02-46 急行~銃撃~剣聖二人
第46話 急行~銃撃~剣聖二人
その少し前。
「うおおおっ、あぶない」
空飛ぶクジラの背の上でアーマデウスが慌てふためいていた。
どうもこの人高いところ苦手かも?
という気がする。
城を飛び出したアルビスだったが、クロノに乗せてきたのは弟妹とカナリアだけ、ここまでは良い、だがさすがにでっかいモップを乗せられるとは思わなかったし、そのモップと一緒にアーマデウスが走ってついてこようとは想像の埒外だった。
どうしようか悩んだのだけど放っておくこともできずにいったん下に降りたらモップが小さくなった。
器用である。
アルビスは全員をクロノで運ぶことにした。
まさか雪の中をお前らだけ走ってこいとは言えない。
ここで問題が出る。
さすがに飛行速度が遅くなった。
おまけに弟妹が疲れてしまった。まあ、裁判の行方などのことでドキドキしていたのだ仕方がないだろう。
これも弟妹だけなら問題はないのだ。クロノが隠者の手を使って保護すればその背中は安住の地。寝たって問題はない。
だがさすがにメンバーが増えて場所がなかった。満員電車状態である。
なのでカナリアが二人を抱きしめてその安眠を守る形になる。
ところがカナリアもずっと単調な空の旅。時々意識が飛ぶらしい。
それをアーマデウスが慌てて支えるという感じになった。
なのでちょっとバランスを崩すと危ない。スピードはさらに落ちた。
まあ、それでも騎獣で走るよりは早いのだが。
『いやー、どんなに乗ってても飛ぶのに支障はないんですが…バランスが悪いでありますな…』
クロノは重力を操って飛んでいるので重さは関係ないであります。
だがアルビスが先行するという選択肢はない。
なぜならベアトリスの場所が分かるのがクロノだけだから。
クロノがフルクトスの位置を感じ取ってそれをアルビスに教えているのだ。だからどうしてもぶっちぎるわけにはいかない。行かないのだ。
だがそれでも空を飛ぶというのは早い。地上をいくよりもずっと早い。半日も飛んだころにはかなり接近していたのだ。
『! 明確な位置が出たであります。近くにいる精霊が位置情報を送ってくれたであります』
そんな時に突然の朗報。
まあ、実情はフォネフスに襲われたナンナの精霊が近くにいる者に救援を要請したというのが本当だ。
本来こんな救援要請、出す者も少ないし、応える者はまずいないのが普通。不可能という意味で。
だが今はたまたまアルビスがふらふら飛んでいた。
「よし、先行する、クロノはみんなのことを頼むぞ」
『かなりやばいやつと戦っているらしいであります。お気をつけてであります』
「了解、まかしときー」
アルビスはばびゅーんとスピードを上げた。後ろでアーマデウスが何か言っていたが無視だ。
◇・◇・◇・◇
そして現在。
「あー、はずれたー」
見た感じやばそうなのでマシンライフルの魔法を起動させて斉射をかましたが、見事に外れてしまった。
高速で飛行しながら地上の目標を攻撃するのは大変難しいのだ。しかも近くにほかの人がいるからね、どうしても狙いが及び腰になる。
だが最低限フォネフスの行動を疎外することは出来た。この一撃で助かったものは確かにいたのだ。
「かーーあーーさーーまーーっっっお待たせ!」
アルビス推参だった。
◇・◇・◇・◇
「アル!」
当然ベアトリスはびっくりした。そりゃものすごく吃驚した。常に気にかけ、忘れたこともない我が子の一人。アルビスがいきなり空から飛んできたのだから。
急降下で着地の後、抱き付いてきたからなお吃驚。
「何者です?」
いったん横に飛び退ったフォネフスはあまり緊張感のない声で誰何する。
そのフォネフスにアルビスはマシンライフルを向けてめくら撃ちで一斉射。大した効果は期待していないただの威嚇だ。
だがフォネフスはさらに大きく間合いを取った。
もちろん当たらなかった。近場はなんと剣で切り落とされた。
「はて?」
その隙にナンナはアルビスたちをかばうような位置に進み出て詠唱を始める。それに誘われるようにコーマたちも呪文の詠唱を。
だがそれはフォネフスの思うつぼだった。
フォネフスはアルビスの魔法の連射性を嫌って距離をとったのだ。彼のイメージでは攻撃魔法が隙間なしに飛んでくるようなイメージが頭にあった。
つまり弾幕を張られる可能性に気が付いたというべきか。
『なんか躱すの大変そうなんだよな…』
いい勘をしている。
だがこの位置取りでは弾幕は張れない。ナンナたちが邪魔になる。それを見抜いたフォネフスは一気に間合いを詰めた。
「近づけば私のもんだしー、みんな切っちゃえばいいんだよねー」
危ない発想である。
しかしいくら発想が〝ピー〟だとしても彼の戦闘力は高い。あっというまに護衛の一人に近づき…
ドン!
バババババッ!!
「今度はどう?」
それはアルビスのショットライフルの一撃だった。
細かい弾丸がコーン状に広がる攻撃。
フォネフスは無数に飛来する細かい、そして信じられないほど高速の飛礫に後退を余儀なくされた。斜めに飛んでぎりぎり当たるコースの玉を巨大な剣を盾にしてはじく。
「うわ、これも駄目?」
アルビス吃驚。まさか近代兵器と剣で渡り合うやつがいるとは。
アルビスは追撃した。
ガシャコンという音がして続けてスバン! という発射音。距離が開けば散弾の高価範囲はそれだけ広がる。細かい銃弾がそこにあるものをえぐるズバババという破壊音が続く。
二度三度と。
(うん、やっぱりショットガンはポンプアクションだよね)
アルビスの趣味でした。というか男のロマン?
「ふっ、ふふふっ、ふふふふふっ。危ないじゃないか」
アルビスの連撃を受けて妙にうっそりと笑うフォネフスはもっと危ない感じだった。
というか何発かあたったようだが脛当てとかを利用してはじいたらしい。
次の瞬間彼の姿が霞んだ。
そしてアルビスの目の前に!
(うおおおっ、これぞ待っていたシチュ!)
アルビスは内心でほくそ笑んだ…のだが…
「そこまでだぜ」
フォネフスは空から降ってきたアーマデウスの攻撃を受けてアルビスへの攻撃を断念する。
「ほう」
「なかなか」
二人の剣聖はお互いの力量を見て楽しそうに笑った。
(ええーーーーっ)
その陰でアルビスはものすごく残念がっていた。
何で?
「なかなかやるな。俺は天位剣のアーマデウス・ルーヴェだ」
「これは楽しい、吾輩は金剛剣のフォネフス・リグルだ」
「剣聖二人かい、助かったよ」
「「かあさまー」」
剣聖二人がにらみ合う傍らでナンナがちょっと胸をなでおろし、その後ろではクロノから飛び降りてきたエドワードとディアーネがベアトリスに抱き付いている。
ちょっとカオスだ。
アルビスだけがなぜか不服そうにしているのだが…
だがいつまでもというわけにはいかない。
「あなたたちどうして!」
ベアトリスは感極まって双子を抱きしめ思いっきり頬ずりしている。目に涙が浮かんで本当にうれしそうだ。
それだけでは飽き足らずにアルビスに手を伸ばして抱き寄せている。
アルビスはここに至って自分たちがここにいることの理由が、というか状況が説明しずらいことに気が付いた。
(あかーん、なんも考えてなかったー)
慌てて飛び出してきただけなのだ。
しかも双子がいる。双子は正直者だ。まあ、子供はね、〝内緒は楽しいこと〟ぐらいにしか思ってないから。
「しょ…小神様の導きです。(たぶんそんな感じ)」
後半は聞き取れませんでした。
「まあ、ワンワン王様には感謝しかないわ」
(迷信深い世界万歳!)
アルビスは心の中で快哉を叫んだ。
双子が小首をかしげているけど、一度思い込みが形成されればあとは誤解が誤解を呼んで誤解の輪ができるに違いない。
それに後ろでは剣聖二人がバチバチやり合っているのでそれどころでもない。
頑張れアルビス、この難局(?)を何とか乗り切るのだ。
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まだ12月/アルビス7歳3か月/双子4歳11か月




