02-40 レーンの側近たち~そして詳らかになる犯罪
第40話 レーンの側近たち~そして詳らかになる犯罪
「あれ?
お風呂のお姉さんだ」
「あらっ、あの時のお兄ちゃん。
じゃないわ。おほん、そうか、君だったのか」
途中で言いなおした。
アルビスにあったときに地が出てしまったらしい。
部屋や調度が立派なのでその方が雰囲気は出る。
あの後、アーマデウスが急ぎまくってくれたおかげですぐさま辺境伯城に赴き、レーンこと、レムニア・ティフォス・スクード辺境伯との面会とあいなった。
謁見とかではなく面会だ。
場所も応接室みたいなものだろう。
この場にいるのは彼女の他にはアーマデウスと、ダルマみたいないかついひげを生やした爺さんとレーン様より少し若い感じの女性のみ。
鑑定は…とりあえずした。
※ ※ ※ ※
【名前】レムニア・ティフォス・スクード
【種族】人族
【性別】女
【年齢】36歳
【評価】辺境伯。美人。足怪我してる。苦労人。かわいそう。
【備考】重合剣士。愛称はレーンちゃんだよ。
※ ※ ※ ※
(これって鑑定なのかな?)
アルビスは自分の鑑定が微妙に信用できなくなってきた。いや、嘘とかではなく精霊たちの所見を聞くだけの能力のような気がする。
本人確認とかできるから役には立つのだが…
つまりレーン様であることはもはや疑いようがない。
ただ…
(かわいそうが分からないな)
※ ※ ※ ※
【名前】ブラホス将軍。
【種族】ドヴェルグ族
【性別】男
【年齢】58歳
【評価】偉い人、軍人。強い。怪力おじさん。
【備考】斧戦士、太い
※ ※ ※ ※
これはレムニアの隣に立つすごいひげのおっさんだ。将軍らしい。しかも強いらしい。58歳は人間なら老境だがドヴェルグならまだ若々しい。
若々しいといえばレムニアも36歳には見えないけど。ほとんど奇麗なお姉さん。
にしても備考の『太い』は何だ。体型か?
おまけに『将軍』って名前か?
※ ※ ※ ※
【名前】マイア侍女長
【種族】アールブ
【性別】女
【年齢】51歳
【評価】侍女長?。侍従長?。宰相?。レーンちゃんのたよりになるお姉ちゃん? お忙しいのよ。
【備考】甘いもの大好き。でも太らない。すごい。
※ ※ ※ ※
レムニアの腹心らしい。レムニアよりも若く見えるが結構上だ。なのでお姉ちゃん役。しかもかなり頼られているみたい。
やっぱりアールブは若く見える。
(甘いもの好きはストレスだな)
その可能性は高い。
彼らを鑑定するにあたってそれをすべきかどうか躊躇いはあった。
以前神殿で聞いた話、すべての人をいちいち鑑定していたら社会の健全性が揺らぎかねない。という話は確かにそうなのだと思う。
だが現状では甘いことは言っていられない。自分のみならず弟妹達の安全にも直結するのだ。
それに…
(僕の人物鑑定って知り合いに評判を聞く程度だしな)
分かるのは名前と精霊たちから見た人物評で、その人の秘密を暴いたり、能力を調べたりはできないから気にしなくてもいいような気になってくるアルビス。
問題は年齢か?
と、そんなわけでいまアルビスはレムニア・ティフォス・スクード閣下と会っているというわけだ。
「さて、詳しい話を聞きたいのだが、説明たのめるかね?」
営業用の口調らしい。
「わかりました、では順を追って説明します」
なのでアルビスもしゃっきりと喋る。アルビスの説明を聞いてそこにいた者たちは目を向いた。七歳の子供の説明としては堂に入りすぎていたからだ。
それに対してアルビスは、『僕は天才ですから』で乗り切ってしまった。
開き直りともいう。
アルビスの説明はオリハルコンが見つかったことから始まって、それを手に入れるためにコンラートが謀殺されたこと。
コンラート危篤の偽情報でベアトリス以下も誘拐、謀殺されそうになったこと、これはたぶん、オリハルコンの情報を取ろうとしたというのもある。
そこにエレウテリア家の騎士カフカが帰り着き、ダフニア男爵の陰謀が暴かれ、それと同時に彼らの攻撃を受けたこと。
その後小神様と呼ばれる存在の援護で散り散りに逃げたことなどが語られた。
アルビスがオリハルコンを作れること。
そして小神様が自分の変装だということは秘匿事項である。
「それで君は男爵軍より早く屋敷に戻り、持ちだせるものはすべて持ち出したというのだね」
「それはなかなかいい仕事でしたね。その所為でダフニア男爵は塩鉱脈の存在がすでにこちらに報告されていた事実を把握できなかったのだと思われますよ」
何のことやらという話なのだが、マイアの説明によると男爵はコンラートから領地のことを任されたあと、魔境を確認していたらたまたま塩を見つけたと報告してきたのだ。という話が聞けた。
男爵にしてみれば塩の存在は全く知らないことだったので本気で自身の幸運を喜んでいたのだ。
この国において塩は貴重なのだ。
宝石よりも金よりも貴重なのだ。
もし塩の鉱脈を国にもたらしたということになれば自分の主である辺境伯とすら肩を並べ得る。いや、下手をしたらそれ以上の出世も。
おそらくこの時点で彼の頭は薔薇色の妄想に侵食されてしまったのだろう。
だから墓穴を掘った。
なぜなら辺境伯は塩の発見者がコンラートであることを知っているのだから。
「状況は把握されましたね。
してみれば証拠は最初からこちらの手にありました。
塩の件だけでもダフニア男爵の話の齟齬をつくことは出来ます」
男爵は塩の発見を自分のものにするためにかなり盛った報告をしていたらしい。
あくまでも自分が見つけた、偶然だった。自分の功績である。と主張するために。
「ですがそれだけではコンラート卿の謀殺が証明できません。
アルビス君とベアトリス夫人が証人に立ってもちょっと弱いかと…」
「虚偽の報告で塩の利権を奪おうとしたのだ、現実にお家の乗っ取りも目に見えた罪だ。それだけでも極刑はまぬかれんじゃろう。
だが同胞の謀殺というのは騎士としてあるまじき行為。
これが明確にできんでは片手落ちじゃよ」
将軍が言っているのは騎士の規範の問題で、彼の価値観ではこちらの方が問題になるらしい。
〝神殿はどうした〟というかもしれないがあれは個別の犯罪の詳細が分かるわけではないのだ。
となると証拠を集めてということになるのだが…
「子爵がかばう可能性がありますな」
と将軍が言う。アルビスは当然なんのこっちゃである。
「子爵ですか?」
「うむ、実はわらわの弟でな…アグニア・タフォス子爵のことだ…
今回の話ではダフニア男爵の後ろだてのような事をやっているらしい…
わらわの怪我のせいで…いろいろとあってな…」
「「「・・・・・・」」」
「だがこのざまではこれ以上は放置できん…残念だよ」
アルビスは当然に気になったがここら辺の内情までは教えてもらえなかった。
これは仕方ないところだろう。
ただこちらもちゃんとやったことに見合った罰は与えると約束はしてくれた。
(まあ、そんなものか。いくら何でも7歳の、初めて会った子供にお家の事情まで説明したらそっちの方が怪しいもんな)
さて、そのうえでどうやって証拠を集めるかという話を四人がしている。
ああ、四人目はアーマデウス君だ。
「だったら、男爵の旗下の準男爵とか騎士爵とか捕まえればいいと思うよ。
男爵の部下はほとんど参加していたし、
小神様の攻撃で泣きわめいて許しを乞うていた人もかなりいたから少し締め上げればすぐにゲ…証言するんじゃないかな?」
ゲロとか言いそうになったよ。
「特に一番前に出ていたのが、ダフニア男爵の弟のレアスビー準男爵だったから、こいつは捕まえないとだめ」
ふむとみんなかんがえる。
「でしたら塩鉱山の開発の打ち合わせということでダフニア男爵を呼び出しましょう。
その間に将軍に動いてもらってあの地方の準男爵、騎士爵の身柄を確保。証言を得ましょう。
今は冬ごもりの時期です。こちらが早急に動くとは思っていないでしょう」
「うむ、近衛騎士を使えば問題はあるまい、ここの治安騎士隊は子爵殿のおかげで随分タガが緩んでいるから信用できん」
「まあ、そうだな。全体としてはまともに動いといるように見受けられるが、腐った果実が少し混ざるだけで組織としてはまともに動かん。
となるとやはり近衛騎士か…
手が足りんな…少々派手にやらねばならんか…」
レーンがぼそりとつぶやいた。
ちょっと怖いのだけど。
「その間の近衛の仕事は…」
「私が直接やりますよ。これ以上仕事が増えるとか、ぞっとしますけど…」
アーマデウスが肩をすくめた。だが何とか話はまとまりそうであった。
「さて、じゃあ話も決まったみたいだから僕は帰りますね」
「「「え!?」」」
アルビスにしてみれは当然の提案だ。かわいい弟妹を待たせているのだ。
しかもすでに夕方に差し掛かろうという時間になる。
大人たちは『何を言っているんだこの子は?』という顔でアルビスを見た。
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12月/アルビス7歳3か月/双子4歳11か月




