?」」
双子はまだそういうのが分からないようで、無邪気に心配しているが、これでは双子が心配するのも当然と言えるだろう。
アファナトスがアルビスを見た。
なんとなくで意思疎通。
「2人とも、モップはこれからフサちゃんと修行なんだって、ちょっと緊張しているんだよそっとしておいてあげようね」
「うわー、修業、いいね」
「うん、がんばってね」
モップが愕然とした顔をしている。一言で言うと裏切られたような顔だ。
アファナトスはまた僕たちに稽古の指示を出すと、モップを引きずって奥に入って行った。
元気に手を振る双子。
アルビスはその後ろで手を合わせて見送ったのだった。
モップの命運やいかに。
ちなみにフサちゃんというのは双子がアファナトスを呼ぶときの単語。
ふさふさで兎に似ているから『フサちゃん』だそうだ。
フサちゃんと呼ばれて双子にじゃれつかれるのは結構まんざらでもないようなのでそのままにしている。
フサちゃんの命運やいかに。
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6月アルビス7さい9か月。双子5歳5か月




