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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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02-43 謁見~男爵断罪~次は?

第43話 謁見~男爵断罪~次は?



 そこからは一気だった。


 時間的な余裕があったのは準備をするために、最初ダフニア男爵を少し待たせていた程度だ。


 ちなみにこの領内の男爵以上の貴族は辺境伯城に自分の部屋というか領域を与えられている。自分と家族、そして部下の準男爵やら騎士爵やらが生活できるスペースをだ。


 そしていよいよ男爵がレーンと謁見する運びとなる。


 その裏では男爵の部下で、一連のたくらみに加担した騎士爵や準男爵などが引っ立てられてきていて出待ちしている状態なのだが、こちらの取り調べは既に終わっている。

 取り調べは極めて順調だった。

 レアスビー準男爵以下、四名ほどの貴族が、体が少しずつ腐っていくという奇病に犯されていて、高価なポーションで命を長らえさせているような状況だったのだ。彼らの心は既に折れていてメンタルは限界だった。


 彼らはこの症状を『祟り』と考えていた。小神様を怒らせた罰だと。

 なので捕まった後はすべてを正直に白状した。中には殺してくれと懇願する者もいたが、このアルビスの魔法。生命属性の魔法だけあって全身が腐るくせに死ぬことができないという凶悪なオプション付きだった。

 アルビスよっぽど腹が立ったんだろうね。


 彼らは捕らえられると同時に自らの罪を告白し、懺悔しまくりで、〝神殿に頼んで祟りを解いてもらう〟と約束すれば涙を流して感謝するほどだった。


 彼ら自身も手は尽くしたのだが彼らの手の届く範囲には彼らを救う手段は存在しなかったのだ。


 実を言うとダフニア男爵にも『たすけてくれー』と泣きついたりはしていた。だが男爵はまともに取り合わなかった。自身の妄想に気を取られてそれどころではなかったのだ。

 自分はまさに栄光に手をかけているのだ。それ以外のことなど些事に等しい。

 アルビスに倒され戦死したものたちですら彼の心にかかることはなかったのだ。具合が悪いと泣き言をいうやつらのことなど気に留めるつもりすらなかった。どうせ大したことはないと考えたのだ。少し高価なポーションを買い与えてすべての義理を果たしたつもりだった。

 

 もし、彼が直接それらの人にあっていたならば、彼らの苦しみを肌で感じることができていればもう少しは危機感を持ったかもしれない。

 男爵は困窮する者たちを見捨てたことで、彼らに見捨てられることになった。


 男爵はそんなことはつゆほども知らずにまだ我が世の春に浮き立っていたのだ。


 そしてアルビスたちもこの時は城に来て見物してた。


『こんなイベント見逃してなるものか!』


 と、ちょっと不謹慎が入っていたが、全体としてはまじめだったからよし。


 以後はその時の様子である。




 謁見は他の貴族を交えず、少々私的な謁見に使われる小謁見の間にて行われた。


 呼ばれたのはダフニア・アポビータ男爵、そしてレーンの異母弟であるアグニア・タフォス子爵。異母妹に当たるコリ・スフィクトス子爵がそこにいた。


 タフォス子爵に関してはアポビータ男爵の後見役のような立場なので当然として受け止められたが、スフィクトス子爵はなぜ自分が?

 とかは思っていた。

 でも塩の鉱脈はスクードの一大事であるから立ち会うように。と言われれば納得するしかなかったし、そうなれば『まあ、晴れがましい席だからよいわよね』というぐらいの認識で着飾ってきていたりする。


  玉座にレーンが座り、両脇にブラホス将軍とマイア侍女長が立って、左右にタフォス子爵とスフィクトス子爵が側近とともに立つ感じだ。

 正面のアポビータ男爵は跪いている。


 アーマデウスやアルビスたちは舞台裏というか物陰で見ている。そして茶番が始まる。




「この栄えある日に敬愛する主君、レムニア・ティフォス・スクード閣下に謁見がかないましたことはこのダフニア、至上の喜びとするところであります。

 今回の経緯を…」


 まずダフニア男爵が挨拶から入り、コンラートから後事を託されたことを説明し、彼のために領地に乗り込んだ時にたまたま塩の鉱脈を見つけたのだと力説した。


「これも長年培った信頼関係によるもの。コンラート殿は後を託せるのは私しかないと思ってくれたのでしょう」


 白々しく涙をためて力説する貧相な男にアルビスは『うへーーーっ』という感想しか出なかった。ぶっちゃけ即死魔法を発動させるのを我慢するのが大変だ。

 あと、弟妹を押さえるのも。


 そしてこれに続きアグニア・タフォス子爵が『詳しく調査しましたが男爵の言に偽りはなく、彼の功績は疑いないものとかんがえます』と援護射撃。

 タフォス子爵は必要があるとも思われないのに朗々と歌うように言上を述べていちいちポーズをつける。


 同母姉であるスフィクトス子爵はそれを嬉しそうに見ていた。


 そんな二人をレーンが無念そうな、やりきれない顔で見ていたことなど気づきもせずに。


「では一つ一つ検証していこう」


 そうレーンが宣言し、男爵たちがちょっと『何のこと』と不思議に感じている所にベアトリスたちからレーンの所に送られた塩鉱脈の発見と、以後の計画、大事なので辺境伯家の主導で開発をしたい旨が記された手紙や、それに基づく計画書などが示され、その説明を求められたのだ。


 口をハクハクさせ、何を言うべきか考えあぐねる男爵。


「のう、ダフニア卿、塩の鉱脈の件は既にエレウテリア家から報告が来ていたのだ。しかも調査開発に関してスクード辺境伯家で行うと話が付いている。

 この書類はその証拠じゃ。

 そなたの話と随分違うな?

 説明するがよい」


 目を見開いてキョドる男爵。


「それに他にもそなたの話と食い違う話が聞こえてきておる」


 レーンが視線を送ると奥から数名の男が入ってくる。

 皆簡素な服を着せられ、うつむき加減に入って来た男たち。すべて男爵には旧知の顔で、男爵が共犯者と思っていたかつての部下たちだった。


 男爵は既にすべて露見していることを認識せざるを得なかった。

 怒りがこみあげてくる。

 仲間のはずなのに、ばれれば一蓮托生。厳罰に処せられるのに、裏切るとは…


 さらに担架に乗せられた微妙に腐った人の形をした何かが運ばれてくる。


「くっ、くさい…」


「あ…あにじゃ…ひどい…」


「?!」


 その言葉を聞いて男爵はそれが愛する弟である事を理解した、させられた。


「われらが…てんばつで…こんなに…」


 レアスビー準男爵はフルフルと震える手を伸ばす、その手は黒ずみ、ところどころ裂け、血を滴らせる。


 こんなものが生きていられるはずがない。


「天罰…

 そんなバカな…」


 騎士が男爵の手をとり、レアスビー準男爵の所にいざなう。

 白く黄色く濁った目。それに見つめられたとき…男爵の精神は限界を超えた…


「うわーーーーーっっ、うわっうわーっ。ありえない、こんなことあるはずがない。神なんでいない、いないんだ。天罰なんてない。

 エレウテリアを謀殺したってばれるはずがないんだ、こんなのおかしい、おかしいじゃないかーーーーーーーーーーーーーーーーっ」


 彼が口にしたのは自己弁護ではなく自己欺瞞だ。

 自分を納得させるための言葉の羅列。その中に自分の罪が散らばっている。


 レーンたちはしばらくそれをとどめることはせずに放置した。

 その内容を吟味しながら。

 彼が落ち着くまで。


◇・◇・◇・◇


 ダフニア男爵には族滅が言い渡された。

 男爵家は8歳以下の子供を除きすべて死罪。


 コンラートの暗殺。仲間を後ろから攻撃すること。これは最も重い罪の一つに数えられる。騎士道にもとるものとして。


 さらにお家乗っ取りのためにベアトリスや子供たちを暗殺しようとしたこと。


 塩の発見という功績を横取りしようとしたこと。


 騎士道的に許されない行為、人として許されない行為。被害的に容認できない行為。国法に照らして族滅となる。

 厳しいな。びっくりだ。


 例外は8歳以下の子供。

 これは死罪はあんまりだというので神殿預かりとなる。聖職者として一生生きるのなら見逃してもらえるらしい。


 そして男爵自身は縛り首を申し渡されたが家族には『格別の慈悲をもって杯が与えられる』って。

 つまり毒だな。

 苦しまなくて済むような毒。それで安楽死。


 じつを言うと男爵夫人はレーンの友人の一人であるらしい。まあ、領主と領地内の貴族の婦人たちだ。つながりはある。中には気易い間柄の女性もいるだろう。そういう一人。

 レーンは個人の感情としては助けてやりたかったのだが、法によれば他に選択肢はないのだった。

 それに夫を諫めるような事もしていなかったし、貴族の夫人として十分豊かな暮らしをしていた。悪事に加担していなかったとしても。

『盃』としたのは本当に慈悲だったのだろう。

 泣いて馬謖を斬るというやつだな。


 その流れを隠れて見ていてアルビスは今回の一件に幕が下りるのを感じた。

 それと同時に壇上の腐り行く人たちを見る。

 アルビス自身吃驚だったがこの状態はアルビスの魔法によってもたらされたものだった。


 アルビスの怒りが、憤りが、彼らの体にまとわりつき、常に肉体を崩壊させ続ける。その魔法は動力となる魔力を被術者から勝手に補充して機能しつづげる。

 そしてアルビスの怒りが強すぎたせいか、死ぬことも許されずに回復の効果ももたらされていく。

 これは魔法というより呪いだった。

 そしてその魔法を継続的に被術者に刻んだのが【誓約】の効果だった。


(さすがにこれはひどいか…)


 アルビスはさすがに〝やりすぎた?〟とか思わずにいられなかった。

 まあ、気が済んだともいう。


 なのでアルビスの意思を受けて魔法が分解する。

 呪いは解かれ苦しみは終わる。


「ああ…やっとつぐなえた…ゆる…された…」

「ありがたや…」

「もう、にどと…かみをうらぎりません…」

「ふう…」


 呪にむしばまれたいた四人は口々に後悔と悔悛を口にして…静かに眠りについた。

 それはその場にいた人にとっては厳かな瞬間だった。


 しかしまだ終わりではない。


「さて、では次はわが弟、アグニア・タフォス子爵の罪を明らかにせねばならぬ」


 レーンの声が小謁見の間に響いた。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 まだ12月/アルビス7歳3か月/双子4歳11か月



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