02-28 変態外道~俺Tueeeeeeeee?
第28話 変態外道~俺Tueeeeeeeee?
「おにちゃま、お肉はうらないの?」
「にいしゃま、お肉はうらなくていいとおもうのよ」
「うーん、いっぱいあるから売っても大丈夫だと思うんだけどね、でも子供はお肉を売るのはダメなんだって」
これは冒険者ギルドの…まあ、慣習のようなものらしい。
一応七歳から登録できる冒険者なのだが、七歳は本当に最低線というか、生活の糧を求める子供のために解放されているもので、このレベルの子供の仕事としては街中の雑用や、他の冒険者のお手伝い。薬草採取などの危険の少ないものが想定されている。
たまに手に入った肉を売るぐらいのことは許されるのだが、いや、別に禁止されているわけではないのだが、やはり狩猟は危険を伴う。子供がそれをするのは推奨されてないし、買取の際にも注意が払われる。
という慣習のあるところに現在の冒険者ギルドだ。
しゃくし定規に『子供が肉を売るのは不可』ということになってしまっているのだ。
まあ、裏ルートというか、肉を治める代わりに食堂のご飯が無料になるシステムがあるので問題ないのではある。
そう言うわけで『子供が危険な狩りに身を投じたりしないように』という気遣いから始まって、正しく運用されなくなった慣習のせいでアルビスはお肉を売れないのである。
一応だが10歳になるとアナウサギぐらいの簡単な獲物が許可され、13歳になるとゴブリン狩りなどの普通の狩りが解禁になる。ということになっている。
そんなことをつらつらと考えているのだが…
『付いて来ているでありますよ』
(うん、わかってる。四人だよね)
クロノの耳打ちにアルビスは応えた。それは冒険者ギルドでのぶしつけな視線の主だったように思われる。
アルビスがギルドを出て北の門を抜けて魔境に入ってもずっとついてきている。
現在の時間は昼過ぎというところだ。
普通の冒険者は朝出かけて夕方にギルドにというのが多いのだが、アルビスの場合、夕方に納品をするとその後北のゲートを通れない可能性があった。
先日の親切な門衛の人を考えると危ないからと止められる可能性が高い。
だからどうしても午後の早い時間に外に出る必要があるのだ。そうしないとねぐらに帰れなくなってしまう。
まあ、普通は逆なんだけどね。
そのアルビスたちを付け回す四人の影。
(たぶんろくでもない用事だろうね、早めに片付けちゃうか)
「「にいしゃま、こっち行くの?」」
「そうだよ、ちょっとお仕事ね」
「お仕事はだいじよね」
「おしごとの後はごはんね」
意味的には『仕事の後の一杯うまい』みたいなニュアンスだよ。
うまいご飯を求めてというわけではないが、アルビスは人気のない森の方に四人を誘導していった。
◇・◇・◇・◇
「よう、小僧ども、こんなところにガキどもだけでやってくるのはあぶないぜ、俺たちが送っていってやるからついてこいよ」
とかなり柄の悪い男が言った。
「ぶ男というわけじゃないが、動きに品性が感じられない。どう見てもチンピラより少しマシぐらいにしか見えないかな。
ならず者」
アルビスはその男を見てそう断じた。
つられたのは四人、一人はそんなんで、もう一人はそれを貧相にした感じの男。
問題はほかの二人で、一人は先日、アルビスに伸されて町の案内をさせられていた少年だった。
「すみません、すみません、すみません」
米つきバッタみたいに謝り倒している。
二度と顔を見せるなというような誓約はかけていないが、アルビスたちの不利益になることは出来ないのでかなりやばい状況だ。
ただ、アルビスたちのことをしゃべらないという制約もかけられているので『危ないからやめましょう』みたいなことも言えないらしい。
そしてもう一人。
これは女の子。その子を見て…
「痴女?」
「ひうっ」
思わず漏れてしまったアルビスの言葉に彼女はひきつった声を漏らした。
でもしかたがないと思う。
少女は10台半ばぐらいのドヴェルグの少女で、珍しく色白だ。
年相応に少女らしい体形をしているが、難を言えばちょっと痩せているかな? というところ。
なぜそんなことが分かるかというと服装がひどいから。
来ている服はかなり薄いスケスケの白いワンピース。しかも体にフィットした構造で身体のラインが見て取れる。丈はおしりぎりぎりまでしかなくておしりがちょっとはみ出している。下着は上は無しでほぼ丸見え。下は本当に見えてはいけないところだけしか隠れていない紐パンだ。
これで街中を歩けば間違いなく変態認定されるだろう。
まあ、この場合は…
「なに泣いてんだ? お前の仕事は女としてご奉仕することだといってんだろ、もっといやらしくケツをふれバカ」
変態はならず者の方だ。
変態ならず者は少女の胸を握り潰し、股間に手を差し入れる。彼女は身をよじって逃げようとするがそれは許されるはずもなく、おもちゃにされるだけだ。
「子供には見せてはいけない光景だね、チビたちを避難させて良かった」
はい双子はクロノに乗って空の上です。
「おじさんがクズなのはわかったけど、恥ずかしくないのかな?」
「何が恥ずかしいんだ? こいつは奴隷だぞ、ご主人様にご奉仕するためにいるんだぜ、いつでも使える便所だ、いいよな、奴隷って、がははははっ」
「ぐへへへへっ」
女の子の目から涙がこぼれるが逃げることは出来ないらしい。
アルビスはかなり気分が悪い。
「あーっ、つまり自由意志を持った女の子には相手にされないということだね。無理もないね、品性もないし顔もお粗末だ。その様子じゃかねもないだろうし、いやー、最底辺の貧相男の悲哀だね~」
思いっきり馬鹿にしたような声を上げた。
びきっと変態ならず者のデコに青筋が浮いた。
「なっ…何だと…生意気なガキだ、まあ、いい、てめえも教育してから奴隷に売り払ってやるぜ」
「いいのか? アジトに連れ込んでからでなくて」
「ああ、いいだろう、こんなチビだ、袋に詰めちまえばばれやしないよ」
「に…逃げて…」
「男は人さらいのクズで、女の子は被害者っぽいね。まあ、予定通りぶちのめそう」
アルビスの感覚では最近みんな蛮族に見えるのだが、その中でさらに下劣となると猿以下、いや、ゴブリン以下に見える。遠慮の必要性は全く感じない。
「ぎゃはは、やれるもんならやって…」
そこまで行ったところで顔の前に現れたアルビスのケリで男は吹っ飛んだ。
高く上がり、地面で二、三回転げるぐらいに吹っ飛んだ。
「うーん、やっぱり…弱い?」
アルビスはそれを見てやっぱり普通の人は弱いのだなあと納得する。完全にではないけど。
「こっ、この野郎!」
「【土ボコ】」
飛ばされた変態ならず者が痛みに呻いているうちに、貧相ならず者が殴りかかってくる。しかしいきなり足元に穴が開いてそこを踏み抜いてしまった。
結構深い30センチほどの穴だ。しかもまっすぐで穴自体は小さい。
勢いよく走っている時にそうなるとどうなるか。
ボキッという音が響いた。
「あっ、折れたね」
てこの原理だ。
彼の体重と慣性がその足を圧し折った。
だがここで終わりじゃない。【築城】の魔法でそのまま穴を埋めてがっちり固めてしまった。
「ぎあぁぁぁああぁぁぁぁぁっ」
「うん、いたそう痛そう」
「こっ、このやろ」
その間に飛ばされた変態ならず者は立ち直った。
頭を振って切りかかってくる。
「剣も腕もなまくら」
それをスイっと後ろに動いて躱し、隠者の手で男の右手、伸び切ったそれを斜め方向に引っ張った後、思いきり下に振って後ろに回す。
男は肩を支点にして一回転して背中から地面にたたきつけられた。投げ技というのは加減しないと危険なものなのだ。おまけにその肩からはメキッという音が響いた。
「うーん、やっぱり弱い」
ひょっとして俺ってマジで強いんだろうか? そんな疑問がアルビスの脳裏をよぎる。
そして悪い顔で笑う。
「ならテストだよね~」
「こっ、この!」
アルビスが近づくと男は倒れたままの姿勢でケリを繰り出してくる。
アルビスは警戒しながら、ケリが強かった時の保険を考えながらそのケリを右手で…受け止めた。
「ふむ。確かに手ごたえはある」
だがそれだけだった。
アルビスの無属性で強化された身体能力なら全くパワー負けしていない。
アルビスは小さな手でそのまま男の足をつかんで力を入れる。指が筋肉に食い込み悲鳴が上がった。でもまだやめない。
「それ」
膝を狙って繰りだされたアルビスの拳。足の先はアルビスにつかまれて固定されている。
男の膝関節は嫌な音を立てて逆間接に変身した。
無属性の身体強化はかなり強力らしい。
「あぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「やっぱり一般の人ってすごく弱いみたい…」
それはまあ極端だが、コンラートやカフカは一流といっていい使い手ではあった。それらと比べればそんなものだ。一流戦士と素人の差のようなもの。
加えてアルビスの魔力出力は桁外れで、身体強化を含めた魔力循環修業は今はほとんど失伝している技術なのだ。
もちろん技術的な未熟さは否めないが、スペックはむっちゃ高い。
「さてと」
アルビス転げまわる男の所まで行くと男を踏みつける。
グラビトンを併用しているのでむっちゃ重い踏み潰しだ。
「げはーーーっ、わかった、俺が悪かった。謝る。勘弁してくれ…何でもする。本当に何でもするから…」
「うーん、どうしようかな~」
そう言いながらアルビスは鑑定を起動。
■・・・・・・■
マカール 35歳
悪いやつ・泥棒・人殺し・人攫い・強姦・痴漢・
人をだまして女の子にひどいことしたり、若い冒険者に悪いことさせたりしてるよ。
犯罪歴は神殿の鑑定で分かるよ
■・・・・・・■
「あー、これはダメだな、生かしておくとろくなことしないや」
「うわあぁぁぁぁあ、いやだー、はなせばけもの!」
「うっさい」
アルビスはケラウノスを召喚するとその首をとんと切り落とした。
「あううっ」
その瞬間女の子が声を上げてへたり込んだ。
「はにゃ?
・・・まあ、いいや、もう一人も…同じようなものか…」
こっちの鑑定結果もひどいものだった。
「しっかし、神殿で犯罪なんかが分かるのならなぜこんなのがはびこっているのかな? いるのかな?」
ふむと考えるが答えは出ない。
「まあ、いいや、あとは…」
「助けてくれ…俺が悪かった…もう悪いことはしない。しないから…見逃してくれ…」
「だーめ」
アルくんにっこり。
「うーん、今度は…」
そう言うとアルビスはケラウノスを送還してケリュケイオンを呼び出した。
そうして足を地面に埋めたままじたばた逃げようとする男に近寄ると…
「さあて出っ来るかな~…元素変換!」
また無茶なことを言い出した。
魔識覚で認識力をブースト。するとおでこのあたりでバチバチと火花が散るような感覚があって、一気に世界が鮮明になった。
クロノから教わった魔力点、額の中央にある第六の魔力点、三眼点の覚醒だった。
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9月/アルビス7歳/双子4歳8か月




