02-47 激戦~ピンチ~アイギスの盾発動!
第47話 激戦~ピンチ~アイギスの盾発動!
この世界には有名な剣術の流派が三つある。
いろいろあるが有名なのが三つ。
一つが幻舞剣、これはコンラートが使っていた剣だ。使う剣は軽めのものが多く、変幻自在の動きが特徴。
一つが金剛剣、これはフォネフスが使っている剣技で、使う剣はでかい剛剣。動きが直線的でパワーとスピードが売り。だからといって技がないわけではない。斬撃は鋭いぞ。
最後が天位剣。最も正統派といわれる剣でゆるぎない絶対なる一を目指して編み上げられた剣だ。けれんみはないがどんな状況にも的確に対応して的確に敵を屠る。
ただの剣術と思ってはいけない。この世界には魔力があって、魔法使いでない人たちは『剣技』やら『武技』やら『絶技』やらと、これまたいろいろ編み出している。
d‐ossというのはそのための補助発動媒体でもあるのだ。
「乾坤一擲!」
なんか後がないような名前の剣技だが、静止状態から防御を捨てての超速突進斬撃技で、金剛剣の最もポピュラーな武技である。
名前の割に命中率が高く、攻防一体の武技だったりする。
その攻撃を。
「柳風」
アーマデウスは有名な受け技で流し、ついで。
「千切り」
キャベツが…じゃなくて剣だけのディレイ攻撃で幾筋もの斬撃を放つ技で反撃。
「ふっ、金剛剣」
流派名ではなく巨大な剣を強化して攻撃の盾にする武技だ。
こうして書くと暢気にやっているように見えるが両者とも超早い。
おまけに余波で周囲の地面だの岩だのが破壊されていくのだ。
この後の峠道の整備が大変そうである。
それを手に汗握って見守る観衆の人たち。
さすがにアルビスもアーマデウスを見直していた。面白いだけのおっさんではなかったかと。
だがこの場にいたのは彼らだけではない。
おまけが二人いたのだ。
ナンナたちが剣聖の威風に見入って、いや、むしろ魅入られているうちにフォネフスについてきた二人は何とかベアトリスを始末しようと動き出した。
使命感とか忠誠心とかではないし、鋼の意思を持っていたとかでもない。
うまくやらないと自分たちの命運が尽きるのを知っていたからだ。
主に自分たちの主であるろくでなしの手によって。
もちろんアーマデウスたちがここに現れたことに何らかの事情があると理解はしていた。何か不味い事態が発生したのだと。だが彼らには他に選択肢がなかったのだ。
ナンナたちはその動きに気付かなかった。
ナンナは優れた魔法使いだったが、基本は回復魔法士であり、常在戦場というわけにはいかなかった。
だが当然に気が付く者もいた。
常在戦場で常に周囲に気を配っている者。今戦っているアーマデウス本人だ。
彼は隠していた武器を抜き、二人の男に向かって投擲する。
それはアーマデウスに致命的な隙を作る行為だ。自分でもそれは理解していた。
だが彼の目的はベアトリスを守ること。それは何にも勝る使命なのだ。だから彼はためらわずにそれを成す。
もし、アルビスを信じて任せていたら違う流れになったかもしれない。
アルビスも天眼による拡大した認識力で男たちの存在に気が付いていたのだから。
「竜斬剣!」
もちろんフォネフスもそのチャンスを逃したりはしない。
攻撃力の高い武技を繰り出す。
竜すら切り裂くという必殺の斬撃。本当に竜が切れるかは保証の限りではない。
だが必殺の一撃なのだ。
誰もがアーマデウスが切られるところを想像とか…してなかった。うん、攻防が速すぎて見えていたのはナンナとアルビスだけだったろう。
ナンナはなんとなく。
でもアルビスはしっかりと。
フォネフスは自分が振り下ろした剣の下に子供がいきなり現れたことを一瞬だけいぶかしんだ。
そしてその子供は左手に盾を、右手に杖を持っていた。
『だが問題ない』
それは加速した時間感覚の中での一瞬の思考。
彼の剛剣は盾ごと子供を断ち切り後ろにいるアーマデウスを斬るはずだった。
ひょっとしたら致命傷は躱されるかもしれないがその程度の邪魔でしかない。そのはずだった。
剛剣がアルビスの掲げる盾に叩き込まれる。
フォネフスは勝利を確信した。していた。
彼は人を斬るのが大好きだった。
強いやつを斬るのが好きだった。だが無抵抗の弱者を斬るのも好きだった。
にやりと口元がゆがんだ。
その瞬間、そのまま突き進むはずの剣がすさまじい勢いで跳ね返された。
「なっ!!」
フォネフスはその盾を見つめた。
見つめてしまった。
そこには自分と正対するように顔のような文様が見て取れた。目を閉じた美しい女の顔。そしてその顔の、閉じられた目が開いていく。
輝く視線が自分を見つめている。
フォネフスはその視線から目が離せなかった。
視線が絡み合い、そして、圧倒的ななにかが自分の目から流れ込んでくるのを感じたのだ。
「なっ、なにが……………」
飛び退り着地するフォネフス。
その視線の先でその子供は暢気にはしゃいでいる。
みんながあっけに取れれるその先で。
「おー、さすがアイギスの盾。全然衝撃を感じなかった!
しかも初めて成功した。したよね?」
アルビスがちょっと不機嫌だったのはせっかく完成した精霊武器パートⅢであるアイギスの盾の、その性能を確認する機会に今まで巡り合えなかったことによる。
なんといっても盾なので相手がいないと試しようがないのだ。
どんな効果を発揮するのかは分かっていたが、具体的にどうなのかは見てみないと分からない。でも危ない効果なので知り合いに攻撃を頼むわけにもいかない。
魔境の弱っちい(この感覚がすでに変)魔物相手では性能がよくわからない。
しかもこの盾の真骨頂というべき能力は、しっかり盾と攻撃者の視線が合わないと発動しないのだ。
そういうものらしい。
逆に言うと視線が合わないと発動しない代わりに、視線がしっかりと合えば魔法抵抗力を無視してその効果を発揮できる。という形になっている。
その能力を【石化の魔眼】という。
当然その異常に気が付いたのはフォネフスが最初だった。
ギシリ!
その異音が自分の中から聞こえたのは態勢を立て直し、剣を握りなおしたときだ。
まるで長く病床に臥せった後、動かしていなかった身体を無理やり動かすような違和感。
最初は無理な動きでどこか痛めたかと思ったが、一流の剣士にそんなことはないのだ。
そうならないために常に体の可動範囲は整えてある。
攻撃を〝受けた〟のならばともかく、自分の動きでそんな故障が起きるはずがない。
だが、剣聖とバチバチやり合うなどめったにない楽しい経験だ。そのせいで無理が来た可能性はある。
ちっ、ここまでかと思った。楽しい時間であったがこれ以上は楽しめない。しかし相手は剣聖。簡単に切れるような相手ではない。
このまま続けるとヤバイかも。そう思ったフォネフスは意識を撤退に切り替えた。
凶状持ちで全国指名手配のような状態にある彼が今まで無事に生きてこれたのはこの勘の良さと、引き際の良さによる。
剣をしまうつもりでもう一度握りなおしたときに今度こそ致命的な〝ピシリ〟と、異音が響いた。
最初それが何を意味するのか解らなかった。
そして見た。
手が白くなっている。血の気が引いたというレベルではなくおしろいを塗りたくったかのように。そして今力を入れた親指に黒い線が見えた。
それは亀裂…
ギョッとして動いた瞬間に剣がずれ、親指を強く押す。そして親指は脆くも折れてポロリと落ちた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・うぁあぁぁぁぁぁぁあっ。なにが、なにが!!」
飛び退ろうとしたが唐突に転んだ。足も固まっていたのだ。
しかも勢いよく動いた拍子にぽっきり折れてしまった。
倒れる身体を支えようとしてついたはずの左手も折れた。
「うあ※・・&‘(*+HUG)(~==P|~+=~{L{‘}・・・・・・・・・・・・・・})」
口から飛び出した意味不明の言葉も次第に途切れる。
息もできなくなる。
でも苦しくない。
意識も石のように停止していく。
彼が最後に認識したのは重たいものが地面に落ちる衝撃音。
完全に石になった自分がごとりと地面に倒れる音だった。
◇・◇・◇・◇
戦場に石化して横たわる…いや、人の姿に似た石が転がる戦場。
誰もが声もなかった。
あっ、双子は平気でウゴウゴ動いてました。
カナリアはクジラの上でさも〝当然〟といった様子で頷いてました。
アルビスは実験の成果に満足そうにうんうんと頷いてました。
結構動いているな。
まあ、そんなわけでベアトリス危機一髪は無事に回避されたのだった。うん。
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まだ12月/アルビス7歳3か月/双子4歳11か月




