03-04 双頭の蛇と戦う
第4話 双頭の蛇と戦う
さて、ふわふわと空を飛んで少し脇に逸れる。
そこは樹木の密集した森のような場所だった。
そして怪しい存在は見えなかった。そう、見えなかったのだ。
「うーん、でもここまで怪しい気配を発していたら意味がないような…」
《そうでもないでありますよ。実際一定の距離に入ってくるまでマスターにも気づかれなかったであります》
「あー…そういえばそうか」
それは気配を消して、しかも光学迷彩のように森の中に溶け込んでいた。
かなり大きな、怪しい気配だ。
アルビスでも全容は分からない。
「鑑定」
※ ※ 鑑定結果 ※ ※
【識別】 アンフェスバエナ・個体名無し
【解説】 双頭の蛇アンフェスバエナの幼生体。全長9m。
特殊能力『隠』を保有。なかなか見つからないぞ。
まだ子供だから毒とかはもってないんだ。それでもものすごく硬いんだよ。
なんでも引き裂いて一飲みだね。
【備考】 でもものすごくおいしい。とてもおいしい。幼生体ほどおいしい。ぜひ。
※ ※ ※ ※
「ちょっと変な鑑定結果出た…9mで幼生体って…」
非常識だね。
それにぜひって何?
「まあ、でもこういうのは通報案件だよね、あとはお任せ見たいな?」
とか思っていたら双頭蛇がゆっくりと動き出した。
そのずっと先にはカナリアがいた。
気が付けは双子はアルビスの後ろにふわふわ浮いていたのだ。エドはまだ飛べないけど協力技は行けるみたい。
そしてこの二人だとどうしても連れてこられないカナリアが走ってついてきたのだ。
まだかなり距離があるが全力疾走のせいかすでに蛇に気づかれているみたい。
(うーん、これは先制するしかないか)
アルビスの決断は早かった。クロノを召喚してカナリアを回収させて、同時に入滅陣を発動する。
「死ね!」
黒い靄が発生し地上に広がり、それが双頭蛇の姿を浮き彫りにする。
黒い靄の中にぽっかりと筒状の空間があるのだ。
だがそれは一瞬だった。
黒い霧が死の針へと変じるほどに双頭蛇の擬態は溶けてその姿があらわになる。
「ニシキヘビのでっかいやつだな」
模様的にはね。
ニシキヘビを双頭にして大きくして、鱗を装甲板と呼んで支障がないぐらいに強化したらこれになる。
そして即死魔法は『シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ』という威嚇音とともに吹き散らされた。
「うわっ、負けた。
結構魔法能力も伸びているはずなのに」
つまりかなり強力な魔物ということになる。
「油断ならない相手だ! 総員退避!」
とか言いながらアルビスは双子をつかんでさらに高い位置に。
双頭蛇がそれを追いかけるように空を舞った。
「すっごいジャンプ力」
アルビスの位置は高度40m近くになる。
そのすぐ下までジャンプで迫っていた。
でもそのまま落下していく。空は飛べないらしい。
アルビスはカナリアを回収して回り込んで来たクロノに双子を預け。油断せずにハイパーライフルで追撃を加えた。
ドウン!
ドウンッ!
と発射音が響き超音速の砲弾が双頭蛇に襲い掛かる。蛇も空中だったので腹とか見えていたのだ。だからそのまま当たれば仕留められたかもしれない。
だが双頭蛇は器用に頭を振り、体をひねり、頑丈な装甲板で砲弾に対峙した。
「あー、弾かれた!」
全く効かなかったわけではない。
アルビスの目には砲弾が装甲を削り取るのが見えた。だが貫通には至らなかったのだ。
「うーん、接近戦は…できればしたくないな。うん」
生理的にあまり近づきたくない。
アルビスはこの世界に来て大概の生き物は割と平気になった。ちっこい蛇(2mまではちっこい)は平気だったりする。
村の子供の中には尻尾もって振り回すような奴もいたし。
だがここまで大きいと蛇というのは本能的な恐怖感をあおる。
《ケラウノスはどうであります?》
「ダメー、あれじゃ消し飛んじゃう。すごくおいしいっていうから…」
食べる気満々だ!
「でも精霊武器はいいね。ケリュケイオーーン!」
アルビス考えた。転移で蛇の近くまで移動し、眠らせてしまえばあとは簡単。だと。
そしてすぐに実行。
双頭蛇の頭に飛んで杖でコツン。それで蛇はぐっすりと…
どごーーーん。という衝撃を受けて飛びのいた。
片方の頭を眠らせたらもう片方がそれに頭突きをかましてたたき起こしたのだ。
それに反応が速い。
「頭突きじゃなくて噛みつき攻撃だったらやばかった!」
この蛇、胴回りも50センチ強ある。
頭はそれよりもちょっと大きい。
しかも角とかトゲトゲとか生えていてとっても危ない。
危く跳ね飛ばされるところだったのだ。
転移で上空に戻ったアルビスはほっと息をついた。だが。
「うーん、どうしたものか…」
蛇はとぐろを巻いて威嚇音を発している。
まあ、頭一つで、頭突きを食らった方の頭はクワランクワラン揺れているけど。
「えーい。燃えちゃえ」
「あ、協力するー」
そのアルビスの後ろで双子が協力魔法を発動させていていや、権能か。
「それだ!」
アルビスは閃いた。
そこからは早かった。
アルビスがエドワードに指示してフリーズタッチを使わせた。
対象はディアーネの操る風だ。
マイナス十数度まで冷やされた風はディアーネの権能【風歌】で蛇に届けられる。
蛇は外温動物だ。外気と体温が同じになっていて活動に外気の影響を受ける。
昔、変温動物と呼ばれたタイプの生き物である。
極寒の風は蛇の周囲を冷却する。
周辺の木々や下生えが白くなる。霜が付いているのだ。
「よし、うまくいった。らっきー」
魔物なのでひょっとしたら違うかもとか思ったが、さすがに外気温度が零度を大きく下回ると影響を受けるようで動きがどんどん鈍くなるようだった。
これでフェイクだったりすると大変なのだが…
アルビスは今度はアイギスの盾を構えてわざと空から近づく。
この盾があればいきなり体当たりを食らっても大丈夫だと思う。うん、たぶん。
果たして…
『やった。完全に冬眠している』
地面に頭を落とし、ピクリとも動かない。
アルビスはケラウノスを召喚するとサクっと二つの頭を切り落とすのだった。
◇・◇・◇・◇
「じっしょくいえーーーーーーっ」
「「いえーーっ」」
「い、いえ?」
ものすごくおいしいといわれれば食べてみたくなるのが人情である。
アルビスはこの世界に来て真理を悟った。
敵対的な魔物であれ、かわいがっていた家畜であれ、調理してしまえば【食料】である。と。
というわけで今日の晩御飯(まだ早いけど)は双頭蛇のステーキである。
必要なもの。
塩…自分とこで取れた奴。
胡椒…のような味のする葉っぱ。乾燥させて粉にするべし。
醤油…魔法で作ったやつ。
油…自分で絞ったやつ。
ハーブ…よくわかんないけど香りづけ。ニンニクっぽい味と香りのやつ。
玉ねぎ…これはそのまんま。売ってた。
味醂…はまだないので代わりにお酒。たぶん料理酒。
蜂蜜…砂糖の代わり。高いので自分で採取するべし。
人参…立派なのがうってた。
バター…これは作ったのがあった。
水…魔法でいいのを出そう。
まず、肉を叩いて筋を切り、塩、胡椒を擦り込む。子供がいるので控えめに。
少し置いておく間にすりおろし玉ねぎを用意。
フライパンにたっぷりの油を入れ、にんにく風の何かを炒め、そこにお肉を投入。
鉄板は魔法で加熱する。
IHのような電磁波加熱を模して魔力で加熱する。長年の料理生活ですでに自由自在である。
お肉は焼きすぎないように気をつけつつ強火で一分。ひっくり返して一分。弱火で一分。これで焼き上がり。
残った油に醤油、お酒、すりおろし玉ねぎを投入し、こげないように火を通しながら混ぜ混ぜ。
これでステーキとソースが出来上がり。
これと同時進行でニンジンをゴロンという大きさに切り、角を取って丸めにする。
水とバターと蜂蜜を一緒にいれて火にかける。もちろん魔法で加熱と味染みを加速する。
お肉をデンと皿に置き、脇に人参のグラッセを大量に配置。隣に作り置きのフライドポテトをデンと盛り付けて、ソースをかけてパセリ見たいな野菜を添え、焼き立て(収納から)パンを取り出して置いたりして晩御飯の出来上がりである。
お肉はつまみ食いしたときに美味しかったので多めに焼いた。
「さあ、みんなお待たせ、いただこう」
「「はーい」」
「はい、いただきます」
『きゅーーーーーーーーっ♡』
・・・あれ? なんか変なのが混じってる。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
6月アルビス7さい9か月。双子5歳5か月




