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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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02-34 カナリアの初陣~素敵(凶悪)な新装備

第34話 カナリアの初陣~素敵(凶悪)な新装備



 ならず者は今度は六人組だった。


 全員がガラの悪い男たちだ。

 まあ、太ったのや背の高いのやいろいろではあるが。


「まあ、そう警戒すんなよ、俺たちは助けてやったんだぜ? あー、ちょっと間違ったか? だが俺たちの実力は分かっただろ?」

「お前最近ギルドで噂になってた収納魔法が使えるガキだろ? 危ないんだよな、そういうの、俺たちのチームに入れよ、俺たちが護ってやるからよ」

「持ちつ持たれつっていうじゃんかよ。な?」


 とか言っているが本人たちは強制しているわけだ。

 最初の攻撃は『いうこと聞かないとこうなるぞ』という脅しに他ならない。


 それを黙ってみているアルビス…のように見えてクロノとやり取りをしていた。


『判定が出たであります。

 明確な害意と敵対行動が確認されたであります。

 ならず者たちは敵性体として認定されたであります。

 殲滅して問題ないでありますよ。

 また、犯罪履歴も確認されたであります。賞金首として処理しても問題ないであります』


 これがアルビスが見つけたウザがらみしてくる相手にたいする対処法だった。

 ただの勧誘で相手を殺していては自分が犯罪者になってしまう。

 だが相手が先に敵対してきたのであれば話は別。

 また、相手が明確な害意を持っていれば話は別。

 相手が討伐されるレベルの犯罪歴を持っていれば話は別。


 クロノに確認してもらえば怖いものなし。


「カナ、神様がそいつらは始末してしまっていいって、許可が出たからやっちゃえ。

 エドとアーネはモップの護衛ね」


「はい」

「「はいなの」」


「おいおい、御挨拶だな」


 そう言いながら戦闘の男は腰の剣を抜く、長剣ではなく短剣なところが凶悪だ。

 その男にカナリアが切りかかる。

 小柄なカナリアはほとんど盾の陰になっていて、見えないのだが、動きから切りかかってくることは見て取れた。


「まあ、いい、そっちが切りかかってきたんだ、ぶちのめして連れていっても文句は出ねえ。

 ガキどもは奴隷だ。

 女はくたばるまでヤリたおしてやるぜあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 台詞は途中で絶叫に変わった。

 男はカナリアの攻撃を自慢の手甲で受けてはじき、態勢を崩したところを…と考えていたのだ。


 男の狙い通り、カナリアの武器は上段から振り下ろされ、男の手甲に。しかしその直前に。


 ギュアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン


 という鋭く、しかしかすかな音が響き、カナリアの武器は手甲を削り、切り裂き、男の手を切り落としてしまった。


 カナリアの右手に握られていたのは片手で振り回せるスマートなチェーンソーだったのだ。


『なかなか凶悪な武器であります』


「いいでしょ」


 そう、これがアルビスが作ったd‐oss…といっていいのかわからないが…まあ、魔動武器ではあるものだ。

 盾もそういえないこともない。あれは構造自体が力場を作り出すもので。魔力場が使用者つまりカナリアの意思に反応して動く性質がある。構造の妙だろう。


 一方で武器の方は完全な魔導機械といっていいものだ。


 チェーンの刃渡りは50センチほど。魔道具なので機関部はスマートにできていて、全体としては幅広の剣のようなシルエットを持っている。


 ミスリルで作った軽い板の周りをチェーンが取り巻き、機関部に取り付けられた円盤が、強力な回転を作り出してそれを回す。ただ回転を生み出す魔法陣はかなり強力なものがあるのだ。

 例えば城の巨大な門を動かすような装置にも使われていて、この魔法陣はかなり研究されている。


 だから一番苦労したのはやはりチェーンだったろう。


 純金を分解し、オリハルコンとして再構築する。そこに変成と練成を合わせて一つ一つのパーツをくみ上げていくのだ。かなりの手間だった。

 そしてパーツの形も問題で、効率よく対象を削り、切らないといけないので何度も何度も形を変えてテストをしつつ構造を決め。

 よく対象の崩壊を促進する魔法陣を一つ一つに刻みこんだ。


 気の遠くなるような作業だった。普通の人になら。

 だが趣味人というのはこういう作業を嬉々として行うのだから始末が悪かったりする。


 そこに地球のチェーンソーの知識も持ちこんで、グリップの先に充電池ならぬ取り外しの利く魔石ボックスを取り付け、瞬時に回転をブーストできるようにもした。

 もちろんスイッチはグリップについたトリガーだ。


 男の手甲はミスリルで出来た自慢の品だった。

 魔物の攻撃はもちろん、人間の使うd‐ossの攻撃さえ防ぎきる一品。男は当然カナリアの攻撃など意に介していなかったのだ。


 軽くはじいて見せよう。そして体勢を崩したら右手の剣で少しずつ傷つけ、意思を挫いて嬲りものにするのだ。内心で…はもちろん現実でも笑いが止まらない感じだった。


 だが男の妄想は激痛によって遮られた。


 オリハルコンエッジを持つチェーンソーは、無敵とすら思っていたミスリルの手甲を軽々とかみ砕き、右腕ごと砕き、引き裂き、切り落としてしまった。


 普通の剣と違って腕を削り切られたのだ、その激痛はすさまじく、男は絶叫を上げ、短剣を落としてうずくまる。

 そこに容赦のない追撃。


 肩口に振り下ろされたチェーンソーは鎧を粉砕し、頸動脈を切り裂き、肉を引きちぎり、骨を砕いて走り抜けた。致命傷である。


 男、つまりならず者のリーダーはこの町ではそれなりに畏れられていた実力派ではあったが、真価を見せるどころか名前を名乗ることも許されずにこの世から退場することになった。


「やた、アルさま、やりました」


「うん、上出来」


 見つめ合って頷きあうアルビスとカナリア。


 アルビスはもう敵には容赦しないと固く心に決めていたので、その男の死にも心を動かさなかった。


 だけどちょっと引く。カナリアの忠誠心に。

 カナリアが考えていたのはアルビスのために、それだけで、その思いの前には、男が一人ひき肉になったぐらいの出来事は些事だった。

 そう言うのはちょっと怖い感じ?


 だがならず者たちも即座に動いた。自失は一瞬だけだったろう。


 慌てて逃げるような根性なしは一人もいなかったのだ。

 彼らはばらばらに逃げるより、全員で敵を倒してしまう方が生存率が高いことを理解していた。

 一斉に武器を抜いてカナリアに襲い掛かる。


 四方から攻撃すれば…だがそううまくはいかなかった。


 動けたのは二人だけ。

 残った五人のうち三人が…こけた。

 隠者の手で足を払われたからだ。


(無属性最強伝説?)


 かどうかはわからないが、見えない、触れない力場による干渉は、戦場においてこれほど便利なものはない。


 三人が転んだことによってカナリアは二人のならず者と対峙することになった。

 もちろんアルビスがカナリアの訓練のために仕組んだのだ。

 経験を積ませようと。


 はっきり言って、二対一でもカナリアは強かった。

 一人の男は盾を持っていたが、その盾もチェーンソーの前では役に立たなかった。簡単に引き裂かれる。

 盾と言うのは腕に固定されているもので、飛びのこうとしたがチェーンに引き込まれてそれはかなわない。

 引き寄せられて削られる恐怖。


 もう一人が反対側から攻撃をしかけてくるのを盾ではじく。

 戦斧による一撃だったがカナリアの盾はこれをはじいた。

 しかもメッシュなのでカナリアの側からは敵が見えるというおまけつき。


 その間に盾の男の命運が尽きた。


 チェーンソーの凶悪さにはさらに奥があったのだ。

 砕かれ、破片となった金属の破片はいったんチェーンソーによって引き込まれ、飛び散らないようにつけられたカバーの中で加速して、そのまま回転して今度は外に送り出される。

 しかもこのチェーン、一度起動するとかなりの熱量を帯びるようになっていた。

 加熱され、燃え上がるデブリが盾の男の顔を襲った。

 荒いサンドブラストで頭部を削られるようなものだ。ひとたまりもなかった。


 盾の男を切り捨てたカナリアは即座に向き直り、盾を前に、チェーンソーを後ろに構えて斧の男に対峙する。


 それを見てアルビスはほっと息をつく。

 もちろん危ないようなら助けるつもりであったがカナリアは二対一の攻撃を受け切った。そして今は一対一。こうなるとカナリアが有利だった。

 なぜなら相手の攻撃はカナリアの盾ではじかれ、カナリアの攻撃はかわす以外に方法がないのだ。盾や鎧が何の役にも立たないことは既に証明されている。


「畜生、お前ら何やってんだ援護しろ!」


 盾の男は当然のように仲間に援護を求める。

 ちらりと一瞥をくれて、本当に一瞬だけのつもりで、でもその目はくぎ付けになった。


 レモンイエローに輝く槍を持った子供が仲間たちの首を撥ねていたから。


「あっ、なんでこんな…」


 それは後悔だったろうか、それとも現実逃避だったろうか。

 動きの止まった男の胸に、カナリアのチェーンソーが突きこまれる。

 それは胸を守る分厚い胸当てをかみ砕き、やすやすと肉体に至ってそのまま肉体をも粉砕した。

 男が感じたのは自分の心臓がずたずたに引き裂かれる感触だった。


 アルビスを奴隷にしようとした六人のならず者はこうしてこの世から退場することになった。

 アルビスたちは彼らの名前すら知らない。気にもならない。

 モブの運命だった。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


10月/アルビス7歳1か月/双子4歳9か月



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