02-35 お家の完成~生活向上~動き出すあれこれ
第35話 お家の完成~生活向上~動き出すあれこれ
モブさんたちは賞金首としてお金に変身しましたとさ…と行きたいところだったがそうは問屋が卸さなかった。急遽予定を変更せざるを得なかったのだ。
まあ、今回はやつらを賞金に変えないといけない理由はないからアルビスも大して気にしていなかったけど。
その原因は雪。
そう、季節は10月。そろそろ雪の季節である。
「いけない、このままではいきなり寒くなってしまう」
秋は短く冬はあっという間にやってくる。
魔境にも雪は降り、降り始めればあっという間に積もる。
魔境は魔力的な乱れがあって雪の中に常春の草原とかがあるのだが、全体としては冬なのは変わらない。
冬がめっちゃ寒いのがこの地方だ。
アルビスは賞金を放棄して秘密基地の制作に注力せざるを得なかったのだ。ボールハウスもよいがあれは暖房設備が貧弱だった。というか作ったのが温かくなってからなので考えてなかった。
なのでしっかりとした暖房設備を持った住処が必要になるのだ。
そしてこれがなかなかに大変だった。
生活の細々したことに関してアルビス以外のメンバーはほとんど役立たずだったから。
カナリアなどできることがなくて肩身が狭くなるほど落ち込んでいた。
まあ、料理関係もすべて魔法ありきでやってきたから普通の設備がないせいもある。
そんなわけでならず者たちは役に立ちそうなものをはぎ取られ、土ボコで地面の下に葬られることになった。
ただ装備品も結構いいものなので賞金なんか目じゃなかったというのはある。
そして秘密基地の制作は急ピッチで進んだ。
築城で岩の中をくり抜き、崩れた砂は収納で除去。壁などは変成で強固な、そして整ったものに変え、さらに壁を気泡状にして保温性を高めた。
ちょっと手間はかかったが急ぎまくった。
ここら辺は知恵の円環のサポート、さらにはケリュケイオンによる錬金術のブーストのおかげと言えるだろう。
石をいったん崩して砂に変えて、その後変成で好きな形の石にできるというのはものすごく便利だった。
アルビスは感覚が日本的なのでいくつかの部屋を作るつもりでいたのだが、カナリアの助言で大きな一つの部屋に仕切りを設ける形にした。
ドーム状の大部屋をつくり、仕切りで寝室、居間、台所、と区切ったのだ。
これは暖房の効率化のためである。
「暖炉はいくつも作れませんよね、でしたら部屋をまとめないと…」
という助言があったのだ。
これは尤も。
そして暖房。アルビスは暖炉ではなくペチカを作ることにした。
ロシア式の暖炉である。
暖炉というのは実は熱効率があまりよくないのだ。
なぜならあったまった空気が煙突を通って外に逃げてしまうからだ。
そして直接火を燃やし、それが室内に解放されているので空気が常に汚れる。
寝るときは火を消さないといけないし、薪の消費も激しくなる。
そして温まるのは暖炉の前がメイン。
だから暖炉の周辺に家族が集まることになるのだ。
昔の絵画で若い女の人がスカートをまくり上げてお尻をあぶる姿を描いたものまであるぐらいだ。
なのでペチカ。
読んだ本を思い出して少しずつ実験しながら実用性を検証していく。
ペチカの特徴は室内に開放されていない構造であること。つまり密閉されていて室内の空気を汚さないのだ。
なので24時間つけっぱなしにできる。
口を開けるのは薪の補充の時ぐらいだ。
そして空気の取入れが煙突になるので酸素の供給が絞られ、薪が一気に燃えることがなく燃焼が抑えられ、薪が長持ちする。
煙突の構造は特徴的で、壁の中をつづら折りで伸びている。
つまり熱が煙突を通るうちに壁全体を温め、壁が暖房器具として機能するわけだ。
なので寒い中、閉じこもるには最高の暖房器具である。
薪を燃やす場所の直上に鉄板をしいてそこに熱が出るような構造を作れば調理に使えるのでこれは採用された。
何度かの作り直しののちに何とか完成。じわじわと室内が暖まり、熱すぎるときは空気を入れ替える。
他にも床には木の板が敷き詰められた。石は冷たいからね。
水は前の秘密基地と同じように崖の上の川から直接管で引き込まれ、トイレとお風呂に利用されるかけ流しにした。
水洗トイレ完備である。
飲み水は創水で作ってタンクに保存する形にした。最も引き込んだ水も飲み水として使えるぐらいきれいではある。これは鑑定で確認したからOKなのだが、普段の飲み水はいいものを使いたかった。
結果、なかなか自慢の家になった。
アルくんご満悦。
「というわけでトイレにはビデを付けました」
「「「おおーーーーっ」」」
洋式トイレみたいな形をした水場だ。
用を足した後おしりなどを洗うための設備である。
昔はあったというのを本で読んだことがあった。
もちろんここも流れっぱなしで水が常に一定量溜まっていて、そのうえで流れ続けているので常に水はきれい。
洋式トイレみたいに腰かけてお尻とかきれいに洗って、その後はタオルで水けを拭き取ればいい。
この世界のトイレはぼっとんなので、しかもおしりを拭くのは葉っぱなのでこの方がはるかに清潔。
双子は既にこのタイプのトイレになれているが、カナリアは初めてだったのですさまじく感動した。していた。
さらに今回は魔道具の導入が可能になった。
町の工房で照明の魔道具などを観察できたからだ。
魔法陣という基盤をミスリル合金で形作り、そこに魔石をはめ込むと魔道具は起動する。
いままでのようなランタン型ではなく天井に設置した魔道具だ。
すると魔石の取り外しが難しくなるので魔法陣の一部、魔力の流入ラインを壁まで伸ばしてレバー式のスイッチにしてみた。
こういうのは思いつくのが一番難しく、知識があれば再現は難しくないのだとアルビスは気が付いた。つまり知識チートというやつだ。
結果部屋の入り口でレバーをガチャコンと動かせば天井から煌々と光が降りそそぐ。ランタンよりも明るいね。
換気、採光のために窓も作ったし、強制てきに空気の入れ替えをするための換気扇も作った。ぐるぐる回る魔法陣は利用価値が高い。
こうして家が完成した。
アルくん大満足。
だったのだが。
「ベッドがよくない」
「え!?」
「「え?」」
びっくりしたのがカナリアでただ疑問の声を上げたのは双子だ。
双子はたっぷりの布に包まれたベッドで寝ているので、これでダメなの? という疑問だったが、カナリアは今まであまりよいベッドは使ったことがなくて、アルビスたちのたくさんの布や毛皮で寝るのはとてもいいと思っていたのだ。
なのでこれでダメと言われると想像もつかなかった。
ちなみに現在は部屋に木箱というか木の枠を入れて、そこに草を詰め、その上に敷布をかけて寝ている。
全体的にみると贅沢な寝具なのだが地球での記憶が鮮明なアルビスにはこれはかなりきつい。
アルビスはこれも改善しようと考えた。
確かにアルビスは自重をやめているな。方向性がちょっと想像と違うけど。
「ということで、ウォーターベッドを作ります」
「「「おおーっ」」」
ぱちぱちぱち。
分かってないけどね。
部屋においてある木の枠はクイーンサイズぐらいだ。
深さは20センチほど。
この枠に収まるように袋を作る。
素材はカエル皮だ。完全防水である。
これも錬金術で皮同士を融合させて一つの継ぎ目のないものに変える。
「うん、本当に錬金術便利」
特に変成が使えるようになってからいろいろなものが作れる。
高さ20センチの箱に収まるマットレス型の袋ができたら創水で中に水を入れれば完成…
「わーいわーい」
「ポヨンポヨンなのー」
しませんでした。
「これはあれだな、中に柱を配置して変形する範囲を制限しないといけないんだな」
そういうことだ。
ただ水の入った風船では変形しすぎてベッドとしては役に立たない。
なので作り直し。
上の皮と下の皮をつなぐ支柱を細かく配置してそのうえで水をぱんぱんに入れる。
こうすると変形が抑えられてよい寝心地になる。カエルの革は丈夫で水をどのぐらい入れるかで硬さの調節もできる。干し草ベッドよりははるかに寝心地がいい。
上面には柔らかい毛並みの皮を融合させて完成とした。
寒い夜は中の水を温めてやるとほんのりあったかく眠れる優れもの。
カナリアを含めた四人で布団にもぐればみんなハッピー、素晴らしい。
昼間はみんなで雪遊びをしたり、ついでに狩りをしたり、室内では魔法を駆使してものづくりをして鍋や包丁など小物作りも楽しい毎日。
そうして気が付けばいつの間にか12月になっていた。
周囲は一面の銀世界。
そして偶に顔を出す冒険者ギルド。
冬の間は薬草採取の規模が縮小されるけど無いわけではないし、雪かきのような依頼はたくさんある。雪の魔境には雪の時期に出てくる魔物もいてギルドは相変わらず活況を呈していた。
というか自分の懐が寒いからギルドでたむろしてせめて温まろうというやつまでいてかえって混んでる。
お肉を卸し、清算カウンターに着たら…
「あっ、きみ、アルビス君だろ? 尋ね人のレーンさんの使いの人という方から連絡がありましたよ」
「え? 本当ですか?」
事態が動き出した。
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10月/アルビス7歳1か月/双子4歳9か月
12月/アルビス7歳3か月/双子4歳11か月




