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アルビス 自由なる魔法使い  作者: ぼん@ぼおやっじ


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02-29 石化魔法~武神殿~神罰

第29話 石化魔法~武神殿~神罰



 額にある魔力点の覚醒。それは魔識覚の完成形だろう。


 人間の目はごく限られた範囲の電磁波《可視光線》で外界を見ているわけだけど、魔力による外界認識がそれだ。

 魔識覚はレーダーのように魔力を放出してその反響で周囲のデーターを収集。それを意識上でイメージとして組み立てていたのだが、これは…


「すごい、魔力で直接見える感じだ」


 とにかく使いやすくなった。


「よし、ならば行こう!」


 元素変換とアルビスは言ったが、もっと平たく言うと石化だ。


 いきなり思いついたわけではない。

 変成の可能性に気が付いて、それがどこまで広がるか、それが気になったのだ。

 そんで『石化魔法とか使ってみたいなー』と思ったのである。


 思いつきで暴走してるなお前。


 さて、というわけで今回のテーマは生体を別の物質に変換できるか。

 アルビスの放った魔法が男に襲い掛かり、細胞の一つ一つを再構築していく。


「あれ? 意外とすんなり?」


 分解と再構築にとどまらず、元素変換まで行くつもりだったのですんなり石化が進んだことにアルビスはびっくりした。


『石化魔法というのは昔からある魔法でありますからな』


 必要なのは細胞レベルで再構築を起こすという概念。それがあれば理にのっとって石化魔法は発動する。

 人間は使えなくなってしまった魔法だが、その理屈は石化の能力を持つ魔物たちがいまだに実行し続けている。

 世界はこの魔法を覚えているのだ。


「ぎやーーーーーーーーーーっ、なんだ、なんだこれ…俺の手が…てがーーーーーーーーーーーっ」


 男が自分の手の違和感に気が付き、そして絶叫した。彼の手は指先から白く変色し、固まって動かなくなっていく。無理に動かそうとすると〝ぴしり〟とひびが入って欠けたりする。これは恐怖だった。

 そしてさらにしびれるような痛みが少しずつ上に登ってきて、逆に感覚がなくなっていく。これも恐ろしい。


「うっ!」


 しかしアルビスは途中で石化魔法を停止した。魔力がかなりのスピードで減っていったのが分かったからだ。

 魔力ヤバイじゃん。とか思うアルビスだったがこれは魔法抵抗によるものだった。


 魔法に対する抵抗力というのはすべての生き物がもっている。外部から魔力による干渉を受けたときに自身を守る形で機能する魔法的な防衛機能。

 石化もこの魔法抵抗力を突破しないと実現しなかったりする。生命体はただの物質ものと違いこの抵抗力が強くてそこに多くの魔力が消費された結果だった。


 もっともっと能力が上がればできるようになる感触はあるが、現状では無理だろうとかんがえる。

 それでも…


「ひひひっ、へへへっ、ふはははっ」


 男は尻もちをついていた。石の部分は結構脆いようで、埋まっていた足が石になった結果、ぽっきり折れてしまっていたのだ。断絶面は白い塊。

 そして手はわななくような形で肘まで固まっている。


 男はその事実に耐えられなかったようでへらへらと笑い続けていた。


「うーん、でも、これって突き詰めると本気で鉛を金に変えたりとかできるかも?」


 アルビス君、またとんでもないこと考えてます。自重してください。


「まっ、いいや。サクッと終わらそう」


 アルビスはもう一度武器をケラウノスに切り替えて男の首を落とした。

 そして二つの首を空間収納(インベントリ)にしまって、残った体に…


「滅べ!」


 と命じる。


 今度の魔法は純粋な分解。極限まで物質を分解する魔法。

 二つの首なし死体は淡く輝きながら空気に溶けるように消えてしまった。残ったのは金属製のパーツのみ。これも『変成』の一側面だ。


「よし、お~しまい」


 七歳の子供が元気に声を上げて…いるのだが、残ったならず者の連れてきた二人はへたり込んでおもらししてました。

 無理もない。


◇・◇・◇・◇


「さて、今日は町に逆戻りだなあ…」


 というわけで、やってきました武神殿。


 この世界で主に信仰される七柱の神様の一人で、戦いと武術の神様である〝武神〟を奉った神殿だ。

 別にこの国で武神がメインに信仰されているというわけではないのだが、辺境などの戦いが身近な地域や、騎士などの戦闘職の人には武神の人気は高い。

 このアイゼンの町にも立派な武神神殿が建っていた。


 さて、なぜ武神神殿にやってきたかというと…


「人さらいの人殺しを討伐したので確認をお願いしまーす」


 というわけだ。


 この世界、鑑定の能力があるのはアルビスでもわかると思うが、他にも鑑定のような能力を持つものがいる。それが神の僕。つまり神殿などで神に仕える神官たちだ。

 アルビスのものとは違うのだろうけど、人物鑑定持ちの神官にかかれば、その人の犯罪歴とかが分かるということになる。

 これは有名な話。親が悪い子を叱るときに持ちだす定番の脅し文句の一つだ。


 そして明確な犯罪者はここに首を持ってくると鑑定してその罪を明らかにしてくれるのだ。

 まあ、そのまま捨ててしまってもいいような気がするのだが、今回は被害者が他にいるのでその処理もあってアルビスは神殿に首を持ち込んだ。


 軽く話を聞いた結果そうするべきと判断したのだ。


 さて、神官の人は神殿を訪れた奇妙な五人組に驚いた。

 子供が三人。その後ろにだぶだぶのローブをかぶった少女とぼろぼろの少年。

 で子供が前に出てきて討伐の報告というのだ。

 これで驚くなって方が無理だよね。


 なのでその神官はちょっと信じられなかった。

 生首とか出せばまた話は違ったんだろうけど、ここは神殿の一般の信者さんがお参りに来るところだ。

 さすがにそれはまずいと思ったのでアルビスも首は収納したままだった。


「子供がそんなくだらない冗談を言うんじゃない。馬鹿にしているのか!」


 まあ、ありうる反応ではあるのだが、神官だからね、しかもルールがあるのだから、ちゃんと話を聞かないとまずかったのだ。


 それでもアルビスは根気よく、本当のことだと言って、鑑定をしてもらおうとしたのだけど、その神官はからかわれていると決めつけてしまった。そして神殿の衛兵を呼んでアルビスたちをつまみだそうとした。

 これがまずかった。


『仕方ないでありますな。吾輩の権限で審判を申請するであります』


 クロノがそう言うと、まあ、聞こえているのはアルビスだけなんだけど、空から光が降ってくる。

 その神官の上に。


「ぎぃやあぁぁぁーーーーーーーーーっ」


 そして神官が悲鳴を上げた。


 目を押さえてのたうち回る神官の男。

 衛兵もギョッとして動きが止まった。

 その悲鳴を聞いて奥から神官が飛び出してくる。


 出てきた神官は三人で、うち一人は偉い人だった。


「これは何の騒ぎだ!」


 と声を荒げたのは、その偉い神官ではなくおつきの神官だ。

 偉い方の神官の名前はビクトリアという女の人で、年配の人だった。彼女は怒鳴った神官をたしなめて状況を調べようとする。


 彼女の前では神官の一人がのたうち回っていて、しかもその神官の周りから神の気配が感じられた。

 彼女は長らく神官を続けていたのでこのような場面は以前にも見たことがあった。


「これは神罰?」


 そして目を転じると神殿に仕える兵士――まあ、神官戦士というのだが、まだ神殿に入ったばかりの下っ端が五人の子供(彼女から見れば五人とも子供だね)を羽交い絞めにしたりして険しい顔をしている。

 さすが高位の神官だけあって、この時点でビクトリカには大体のことが把握できてしまった。


「何をしている、ライルを奥にお連れせよ、その子供たちはつまみ出せ」


 最初からいた神官が、偉い人に恐れをなして事態の収拾に走ろうとする。

 彼はライルと呼ばれた神官が病気か何かで倒れたと考えたのだ。

 すぐに神官戦士が動こうとする。


「「「ははっ」」」


 と、そこで。


「やめなさい、愚か者!!」


 神殿をビクトリカの声が打った。

 それは怒鳴り声というには静かな声だったがその場にいた誰もが動きを止めた。

 床を転げ回っているライルと呼ばれた神官までびくりと止まった。


 アルビスは別。


「まず衛兵は子供たちを離しなさい、そして、謝罪をして控えなさい」


「は? いや、その…」


「従わないのなら破門します、すぐにここから去りなさい」


 その静かな声にはかなりの圧迫感があった。

 神官戦士たちはがくがく震えながらアルビスたちを解放する。

 ただエドワードを抱えていた衛兵が震えから彼を落としてしまった。


 アルビスは即座に神官をぶっ飛ばしてエドを受け止めようとしたのだが、それよりも早くビクトリカの操る風がふんわりと受け止める。


(ふーん、なかなかやるなあ)


 なんて思うアルビス。


「ビクトリカ様…その、ライルが…」


 最初の怒鳴り声を上げた神官が倒れた神官の保護を訴えたのだが。


「おまえは修業が足りないようね。位を下げます。もう一度修業をやり直しなさい」


「そんな」と愕然とする。

 今までこんなことは一度だってなかったのだ。

 理由わけが分からない。


 だがビクトリカの次の言葉で事態が深刻なのが、みんな理解できた。


「ライル、あなた、神罰を受けたわね。手をどけて目を見せてごらん」


 その言葉に神官たちはぎょっとした。

 そしてビクトリカの言葉通り手をどけたライル神官をみて言葉を失った。

 彼の眼は真っ白に濁り、そこには瞳孔がなく、真っ赤ななにがしかの文字のような物が浮かんでいたのだ。


「し…神官長様…私は…私はどうしたのですか? なにも、何も見えません…」


「あなたは神との聖約を破った。神官としてせねばならないことをしなかった。義務を放棄した。

 見るべきものを見ないのなら必要あるまいと目を取り上げられたのよ…」


 そしてビクトリカはアルビスたちに向き直る。


「坊やたちごめんなさいね、この子は神官としてやってはいけないことをやってしまったの、そのために罰を受けました。

 代わりにわたくしが神官の義務を果たすわ。

 奥にいらっしゃい、そこで話を聞きます」


 さらについて来た神官に話しかける。


「ライルは自室に戻しなさい、神に許しを頂くために何をするべきか、一緒に考えましょう。

 それと副神官長を呼んできて頂戴。

 事の処理は私たちがやります。

 あなたたちは本来の職務に戻りなさい。

 事情が分かったら説明しますから今は何も考えずに、神官として、神の僕として、ただ為すべきを為しなさい。

 今ここには神の目が向いていると思いなさい。いいわね」


 てきぱきと事態を収拾する初老の夫人を見ながらアルビスは、『実際に神罰なんてあるんかい!』とちょっと本気でびっくりしていた。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


9月/アルビス7歳/双子4歳8か月



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